メンタルヘルス・マネジメントⅠ種取るための勉強note(2024.2月~)※実質9月から
この記事について
モチベーション維持のためにnoteをノートとして使うことにしました!私も来年試験受けるよ!という方、共にがんばりましょ♪
資格とるまでは特に整理せず書きなぐっていくのでノートというか、メモに近いかも。
実は昨年、私が所属する会社が受講費用の補助をしてくれている通信講座(メンタルヘルス・マネジメント検定 | 資格取得講座 | 産能大の通信講座 | 産業能率大学 個人受講申し込み )を受講したので、テキストは手元にあり、提出を求められていた試験も完了したところです。
ただⅠ種の場合筆記試験が関門になるので、ポイントを押さえて説明できないといけないなぁ・・ということで、今年の試験に合わせてきちんと自分で勉強しようと考えた次第です(/・ω・)/ガンバルゾー
2024年の試験日は?
以下のサイトで案内されていますね。2024年度の日程は2024年2月10日時点ではまだ公開されていませんが、今年度の内容を見るとⅠ種は9月中旬受付、11月上旬実施のようですね。これから勉強始めると約半年後に受付開始されて、その後3か月で本試験・・うーん、1回の受験で終わりにしたい!
公開試験 | 受験要項 | メンタルヘルス・マネジメント検定試験 (mental-health.ne.jp)
参考書
書店やネット上で探してみると色々ありますが、今回は通信教育の教材としてゲットした「メンタルヘルス・マネジメント検定試験 公式テキスト マスターコース第5版」を使っていきます。
メンタルヘルス・マネジメント検定試験公式テキスト I種 マスターコース〔第5版〕 | 大阪商工会議所 |本 | 通販 | Amazon
(試験に申し込んだ後は筆記試験用に問題集でも買おうかと思ってます)
では早速・・
まずはテキストの目次を確認して全体感をさらっていきます。これだけでも結構多い・・・
参考テキストの各章見出し
第1章 企業経営におけるメンタルヘルス対策の意義と重要性
第2章 メンタルヘルスケアの活動領域と人事労務部門の役割
第3章 ストレス及びメンタルヘルスに関する基礎知識
第4章 人事労務管理スタッフに求められる能力
第5章 メンタルヘルスケアに関する方針と計画
第6章 産業保健スタッフ等の活用による心の健康管理の推進
第7章 相談体制の確立
第8章 教育研修
第9章 職場環境等の改善
以上。
うーん・・多い(笑
過去問を見てみると、①厚生労働省が出しているメンタルヘルス対策の関係文書の内容を問う問題、②その文書内の内容をまとめた図表を説明させる問題、③その他関係法令の内容を問う問題が多いように見える。2023年度中に新たに施行された文書は特に要注意・・という感じかな。
というわけで、2023年度に出された文書の確認をば。
2023年度に出された文書
厚労省の通達では以下2点がありましたが、認定を行うのは各地域の労働基準監督署なので、メンタルヘルス・マネジメントの出題テーマにはなりにくそう。
心理的負荷による精神障害の認定基準について|安全衛生情報センター (jaish.gr.jp)
心理的負荷による精神障害の認定基準に係る運用上の留意点について|安全衛生情報センター (jaish.gr.jp)
実際の設問も、直近で改訂された部分を直接尋ねるような時事問題の要素よりも公式テキストにある内容を問う部分が大きいので、公式テキスト内で図表や文書類に関して「注意点」、「留意点」、「意義」、「定義」といったキーワードをもとに、記述させやすいと思われる記載内容をピックアップしていきます。・・結局全部読むことにはなりそうw
キーワードをもとにした書き出し(メイン学習)
メンタルヘルスの現状
・企業の社会的責任(CSR)、法令順守、リスクマネジメントの視点からメンタルヘルスケアの重要性→2節
・ワークライフバランスや生産性向上の観点から、健康で活力ある組織を実現するというポジティブな意義→3節
・ポジティブ・ヘルスのキーワードは健康職場モデル、健康経営、ワーク・エンゲージメント
・健康日本21(第2次)における労働者の心の健康に関連のあるものとして目標項目となっている3項目→現在第3次になり改訂された結果、①地域の人々とのつながりが強 いと思う者の増加、②社会活動を行っている者の増 加、③地域等で共食している者の増 加、④メンタルヘルス対策に取り組 む事業場の増加、⑤心のサポーター数の増加となっている。
・業務上疾病の要件=労働者が労働契約に基づいて使用者の支配下にある状態(業務遂行性)があり、業務起因性に関して次の3要件が必要。①業務に発症させる危険因子があること、②同因子に暴露された事実と③同因子が医学的症状を形成し得ること。
・精神障害の場合の労災認定の要件は以下の3つ。①認定基準の対象となる精神障害を発症していること、②発病前6か月間に業務による強い心理的負荷が認められること、③業務以外の心理的負荷及び個体要因により発病したとは認められないこと。
・心理的負荷による精神障害の認定基準の要点:①分かりやすい心理的負荷評価表が定められ、「弱」「中」「強」の心理的負荷に合わせた例示が設定され、また、「特別な出来事」が設定された。②いじめやセクハラのように出来事が繰り返されるものについてはその開始時からすべての行為を対象として心理的負荷が評価されることになった。③セクハラはその性質から、被害を受けて精神障害を発病した労働者自身の労災請求や労働基準監督署での事実関係の調査が困難となる場合が多いなど、他の出来事と異なる特有の事情があることから、「対人関係」とは個別に「セクシャルハラスメント」という出来事の類型が設けられた。④発病後であっても、特に強い心理的負荷で悪化した場合は労災対象とされる。⑤審査方法が緩和され、主治医の診断書で認定、専門医と協議して認定、精神障害専門部会における合議で検討して認定の3つの方法を基本とすることとなった。判定が難しい場合は精神科医の合議による判定となる。⑥パワハラ指針が策定されたことを受け、「パワーハラスメント」という類型が新設され、具体的事例として「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」が新設された。
・労災保険給付に関する重要事項
①労働・社会保険の障害給付には労災保険の障害給付と社会保険の障害給付がある。社会保険の障害給付はどんなに遅くとも傷病初診日から1年6か月経過した日に認定されるが、労災保険の障害給付は原則として傷病が治癒しない限り障害認定されない(給付金がないという意味ではなく、障害認定がされるまでは療養(補償)等給付となる)。
②労災保険の障害給付では療養にかかる費用に対して療養補償給付が支給され、精神障害のために働けない場合には休業補償給付が支給される。この時、給付基礎日額の80%程度(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)。③労災保険法上の「治癒」には完全に回復する場合以外に症状固定の状態も含まれる。④非器質的精神障害の後遺障害等級は2003年に改正され、9~14級まで幅が広がった。(かつては外傷神経症のみ、第14級として扱われていた)。⑤非器質的精神障害の後遺障害等級の判断は1.残存した状態・障害、2.精神症状、3.能力に関する判断項目により判断され、9級、12級、14級の3段階がある。⑥解雇制限は1.症状固定から30日、2.使用者が打切補償を支払った場合、3.傷病補償年金が支給され3年が経過した場合、4.天災などで事業の継続が不可能となった場合にのみ解除が認められる。⑦労災認定後の長期療養の課題として、療養者の職場復帰率が低くなっている(職場に復帰していない割合が増加している)。そのため、労災認定された長期療養者の職場(社会)復帰への具体的な施策が必要。⑧雇用保険等の一部改正と複数業務要因災害に関して、異なる事業場における労働時間、労働日数は通算することとされ、出来事が複数ある場合はそれぞれの事業場における業務による出来事を個別に心理的負荷評価表の具体的出来事に当てはめて強度を評価したうえで総合評価することとなった。
CSR、コンプライアンスとリスクマネジメント
CSRと健康管理の関係:労働者もステークホルダーであり、またその中でも特に経営の根幹をなす経営資源であるため、これを活かせるかどうかは企業価値の向上に大きく影響するため、重要。
SDGsと健康管理の関係:目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確し、福祉を増進する」、目標8「包括的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用」が関連。
メンタルヘルス指針の意義
意義:労働安全衛生法第70条の2第1項に基づき、同法第69条第1項が定める事業者の健康保持増進措置に関する努力義務の一内容。
内容:メンタルヘルスの基本的考え方、心の健康づくり計画、メンタルヘルスに関する個人情報の保護への配慮
従業員の健康管理問題と法令順守
私法上の注意義務:使用者は、その雇用する労働者に従事する業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や精神的負荷が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことが無いよう注意する義務を負う
労働契約法第5条(安全配慮義務):使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする
サービス残業の社会問題化によりできたガイドライン:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(2001年に前身となるガイドラインができ、2017年に上記に引き継がれた。
企業内で過労自殺や過労死が発生すると、高額の損害賠償責任、企業内のモラル低下および対外的な企業イメージの低落など甚大な損失があるため、過労自殺や過労死の発生防止対策を含めた従業員の健康管理問題はリスクマネジメントの一環として取り組まれる。
過労死防止対策に関する法律:「過労死等防止対策推進法」
対策項目4つ:①調査研究の実施、②啓発活動・教育活動の実施、③産業医などの人材育成を通じた相談体制の整備、④民間団体等に対する積極的支援(「過労死等の防止のための対策に関する大綱」)
過労死等ゼロ緊急対策の項目4つ:①「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」策定、②月80時間超の残業が行われている事業場に対する監督指導の徹底、③36協定未締結事業場に対する指導の徹底、④複数の精神障害の労災認定があった場合には、企業本社に対してパワハラ防止も含め個別指導を実施
ハラスメント関連
セクハラ、マタハラ→2017年以降、男女雇用機会均等法の改正によって配慮義務から措置義務になった。
措置義務:当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない
2012年3月「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」におけるパワハラの類型6つ:①身体的な攻撃(暴行・傷害)、②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)、③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)、④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害、⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)、⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること
2015年5月「パワーハラスメント対策導入マニュアル」における具体的な7つの取り組み実施手順:①トップのメッセージ(パワハラをなくすこと、許さないことを明言)、②ルールを決める(就業規則に関連規定設定、労使協定の締結、予防・解決についての方針やガイドラインの作成)、③実態把握(従業員アンケート)、④教育(研修の実施)、⑤周知(組織の方針や取り組みについて周知・啓発を実施する)、⑥相談や解決の場を設置する(企業内外への相談窓口設置、職場の対応責任者を決める、外部専門家と連携する)、⑦再発防止のための取り組み(行為者に対する再発防止研修)
2019年5月労働施策総合推進法にてパワハラの3要件:①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であること、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること、③その雇用する労働者の就業環境が害されること
※セクハラ、マタハラ同様の措置義務あり
安全配慮義務
安全配慮義務:1975年最高裁判決にて「信義則上の付随義務として、使用者は、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具などを使用し又は使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っている」
→前述の労働契約法第5条で安全配慮義務として明記
新たなTHP指針の概要
改正ポイント:①改正前は健康測定の結果、生活習慣上の課題を有する労働者が主な対象だったが、改正後はポピュレーションアプローチの視点が強化された。②従来の取り組みは時間・費用の観点からハードルが高く浸透しなかったため、事業場の規模や事業等の特性に応じて健康保持増進措置の内容を検討し、実施できるようになった。③健康保持増進措置の内容を規定する指針から取り組み方法を規定する指針となった(PDCAサイクルに沿った実施)
体制:事業場内産業保健スタッフ、人事労務管理スタッフ、事業場外資源の活用
実施内容:健康保持増進方針の表明、実施体制の確立、課題の把握、目標の設定、健康保持増進措置の決定、健康保持増進計画の作成、当該計画の実施、実施結果の評価の順で行い、健康指導には運動指導、メンタルヘルスケア、栄養指導、口腔保健指導、睡眠、喫煙、飲酒等に関する保健指導がある。
「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」
1992年7月1日以降関連通達として
1992年7月1日「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針について」
1995年9月26日「建設業における快適職場形成の推進について」
1996年5月16日「林業における快適職場形成の推進について」
1998年7月15日「陸上貨物運送業における快適職場形成の推進について」
2002年3月29日「鉱業および採石業における快適職場形成の推進について」
上記の指針に沿って、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなくてはならない。
一 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置
二 労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置
三 作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備
四 前3号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するために必要な措置
「労働者の心の健康の保持増進のための指針」
メンタルヘルスケアの基本的な考え方
労働者自身がストレスに気づき、これに対処すること:セルフケア
事業者によるメンタルヘルスケアの積極的推進が重要(事業者の表明)、衛生委員会又は安全衛生委員会において十分に調査審議し、メンタルヘルスケアに関する当該事業場の現状とその問題点を明確にする。そしてその問題点を解決するための具体的な実施事項について基本的な計画(=心の健康づくり計画」)を策定し、実施する。併せてストレスチェック制度の実施方法に関する規定を策定し、円滑に実施する。
心の健康づくり計画では、4つのケアが継続的かつ計画的に行われるよう、教育研修・情報提供を行うとともに、4つのケアを効果的に推進し、職場環境などの改善、メンタルヘルス不調への対応、職場復帰のための支援などが円滑に行われるようにする。
事業者が留意すべき事項
①心の健康問題の特性:把握と評価の困難さ、個人差、健康問題以外の観点から評価されがちであること、心の健康問題自体についての誤解や偏見
②労働者の個人情報の保護への配慮:労働者が安心してメンタルヘルスケアに参加できること、ひいてはメンタルヘルスケアがより効果的に推進されるための条件
③人事労務管理との関係:職場配置、人事異動、職場の組織など人事労務管理と密接に関係する要因によって心の健康は影響をうけるため、人事労務管理の部門との連携が重要
④家庭・個人生活などの職場以外の問題:職場のストレス要因と、家庭や個人生活など職場外のストレス要因が複雑に関係し、相互に影響し合う場合も多い。
メンタルヘルスケアの具体的な進め方
①衛生委員会等における調査審議:付議事項として「労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること」が既定されている。ストレスチェック制度に関して、「ストレスチェック指針(心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針)」により、その実施方法などについて調査審議することが望まれる。
②心の健康づくり計画
定めるべき事項
1.事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
2.事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
3.事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
4.メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に関すること
5.労働者の健康情報の保護に関すること
6.心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
7.その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること
③4つのケアの推進
セルフケア:労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防、軽減、対処する。
ラインケア:労働者と日常的に接する管理監督者が、心の健康に関して職場環境などの改善や労働者に対する相談対応を行う。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア:産業医など事業場内産業保健スタッフ等が事業場の心の健康づくり対策の提言を行うと共にその推進を担い、また労働者及び管理監督者を支援する。
事業場外資源によるケア:事業場外の機関および専門家を活用し、その支援を受ける。
④メンタルヘルスケアの具体的進め方における留意事項
4つのケアの継続的かつ計画的な実施が基本だが、次の4つの取り組みを推進することが効果的
・メンタルヘルスケアを推進するための労働者、管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等への教育研修・情報提供
・作業環境、作業方法、労働者の心身の疲労回復を図るための施設・設備、職場生活で必要な施設・設備、労働時間、仕事の量と質、パワーハラスメント、セクシャルハラスメントなど職場内ハラスメントを含む職場の人間関係、職場の組織・人事労務管理体制、職場の文化や風土その他の職場環境の把握と改善
・メンタル不調への気づきと対応のための、労働者による自発的な相談ができる環境の整備、ストレスに関するセルフチェックの機会の提供、管理監督者・事業場内産業保健スタッフ等による相談への対応、家族による気づきや支援のための基礎知識や相談窓口などの情報提供
・職場復帰のための支援プログラムの策定、実施など
⑤メンタルヘルスに関する個人情報の保護への配慮
留意すべき点
・労働者の同意:労働者の個人情報を主治医や家族から取得する場合、医療機関などの第三者に提供する場合などに際しては労働者本人の同意を得たり、労働者本人を経由した取得や第三者提供を行う必要がある。
・事業場内産業保健スタッフなどによる情報の加工
産業医などが健康情報を事業者などに提供する場合には、就業上の措置の実施に必要な範囲で最小限とするため、集約・整理・解釈などによる適切な加工をするとともに、診断名、検査値、具体的な愁訴の内容などの加工前の情報または詳細な医学的情報は提供してはならないとされている。また、事業者は診断名や検査値などの生データは産業医や保健師などに取り扱わせることが望ましいとされている。
・健康情報の取り扱いに関する事業場内における取り決め
医師、保健師および健康診断や面接指導の事務を行うものには法令上の守秘義務があるが、これら以外の者が健康情報を取り扱うこともあることから、規定を作成することが望まれる。
→参考「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」、雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うにあたっての留意事項(通達)、働き方改革の一環として労働安全衛生法第104条に追加された、心身の状態に関する情報の取り扱いに関する規定→これに基づき、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」が公示された。
ポイント:1.事業場において「健康情報取扱規定」を定めて労使で共有すること。2.指針の2の(9)に示された「心身の状態の情報の取扱いの原則」に沿って健康情報を取り扱うこと
「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」
両立支援の留意事項
①安全と健康の確保:就労によって、疾病の増悪、再発や労働災害が生じないよう、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数減少などの適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行うことが前提となる。
②労働者本人による取り組み:疾病を抱える労働者本人が、主治医の指示などに基づき治療を受けること、服薬すること、適切な生活習慣を守ることなど、治療や疾病の増悪防止について適切に取り組むことが重要。
③労働者本人の申出:両立支援は私傷病である疾病に関わるものであることから、労働者本人から支援を求める申出がなされたことを端緒に取り組むことが基本。そのため、本人からの申出が円滑に行われるよう事業場内ルールの作成と周知、労働者や管理職等に対する研修による意識啓発、相談窓口や情報の取扱い方法の明確化など、申出が行いやすい環境を整備することも重要
④両立支援の特徴を踏まえた対応:対象者は入院や通院、療養のための時間の確保などが必要になるだけでなく、疾病の症状や治療の副作用、障害などによって、労働者自身の業務遂行能力が一時的に低下する場合などがある。そのため、育児や介護と仕事の両立支援と異なり、時間的制約に対する配慮だけでなく、労働者本人の健康状態や業務遂行能力も踏まえた就業上の措置等が必要。
⑤個別事例の特性に応じた配慮:症状や治療方法などが個人ごとに大きく異なるため、取るべき対応やその時期などは異なる。
⑥対象者、対応方法の明確化:事業場の状況に応じて、事業場内ルールを労使の理解を得て制定するなど、治療と仕事の両立支援の対象者、対応方法等を明確にしておくことが必要。
⑦個人情報の保護:疾病に関する情報は機微な個人情報であることから、事業者が本人の同意なく取得してはならないなど個人情報保護に留意する必要がある。
⑧両立支援に関わる関係者間の連携の重要性:事業場の関係者、医療機関の関係者、地域で事業者や労働者を支援する関係機関・関係者(産業保健総合支援センター、労災病院に併設された治療就労両立支援センター、保健所、社会保険労務士等)
両立支援の進め方
1.両立支援を必要とする労働者が、支援に必要な情報を収集して事業者に提出する。労働者からの情報が不十分の場合、産業医又は人事労務管理スタッフが本人の同意を得た上で主治医から情報収集することもできる。
2.事業者が、産業医に対して取得した情報を提供し、就業継続の可否、就業上の措置および治療に対する配慮に関する産業医意見を聴取する。
3.事業者が主治医及び産業医などの意見を勘案し、就業継続の可否を決定する。
4.事業者が労働者の就労継続が可能と判断した場合、就業上の措置及び治療に対する配慮の内容・実施時期などを事業者が検討・決定し、実施する。
5.事業者が労働者の長期の休業が必要と判断した場合、休業開始前の対応・休業中のフォローアップを事業者が行うとともに、主治医や産業医等の意見、本人の意向、復帰予定の部署の意見等を総合的に勘案し、職場復帰の可否を事業者が判断した上で、職場復帰後の就業上の措置及び治療に対する配慮の内容・実施事項などを事業者が検討・決定し、実施する。
ストレスチェック制度実施における留意事項
①健康情報の保護:労働者の同意なくストレスチェック結果が事業者には提供されない仕組みとされており、事業者がストレスチェック制度に関する労働者の秘密を不正に入手してはならない。関連通達として「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」、指針として「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取り扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」がある。
②守秘義務:実施者にはそれぞれ刑法、保健師助産師看護師法、精神保健福祉士法、公認心理師法による守秘義務があり、実施事務従事者にも労働安全衛生法による守秘義務(違反すると6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)がある。
③不利益な取り扱いの禁止:事業者は労働者が面接指導の申出をしたことを理由として当該労働者に不利益な取り扱いをしてはならない。
④ストレスチェックの外部委託:外部委託する際は、ストレスチェック制度を正しく理解し、適切に実施することが可能な委託先を選定することが必要。→チェックポイントは「実施マニュアル」にある。
⑤実施状況の労働基準監督署への報告
常時50人以上の労働者を使用する事業者は年に1回定期に心理的な負荷の程度を把握するための検査結果等報告書を所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。
⑥罰則など:罰則を伴う関連規定には、労働安全衛生法上、・実施状況の労働基準監督署への報告、ストレスチェック・面接指導の記録の保存、守秘義務がある。
自殺総合対策大綱で掲げられた3つのポイント
・地域レベルの実践的な取り組みの更なる推進
・若者の自殺対策・勤務問題による自殺対策の更なる推進
・自殺死亡率を先進諸国の現在の水準まで減少することを目指し、2026年までに2015年比30%以上減少させることを目標とする
アルコール健康障害対策基本法
アルコールの製造又は販売を行う事業者は、国及び地方公共団体が実施するアルコール健康障害対策に協力するとともに、その事業活動を行うに当たって、アルコール健康障害の発生、進行および再発の防止に配慮するよう努める責務がある。
ワークライフバランス
課題:1.契約社員、嘱託、パートタイマー、アルバイト、派遣社員など非正規従業員としての働き方が増加し、正規従業員に比べて収入が低く、いくら働いても経済的に自立することが難しい。2.仕事に追われて長時間労働を余儀なくされ、心身の疲労から健康を害しかねない。また、家族との団らんや友人との交流などの時間が持てない。3.共働き世帯の増加などにも関わらず、働き方の選択肢が限られており、仕事と子育てや親の介護との両立が難しい。
ワーク・ライフ・バランス憲章が目指すべきとする社会
1.就労による経済的自立が可能な社会:経済的自立を必要とするもの、とりわけ若者が生き生きと働くことができ、かつ経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて暮らしの経済的基盤が確保できる。
2.健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会:働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などをもてる豊かな生活ができる
3.多様な働き方・生き方が選択できる社会
性や年齢にかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている
「仕事と生活の調和推進のための行動指針」
特に、健康で豊かな生活のための時間の確保に関する取り組みはメンタルヘルス対策と共通する部分が多い。
健康で豊かな生活のための時間の確保に関する具体的な取り組み
・労働時間関連法令の遵守
・長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進などのための、労使による業務の見直しや要員確保
・取引先への計画的な発注や納期決定
これらに関する主な数値目標
・週労働時間60時間以上の雇用者割合:6.4%→5%、年次有給休暇取得率:52.4%→70%、メンタルヘルスケアに関する措置を受けられる職場の割合:59.2%→100%
ワークライフバランス実現によるメリット:個人にとっては、健康が保たれ、仕事とプライベート(育児、介護、地域活動、自己啓発など)の両面の充実が図れる。一方、個人がワークライフバランスの取れた働き方をすることは企業にとってもマイナスではなく、プライベートに費やす時間を生み出すためのタイムマネジメント上の工夫が、仕事の生産性向上につながる可能性がある。また、プライベートを充実させることによって、そこから得られた何かが新たな気づきとなって仕事に好影響を与えることが期待できる。
NIOSHの健康職場モデル
従業員の健康と満足感が高まることは組織における生産性と相互作用があり、互いに強化することができる。
ストレッサーとなる組織特性
・職務レベル:多すぎる/少なすぎる仕事の負荷、長時間労働、役割や責任の不明確さ、技術・技能の低活用、繰り返しの多い単純作業、低コントロール
・職場集団レベル:上司・同僚からの支援がない、職場の意思決定に参加する機会がない、昇進や将来の技術や知識の獲得について情報がない、職場の物理的環境(重金属や有機物への暴露、好ましくない換気、照明、騒音、温熱、好ましくない作業レイアウトや人間工学的環境)
・企業組織レベルの良好事例
①経営理念の中に、従業員の活力、幸福、成長に関する記述を位置づけること
②経営理念を従業員の間で共有すること
③成果・業務実績のあり方を見直し、チームワークに着目した人材育成と評価制度を導入すること
④経営層と従業員との対話を促進すること
⑤多様性やワークライフバランスに関する施策を導入すること
ワークエンゲイジメント
ワークエンゲイジメントが高い人の特徴
①健康に関しては、心身の健康が良好で睡眠の質が高い
②仕事・組織に対する態度では、職務満足感や組織への愛着が高く、離転職の意思や疾病休業の頻度が低い
③パフォーマンスでは自己啓発学習への動機付けや創造性が高く、役割行動や役割以外の行動を積極的に行い、部下への適切なリーダーシップ行動が多い
仕事の要求度-資源モデル
「動機付けプロセス」:仕事の資源/個人の資源→ワークエンゲイジメント→健康・組織アウトカム
「健康障害プロセス」:仕事の要求度→バーンアウト(ストレス反応)→健康・組織アウトカム
基礎知識編
ストレスによる健康障害のメカニズム
ストレッサー→ 大脳皮質 ←(認知と評価)→ 大脳辺縁系 (学習、記憶、感情の発現)→視床下部→自律神経系・内分泌系・免疫系
自律神経系からは内臓の障害として高血圧、胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群が、内分泌系からは代謝系障害及び並行して起こる血管障害による糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、免疫系からは易感染性、発がんに繋がる
職場におけるストレス要因
1.仕事量の増加(長時間労働、過重労働など)
2.仕事の質の問題(高度の技術、責任の重い仕事など)
3.地位、役割の変化(昇進、降格、配置転換など)
4.仕事上の失敗・トラブル・損害や法律問題の発生
5.人間関係の問題
6.交代勤務、適性、コミュニケーション、職場の雰囲気、努力報酬不均衡など
7.新しい技術やシステム(テレワーク)の導入など
NIOSH職業性ストレスモデル
・ストレッサーから急性ストレス反応(心理的反応、生理的反応、行動化け)を介して疾病に繋がる横軸に対して、関係する因子として個人的要因、仕事以外の要因及び緩衝要因が縦軸としてかかわることを図示したモデル。
現在起きている問題と対応策
課題-問題点-対応策
1.成果主義評価ー評価の不一致、年功制の崩壊、マネジメント強化ー公正性、透明性の確保、人生設計の見直し、研修(支援の必要性)
2.情報化・技術革新ー適応困難事例の発生ー使いやすいシステム導入、十分な訓練期間、支援体制
3.ハイリスク職場ー職場による労働負荷の差、長時間労働ー適正な人員配置、定期的面談
4.個人主義傾向ー組織の不調和ー参加型の意思決定
5.社会的支援ー人員削減、成果主義による支援減少ーリスナー、コーチング研修、支援を人事考査で評価
6.国際化の進展ーカルチャーショック、適応困難事例ー研修、訓練期間、ホットライン
7.女性就労ー管理職モデルが少ない、妊娠・出産・育児休暇ー女性管理職研修、労働力補充、マタハラ対策
8.メンタルヘルス不調の増加ー生産性の低下、再発例の増加、現代型うつ病ーストレス評価と職場改善、復職支援プログラム、十分な教育と支援
9.コロナ禍とニューノーマルー経済活動の減速と不況、テレワークの導入、働き方・家族関係の変化ー経営の見直し、新しいマネジメント、意識改革と支援
ストレスの発生プロセスと各プロセスに対するコーピング
プロセス
刺激(出来事)
→認知的評価:刺激を脅威と評価
→ストレッサー:意味のない刺激が嫌な刺激へと変化
→情動的興奮:恐怖、急性の不安、怒り
→身体的興奮:闘争-逃走反応
→コーピング:反応を減らそうと対処行動をとる
コーピング
認知的評価←認知の修正(問題焦点型)
ストレッサー←ストレッサーの除去(問題焦点型)
情動的興奮←リラックス(情動焦点型)
身体的興奮←エクササイズ(情動焦点型)
4つのソーシャルサポ―ト
種類:効果:具体的内容
①情緒的サポート:周囲の人の受容的態度により情緒が安定する:傾聴・励まし・共感的な対応
②情報的サポート:問題解決を間接的に進める:必要な情報提供、助言、処理すべき事柄の整理、研修、専門家の紹介
③道具的サポート:問題解決を間接的に進める:グループを作り共同で処理する、金銭的サポート、効率化のための処置をする
④評価的サポート:自信が深まり、今後のことに積極的になる:努力の評価、褒める、処理できた仕事のフィードバック、適切な人事考査
2014年睡眠指針(現在2023年版)の12か条
①良い睡眠で、身体も心も健康に:心身の疲労回復効果、睡眠の質と量の低下は生活習慣病リスク、心の病、ヒューマンエラーの増加につながる。
②適度な運動、しっかり朝食、眠と目覚めのメリハリを:適度な運動は入眠を促進して中途覚醒を減らし、朝食は朝の目覚めを促す。就寝前のアルコールやニコチンは眠りを阻害する。睡眠3~4時間前のカフェインも控える。
③良い睡眠は、生活習慣予防に繋がります
④睡眠による休養感は、心の健康に重要です
⑤年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を
⑥よい睡眠のためには環境づくりも重要です
⑦若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ
⑧勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を
⑨熟年世代は朝晩メリハリ、昼間に適度な運動で良い睡眠
⑩眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない
⑪いつもと違う睡眠には、要注意
⑫眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を
職業人のライフサイクルとストレス
20代前半:初めての社会生活で環境が激変する。社会人としての規範を身につけて実行し、それまでの先輩・友人とは異なる上司・同僚という新しい人間関係にうまく対処する必要がある。好きな人とばかりではなく、気の合わない上司や苦手な顧客ともうまくやらなくてはならず、適応障害が生じがちですぐに退職する新入社員も増えている。
20代後半~30代前半:入社数年を経て新たにやりたいことを見つけて転職する社員も出てくる。ただしその場合は即戦力を求められ、周囲の同僚との人間関係をうまく作ることも難しいため、より高い適応能力が求められる。入社して10年くらいになると周囲に人となりが認知され、役割や地位がある程度確立される。マネジメントの基本を学び、業務量・質も増加し始める。同時に、結婚や子供の誕生など私生活でも新たな役割が加わり、幸せであると同時にストレスともなり得る要素が加わる。
30代後半:中間管理職に就くことが多くなる。業務負担も極めて高く、部下と上司双方向への複雑な人間関係にも対応が求められる。そのため、メンタルヘルス不調による病気休職などのリスクが最も高くなる。転職限界年齢ともいわれ、それまでの人生選択を振り返る機会が増えることで心情的に揺れる時期ともいえ、これらにまつわる葛藤は強いストレスとなりえる。
40代:仕事に加え、結婚も含めた人生の選択自体を振り返る機会が増える。子供も思春期を迎え様々な問題が提起されるなどプライベートでのストレスが立ち上がってくる。同時に体力低下も兆しを見せはじめる一方で昨今ではプレイングマネジャーとして働くケースも多く、相対的に心身への負荷が高まる。管理職への昇進かリストラかなど、厳しい選抜場面に直面することも少なくない。
50代:加齢の影響がはっきりと現れ始め、心身の無理がききにくくなる。社会人として総決算の時期を迎え、大きな転換期となる。プライベートでは老いゆく親に対して保護者としての責任を果たし、巣立っていく子供とは子離れを克服しなくてはならない。同時に配偶者との2人生活へと変化する場合は夫婦関係の再構築が必要。人生について残された年数で考えるようになり、友人や先輩が病気になったりと、さまざまな喪失体験が始まる。退職や熟年離婚など職や友人、配偶者を失う喪失体験に遭遇する機会が少なくなく、団塊の世代の自殺者増加の背景要因としても報告されている。
改正高年齢者雇用安定法(2021年4月1日)
努力義務として講ずることが義務付けられた措置5つ(いずれかを講ずることが努力義務とされている)
①70歳までの定年引上げ
②70歳までの継続雇用制度の導入
③定年廃止
④高年齢者が希望する時は、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤高年齢者が希望する時は、70歳まで継続的にa)事業主が自ら実施する社会貢献事業、b)事業主が委託、または出資等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入
「メンタルヘルス不調」の定義
精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう
人事労務管理スタッフに求められる能力
人事労務管理スタッフが相談対応能力を身につける意義
通常は管理監督者を支援・指導する立場であるものの、労働者からの直接相談、管理監督者などでは対応困難な状況、人事労務管理スタッフとしての専門性が要求される状況では直接相談対応を行う立場であり、管理監督者よりも高度な相談対応能力が求められる。
相談対応を行うことについて、解決策が見いだせない理由別の意義
1.問題を正確に或いは詳細に把握・整理できていない→相談者は相手にわかるように問題を説明しようとし、聞き手は不明点を質問し、さらに問題を整理して相談者にフィードバックすることで、相談者による問題の理解・整理が促される。
2.問題解決の手段や利用できる資源を知らないあるいは気づかない→相談により問題解決の手段や利用できる資源についての情報提供を行うことで問題が解決に向かう。
3.自らの気持ちの整理(割り切り、あきらめ、踏ん切り)ができない→第三者の客観的意見や説得が、気持ちを整理し決心をつける上で有効。
職場環境改善の具体例
・作業内容及び方法:過大及び過小な仕事の負荷を避ける、長時間労働を避ける、休憩時間・休日の確保、仕事上の役割や責任を明確にする、労働者の知識や技能を活用できる機会を作る、作業のローテーションなどにより繰り返しの多い単純作業を減らす、仕事の負荷に応じた裁量権や自由度を確保する
・職場組織:上司や同僚からの支援や相互の交流の機会を増やす、労働者が職場の意思決定に参加する機会を設ける、昇進や将来の技能獲得の機会を明確にする
・職場の物理的環境:換気、照明、騒音、温熱の改善、職場レイアウトや人間工学的環境の心理的影響に配慮する
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」2017年1月
労働時間の考え方のポイント:労働者の行為が使用者の指揮命令下にあるか否かによって客観的に定まるものであること
労働時間の適正な把握についてのポイント:使用者が自ら確認記録すること
自己申告制による場合のポイント→労働者への十分な説明、自己申告と入退場記録やパソコン使用時間等とのデータの突合、必要に応じた実態調査、適正な申告を阻害する要因の是正など
「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」2018年2月→「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」2021年3月
ウィズコロナ・ポストコロナの新しい新たな日常、新しい生活様式に対応した働き方であると同時に、働く時間や場所を柔軟に活用することのできる働き方として更なる定着・導入を図るため、テレワークにおける労務管理を中心に、労使双方にとって留意すべき点や望ましい取組等が示された。
労務管理上の留意点:
・人事評価制度
→時間外等のメールなどに対応しなかったことを理由にして不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価とは言えない。
→テレワークを行う場合の評価方法を、オフィスでの勤務の場合の評価方法と区別する際には、誰もがテレワークを行えるようにすることを妨げないように工夫を行うことが望ましい。
→テレワークを実施せずにオフィスで勤務していることを理由として、オフィスに出勤している労働者を高く評価することは適切な人事評価とは言えない。
・費用負担の取扱い
→テレワークを行うことで労働者に過度の負担が生じることは望ましくない。
→個々の企業ごとの業務内容、物品の貸与状況により、費用負担の取扱いは様々であるため、労使のどちらがどのように負担するか等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定め、就業規則等に規定しておくことが望ましい。
・テレワーク状況下における人材育成
→社内教育等についてもオンラインで実施することも有効。テレワークを導入した初期あるいは機材を新規導入したとき等には、必要な研修等も行うことも有効である。
・テレワークを効果的に実施するための人材育成
→テレワークの特性を踏まえ、各労働者が自律的に業務を遂行できるよう仕事の進め方の工夫や社内教育等によって人材の育成に取り組むことが望ましい。
→テレワークを実施する際にも適切な業務指示ができるようにする等、管理職のマネジメント能力向上に取り組むことが望ましい。
様々な労働時間制度の活用:
・労働基準法に定められた様々な労働時間制度→労働基準法上すべての労働時間制度でテレワークが実施可能。このため、テレワーク導入前に採用している労働時間制度を維持したままテレワークを行うことができる。
・通常の労働時間制度及び変形労働時間制→始業及び終業の時刻や所定労働時間を予め定める必要があるが、必ずしも一律の時間に労働する必要が無いときには、その日の所定労働時間はそのままとしつつ、始業及び終業の時刻についてテレワークを行う労働者ごとに自由度を認めることも考えられる。
・フレックスタイム制→労働者が始業及び終業の時刻を決定することができる制度であり、テレワークになじみやすい
・事業場外みなし労働時間制→使用者の具体的な指揮監督が及ばない事業場外で業務に従事し、労働時間を算定することが困難な時は事業場外みなし労働時間制が適用可能。テレワークにおいて適用するためには①情報通信機器が使用者の指示により常時使用可能な状態に置くこととされていないこと。②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないことの2点を満たす必要がある。
テレワークにおける労働時間管理の工夫:
・テレワークにおける労働時間管理の考え方→使用者がテレワークの場合における労働時間の管理方法をあらかじめ明確にしておくことにより、労働者が安心してテレワークを行うことができるようにし、使用者が労務管理や業務管理を的確に行えるようにすることが望ましい。
・テレワークにおける労働時間の把握→「労働時間の適切な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を踏まえ、①パソコンの使用時間の記録などの客観的な記録を基礎として、始業及び終業の時刻を確認する、②労働者の自己申告により把握する(自己申告制の適正な運用等について十分な説明を行うこと、労働者による適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと等が必要)。といった方法が考えられる。
・中抜け時間→①休憩時間として取扱い終業時刻を繰り下げたり、時間単位の年次有給休暇として取り扱う、始業及び終業の時刻の間の時間について、休憩時間を除く労働時間として取り扱うことなどが考えられる。あらかじめ就業規則等で定めておくことが重要。
・勤務時間の一部についてテレワークを行う際の移動時間→労働者による自由利用が保障されている時間については、休憩時間として取り扱うことが考えられる。一方で使用者が労働者に業務のための移動を命じ、その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は、労働時間に該当する。
・休憩時間の取扱い→労使協定により、休憩時間の一斉付与の原則を適用除外とすることが可能。
・時間外、休日労働の労働時間管理→時間外・休日労働をさせる場合は、三六協定の締結・届け出や割増賃金の支払いが必要となるため、使用者は労働時間の状況を適切に把握し、必要に応じて労働時間や業務内容等を見直すことが望ましい。
・長時間労働対策→メール送付の抑制、システムへのアクセス制限、時間外・休日・所定外深夜労働についての手続、長時間労働などを行う労働者への注意喚起などの手法が考えられる。
テレワークにおける安全衛生の確保:
・安全衛生関係法令の適用→自宅などでテレワークを行う場合でも、事業者は労働安全衛生法などの関係法令に基づき、労働者の安全と健康の確保のための措置を講ずる必要がある。
・自宅などでテレワークを行う際のメンタルヘルス対策の留意点→周囲に上司や同僚がいない環境で働くことになるため、労働者が上司とコミュニケーションを取りにくい、上司等が労働者の心身の変調に気づきにくいという状況となる場合が多いため、「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト(事業者用)」を活用する等により、健康相談体制の整備や、コミュニケーション活性化のための措置を実施することが望ましい。
・自宅などでテレワークを行う際の作業環境整備の留意点→安全衛生に配慮したテレワークが実施されるよう、事業所衛生基準規則や労働安全衛生規則等の衛生基準と同等の作業環境となるよう、使用者は労働者への教育・助言を行うと共に、「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト」を活用すること等により作業環境に関する状況の報告を求めることが重要。
メンタルヘルスケアに関する方針と計画
1.企業がメンタルヘルスケアを推進する理由→①健康配慮義務:「使用者は、労働契約に基づいて労働者に指揮命令している以上、労働者が安全な環境で健康に就業できるように可能な対策を講じなければならないという信義則上の義務」である安全配慮義務の一部を構成するものと考えられる。
②教育投資を行った労働者の労働損失を防ぐ。③ESGの観点からも重要。
福利厚生という任意性の高い活動ではなく、事業活動として積極的に取り組むべき問題。
2.メンタルヘルスケアに関する方針に盛り込むべき内容
①メンタルヘルスケアの重要性の認識:事業者としての推進の目的を明確化することが望ましい。
②職場全体を巻き込んでの対策:有効なメンタルヘルスケア対策を推進するためには職場全体を巻き込み、さらに外部資源を活用する総合的な対応が必要となる。少なくとも、事業場内で対応可能なセルフケアの重要性とラインの役割を明確にすることが望ましい。
③プライバシーへの配慮:情報の性質上、他の健康情報以上の配慮が必要。プライバシーの配慮についても方針の中で表明することが望ましい。
④継続的実施:継続的な実施または継続的な改善について表明することが望ましい。
3.方針の職場への周知の方法
目に触れるようにすることが重要:職場内への掲示、関連するウェブサイトのトップページに掲示、社内報に掲載、社内メールで全従業員に配信など
メンタルヘルスケアの体制整備
①事業者の機能:リーダーシップを発揮するとともに、推進に必要な人的・金銭的資源の提供を行う
②安全衛生委員会の機能:ストレスチェック制度の実施に関すること、その他メンタルヘルスケアに関することの調査審議及び心の健康づくり計画の審議及び計画の実施状況確認
③従業員自身の機能:セルフケアについての技術や知識を得て、ストレスチェックの機会を利用してセルフケアに努めるヘルスケアのプログラムを理解して必要な手続きを行うこと
④管理監督者の機能:働きやすい職場環境の形成、上司として部下の健康状態の把握を行い、必要に応じて事業場内産業保健スタッフなどに紹介を行う。また、休業者の復職復帰の支援手順を理解して休業者に対する適切なサポートを行う。
⑤メンタルヘルスケア推進部門の機能:産業保健スタッフと連携して心の健康づくり計画の企画立案を行い安全衛生委員会や事業者に諮ると共に、計画の進捗管理を行う。なお、労働者の心の健康の保持増進のための指針では、常勤保健師や衛生管理者を事業場内メンタルヘルス推進担当者に選任するよう努めることが求められている。(事業場内メンタルヘルス推進担当者には、昇進や異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にあるものは適当ではない。)
⑥産業保健スタッフの機能:事業場内の専門家として、心の健康づくり計画の立案に対して指導助言を行うと共に、従業員教育、管理監督者・事業者への必要な教育や労働者及び管理監督者からの相談に対応すること。また、メンタルヘルスに関する個人情報の保護についても中心的役割を果たす。
⑦事業場外専門機関の機能:ストレスチェックの一部を実施すること、事業場内の産業保健スタッフがメンタルヘルスケアを進めるに当たって必要な技術に関する相談や個別ケースについての相談を受けること。主治医として事業場からの紹介を受け、また職場復帰において情報を提供すること。事業場内相談窓口の有無に関わらず、労働者からの直接の相談窓口を外部に設けることが望ましい。
メンタルヘルスケアに関連する実施要領の例
・メンタルヘルス教育実施要領
・ストレスチェック及び面接指導、実施要領
・メンタルヘルス相談窓口運営要領
・職場復帰支援実施要領
・職場の環境改善実施要領
・緊急事態対応要領
・メンタルヘルスケア年間計画策定要領
・メンタルヘルスケア目標策定評価要領
・メンタルヘルスケアに関する個人情報管理要領
心の健康づくりの評価指標例(目的に応じて)
・メンタルヘルスに関連した傷病による休業者数、休業日数
・自殺者数(ゼロ)
・一定程度以上のプレゼンティーイズムの発生者の割合
・ストレスチェックによる高ストレス者の割合
・ストレスチェックによる集団の健康リスク
・職場のコミュニケーションがよいとする労働者の割合
・働きやすいと評価する労働者の割合
・復職面接の実施数
・復職後、再度休職に至った労働者の割合・数
・管理職教育参加率
・従業員教育参加率
OSHMSの流れ
①目標を設定する
②リスク評価の結果をもとに計画的にリスク低減を行う
③活動結果を記録する
④目標の達成状況を評価する
⑤さらにシステムの導入状況と有効性を監査する
メンタルヘルス対策をOSHMSに統合する際に検討・実施すべきこと
①表明:心理社会的要因またはストレス要因を職場に存在する健康障害要因として位置づけ、健康障害リスクを低減することを事業者の基本方針の中で明確に表明する。
②アセスメント:安全と健康のリスクアセスメントの一つとしてストレスチェックを用いて個人のリスクと職場のリスクを評価する
③目標:メンタルヘルスに関する指標を目標に盛り込む
④計画:リスクの状態や目標に応じて、メンタルヘルス対策を安全衛生の計画に盛り込む。また、策定にあたっては衛生委員会の場などを利用し、労働者の代表を参画させる
⑤文書:メンタルヘルスケアに関する実施要領を整備し、OSHMS上の要求事項として運用する
⑥教育:計画を実施するに当たって必要な、事業場内産業保健スタッフの教育研修、管理監督者の教育研修を実施する
⑦実施:計画に基づき、メンタルヘルス対策を実施する
⑧評価:実施状況、メンタルヘルスケアに関する目標を、他の安全衛生目標と共に評価する
⑨報告:評価の結果をまとめて、企業トップに報告する
⑩再計画:評価結果をもとに、翌年のメンタルヘルス対策の年間計画を策定する
⑪記録:すべての実施状況は記録に残す
⑫監査:OSHMSの監査として、メンタルヘルスケアについても監査を行う
産業医の役割
産業医の職務
①健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
②労働安全衛生法第66条の8第1項、同法第66条の8の2第1項及び同法第66条の8の4第1項に規定する面接指導及び同法第66条の9に規定する必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
③労働安全衛生法第66条の10第1項に規定する心理的な負荷の程度を把握するための検査の実施並びに同法第66条の10第3項に規定する面接指導の実施およびその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
④作業環境の維持管理に関すること
⑤作業管理に関すること
⑥前各号に掲げるものの他、労働者の健康管理に関すること
⑦健康教育および健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
⑧衛生教育に関すること
⑨労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること
2019年の法改正により示された、事業者が産業医に付与すべき権限
①事業者または総括安全衛生管理者に対して意見を述べること
②労働者の健康管理等を実施するために必要な情報を労働者から収集すること
③労働者の健康を確保するための緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置を取るべきことを指示すること
衛生管理者の役割
①心の健康づくり計画の実施
②早期の気づきと相談
③関係各所との連携
デンマーク産業保健研究所によるストレス調査票のための「ソフトガイドライン」
①職場の心理社会的環境についての調査は、それによって明らかにされた改善点について何らかの対策を行う心構えのない限り、行われるべきではない
②調査票に対する回答は自発的な意思に基づくべきであり、回答率が60%を下回ることは好ましくなく、その事業所の心理的環境が良くないことの一つのサインである
③15人未満の集団で得点を計算しようとする場合は、その集団のメンバー全員の承諾を得るべき
④すべての労働者が結果を見て、議論する権利を持つ
⑤経営者、管理監督者、労働者がともにすべてのプロセスに関わるべき
⑥仕事の一部としての(変更不可能な)基本条件と変更可能な要因との区別をする
⑦問題解決にあたって標準的な方法はない。解決策は現場で考案され、生産性やより良い質の向上を目指した企業の諸活動とすり合わされるべき
⑧対策が行われ、当初の改善が得られたかどうかを確認するため1~2年後に再調査を行うことが望ましい
⑨多くの職場では、学習する組織、進化する作業という全体的なコンセプトの一部として定期的な調査を行うことが有益である
⑩調査結果は、対話や成長のための道具として考えられるべきで、成績表と考えられるべきではない
職業性ストレス簡易調査票
特徴
①自記式調査票
②あらゆる業種で使用できる
③57項目と少なく、10分程度で実施できる
④ストレス反応のみを測定する多くの調査票と異なり、職場におけるストレス要因や修飾要因も評価できる
⑤労働安全衛生法に定められる3領域を含む(仕事のストレス要因、心身のストレス反応、周囲のサポート)
⑥ネガティブな反応だけでなく、ポジティブな反応も評価できる
⑦身体的なストレス反応も評価できる
新調査票の特徴
作業のレベル、部署のレベル、事業場のレベルでの心理社会的資源や、ワークエンゲイジメント、職場の一体感を評価できる
相談体制の確立
国際EAP協会の定義によるEAPのプログラム
事業場に対しては職場組織が生産性に関連する問題を提議することを援助し、社員に対しては仕事上のパフォーマンスに影響を与えるさまざまな個人的問題(健康問題、結婚・家族問題、経済問題、アルコール・ドラッグ中毒、法的問題、対人関係、ストレスなど)を見つけ、解決する手助けをする。
EAP機関が提供する機能・役割
①従業員の心の健康問題評価
②組織に対する現状評価や対策のコンサル
③適切な医療機関や相談機関への紹介・フォロー
④管理監督者や人事労務管理スタッフに対するコンサル
⑤従業員・家族・管理監督者・人事労務管理スタッフへのメンタルヘルス教育
⑥短期的カウンセリング
⑦精神問題を生じる可能性がある危機の際の介入
⑧EAP機関と連携する事業場内メンタルヘルス担当者の育成
⑨事業場内産業保健スタッフへのメンタルヘルス対策の教育
⑩EAPの利用状況の報告やサービス効果評価
メンタルヘルス登録相談機関
国の登録基準
①十分な経験を有する常勤の相談対応者がいる
②提供できるサービス内容、料金体系、相談対応者氏名・資格、過去の相談実績が公開されている
③職場のメンタルヘルスに詳しい精神科医によるサポート及び医療機関への紹介ができる
④プライバシーが確保された相談室が整備されている
事業場外資源活用のポイント
メンタルヘルス相談体制の望ましい状態
1.メンタルヘルスの相談先
①事業場におけるメンタルヘルス相談の体制を決める:社内あるいは社外に相談の場所や担当者が設けられており、連絡先、利用可能時間などの情報がすべての管理監督者及び従業員に周知されている。
②メンタルヘルス相談体制を利用するための教育・研修:メンタルヘルス相談の利用のための教育・研修がすべての管理監督者および従業員に対して実施されている。
③管理監督者による相談対応:管理監督者が日ごろから部下の心の健康問題やストレスに気づき、必要に応じて面談の機会を持つよう、積極的に指示している。
④メンタルヘルス相談におけるプライバシー保護の方針:心の健康について、人事労務担当者を含めた社内の者には知られずに相談できるようになっており、その方針が明確に周知されている。
⑤人事・労務担当者や産業保健スタッフが相談できる専門家の確保:心の健康問題を有すると思われる従業員について、人事・労務担当者や産業保健スタッフが相談できる専門家が社内にいるか、あるいは社外に相談できる専門家を確保している。
2.心の健康問題を持つ従業員の復職や職場適応の支援
①復職判定:心の健康問題に対する復職判定について社内でのルールが作成され、周知されている。
②心の健康問題を持つ従業員への継続的支援:心の健康問題で治療を受けた従業員に対しては、一定期間、産業保健スタッフが定期的に面談し、助言することが、社内のルールとして決まっている。
専門機関の選び方
メンタルヘルスの相談体制の目的7つ
①疾病者あるいは問題となる従業員への対応
②休復職の対応
③早期発見
④従業員セルフケアなど早期対応
⑤環境改善など予防的措置
⑥従業員のモチベーション向上やキャリア開発
⑦ストレスチェック
EAPの分類
①医療系:個人を対象とした医療的支援が中心
②心理系:個人への相談、上司や人事労務部門へのコンサルテーションを中心とした適応支援
③コンサル系:個人へのキャリアカウンセリングや自己啓発、組織コンサルテーションといった発達支援
機関選定のための検討項目
目的/対象者-選定機関
①相談窓口/全従業員-相談窓口を設置できるEAP機関、社内担当者を教育できる機関
②セルフケア/管理監督者、従業員-従業員や管理監督者を教育できる機関
③ラインケア/管理監督者-管理監督者に積極的傾聴法などが研修できる機関、管理監督者に専門的な支援を行える機関
④スタッフによるケア/人事労務管理スタッフ、産業保健スタッフ-EAP機関、専門医療機関
⑤就労支援/心の健康問題を持つ従業員-連携スタッフの教育研修を行える機関、専門医療機関あるいは専門医
連携方法、内容の確認事項
①対象者、②利用のための対象者教育、③場所、④方法、⑤窓口の利用時間、予約方法、⑥連携専門医療機関、⑦利用状況に関する事業場への報告内容、⑧プライバシー保護と安全配慮義務の兼ね合い、⑨危機的状況の際の事業場への連絡、⑩事業場内環境調整が必要な場合の連携方法、⑪連携担当者、⑫連携のための連絡会の開催、頻度
復職復帰支援プログラム
ルール作りの手引き:「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」5ステップ
第一ステップ:病気休業開始及び休業中のケア
①病気休業開始時の労働者からの診断書の提出
②管理監督者によるケア及び事業場内産業保健スタッフ等によるケア
③病気休業中の労働者の安心感の醸成のための対応
④その他
第二ステップ:主治医による職場復帰可能の判断
①労働者からの復職復帰に対する意思表示と職場復帰可能の診断が記された診断書の提出
②産業医による精査
③主治医への情報提供
第三ステップ:職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成
①情報の収集と評価
1.労働者の職場復帰に対する意思の確認
2.産業医による主治医からの意見聴取
3.労働者の状態などの評価
4.職場環境などの評価
5.その他
②職場復帰の可否についての判断
③職場復帰支援プランの作成
1.職場復帰日
2.管理監督者による就業上の配慮
3.人事労務管理上の対応
4.産業医等による医学的見地からみた意見
5.フォローアップ
6.その他
第四ステップ:最終的な職場復帰の決定
①労働者の状態の最終確認
②就業上の配慮などに関する意見書の作成
③事業者による最終的な職場復帰の決定
④その他
第五ステップ:職場復帰後のフォローアップ
①疾患の再燃・再発、新しい問題発生などの有無の確認
②勤務状況及び業務遂行能力の評価
③職場復帰支援プランの実施状況の確認
④治療状況の確認
⑤職場復帰支援プランの評価と見直し
⑥職場環境等の改善等
⑦管理監督者、同僚等への配慮等
職場復帰支援のための情報の収集と評価
①労働者の職場復帰に対する意思の確認
②産業医等による主治医からの意見収集
③労働者の状態等の評価
A:治療状況及び病状の回復状況の確認
1.今後の通院治療の必要性及び治療状況についての概要の確認
2.業務遂行に影響を及ぼす症状や薬の副作用の有無
3.休業中の生活状況
4.その他職場復帰に関して考慮すべき問題点など
B:業務遂行能力についての評価
1.適切な睡眠覚醒リズムの有無
2.昼間の眠気の有無
3.注意力・集中力の有無
4.安全な通勤の可否
5.日常生活における業務と類似した行為の遂行状況と、それによる疲労の回復具合
6.その他家事・育児、趣味の活動等の実施状況など
C:今後の就労に関する労働者の考え
1.希望する復帰先
2.希望する就業上の配慮の内容や期間
3.その他管理監督者、人事労務管理スタッフ、事業場内産業保健スタッフに対する意見や希望
D:家族からの情報
可能であれば必要に応じて
④職場環境等の評価
A:業務及び職場との適合性
1.業務と労働者の能力及び意欲・関心との適合性
2.職場の同僚や管理監督者との人間関係など
B:作業管理や作業環境管理に関する評価
1.業務量や質などの作業管理の状況
2.作業環境の維持・管理の状況
3.業務量の時期的な変動や、不測の事態に対する対応の状況
4.職場復帰時に求められる業務遂行能力の程度
C:職場側による支援準備状況
1.復帰者を支える職場の雰囲気やメンタルヘルスに関する理解の程度
2.実施可能な就業上の配慮
3.実施可能な人事労務管理上の配慮
その他職場復帰支援に必要と思われる事項について検討する。また、治療に関する問題点や、本人の行動特性、家族の支援状況など職場復帰の阻害要因となりうる問題点についても整理し、その支援対策について検討する。
職場復帰支援プラン作成の際に検討すべき項目
①職場復帰日:労働者の状態や職場の受け入れ準備状況の両方を考慮した上で総合的に判断する。
②管理監督者による就業上の配慮:1.業務でのサポート方法や内容、2.業務量や内容の調整、3.残業や深夜業務の制限、時間短縮など、4.治療上必要なその他の配慮として診療のための外出許可など
③人事労務管理上の対応等:1.配置転換や異動の必要性、2.勤務制度変更可否や必要性(フレックス勤務、裁量労働制など)3.その他段階的な就業上の配慮(出張制限、高所・運転・窓口・苦情処理など業務の制限や免除、転勤配慮など)の可否及び必要性
④産業医等による医学的見地からみた意見:1.安全配慮義務に関する助言、2.その他職場復帰支援に関する意見
⑤フォローアップ:1.管理監督者によるフォローアップ方法、2.産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法、3.就業制限の見直しタイミング、4.すべての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通し
⑥その他:1.職場復帰に際して労働者自身が自ら責任をもって行うべき事項、2.試し出勤制度があればその利用についての検討、3.事業場外資源が提供する職場復帰支援サービス等の利用についての検討
職場復帰支援に関して検討すべき事項
①主治医との連携の仕方:事前に当該労働者の同意を得る。紙面での情報提供依頼、直接主治医と連絡や面談とその費用負担などについて事前に決めておく。
②職場復帰可否の判断基準:手引きでは判定基準の例として7つ挙げられている。
・労働者が職場復帰に対して十分な意欲を示している
・通勤時間帯にひとりで安全に通勤できる
・会社が設定している勤務時間の就労が可能
・業務に必要な作業をこなすことができる
・作業などによる疲労が翌日までに十分回復している
・適切な睡眠覚醒リズムが整っていて昼間の眠気がない
・業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している
これらとあわせて作業管理の状況、職場の受け入れ準備が整っているかなどから検討する。
③試し出勤制度:導入にあたっては処遇や災害発生時の対応、人事労務管理上の位置づけなどをあらかじめ労使で十分に検討し、ルール化しておく。
④「まずは現職へ復帰」の原則:あくまで原則であって、配置転換や異動をきっかけとしたメンタル不調や職場不適応状態が続いたことが原因と考えられる場合は最初から配置転換などを考慮したほうが良いケースもある。
⑤職場復帰に関する判定委員会(いわゆる復職判定委員会等)の設置:構成メンバーは管理監督者、人事労務管理スタッフ、産業保健スタッフなどが想定される。決議についての責任の所在と明確化、迅速な開催のための工夫などの検討が必要
⑥職場復帰する労働者への心理的支援:自信を失っていることが多く、特に管理監督者は労働者の焦りや不安に耳を傾け、健康の回復を優先するよう努め、何らかの問題が生じた場合は早めに相談するよう労働者に伝え、事業場内産業保健スタッフ等と相談しながら適切な支援を行う
⑦中小規模事業場における事業場外資源の活用:産業保健総合支援センターや地域窓口(地域産業保健センター)、中央労働災害防止協会、労災病院勤労者メンタルヘルスセンター、精神保健福祉センター、保健所、地域障害者職業センター、など。民間医療機関のリワークプログラムは医療保険の対象である精神科デイケアの一環として提供され、復職を目指す労働者のためにコンピュータ作業やグループディスカッションなど業務に関連した作業プログラムが準備されている。
地域障害者職業センターでのリワークプログラムは無料の公的な職場復帰支援サービス。主治医と事業者の同意のもとで参加し、主な内容は復職に必要な生活リズムの改善やストレスへの対処について個別の支援計画の作成、個人で行う種々の作業プログラム、リラックス法やストレスマネジメント法、コミュニケーション技法などについてのグループワークプログラムなど。
緊急事態への対応
厚労省の「職場における自殺の予防と対応」に上げられている項目
①うつ病の症状(気分が沈む、自責、決断できない、不眠が続く)
②原因不明の身体の不調が続く
③酒量が増す
④安全や健康が保てない
⑤仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う
⑥職場や家庭でサポートが得られない
⑦本人によって価値のあるもの(職、地位、家族、財産)を失う
⑧重度の身体疾患にかかる
⑨自殺を口にする
⑩自殺未遂に及ぶ
事例に対する対応
①突然の失踪(解離性遁走)の場合:事例性としては無断欠勤。家族の協力を得て生存確認と安全確保を含めた本人の探索を行う。発見後、精神面の負担に配慮しつつ、傾聴して背景を探る。医療機関の受診を促しつつ、職場環境要因は改善する。
②希死念慮を打ち明けられた場合:肯定的態度で共感的に理解を示す。話すことで気持ちが整理され、思いとどまることもあるが、背景にうつ病など病気な状態が存在する場合もあるため同意を得た上で家族や産業保健スタッフに相談して医療機関の受診などの対応を相談するよう伝える。場合によっては職場組織内での情報共有についても同意を得て最小限の範囲で実施する。命の危険があり緊急性が高いと判断した場合は安全配慮義務の観点から家族など権利擁護者と協力して医療機関を受診させる場合もあり得る。治療により改善が見込めるが、背景に人間関係のトラブル、法律上のトラブル、借金などがある場合はそれらへの介入が必要になる場合もある。
③独身寮の自室に引きこもった場合:何らかの生活上の障害により徐々に引きこもるケースと突発的に引きこもりが発生するケースがある。前者の場合、本人との対話を通して事情を把握し、病的な背景が疑われる場合は医療機関の受診を促す。職場環境に要因があると考えられる場合には本人の同意を得た上で職場と連携して職場環境改善を行う。新入社員研修時から仕事の目的意識などについて十分話し合い、立場の同じ同世代間で交流を促す。
突発的な場合は人権に配慮しつつ、事例性を念頭に置いて対応する。具体的な問題点を整理し、本人に対して電話やFAX、内容証明付きの手紙で連絡を取る。連絡が取れない場合は権利擁護者である家族などからの働きかけや協力を依頼する。精神障害が強く疑われる場合は保健所からの往診や、衝動行動の内容によっては警察にも連絡する。
④そう状態が疑われる場合:事例性を明確にして問題行動として整理する。自制困難な場合は医療機関受診を説得するが、そう状態では病識が無いため本人の理解が得られない場合は問題行動に対して権利擁護者である家族に連絡をとり、事例性について説明した上で協力して面談や精神科受診につなげる。服薬の自己中断に要注意。
⑤客先で不穏な言動を起こしたと連絡があった場合:統合失調症の可能性を疑う場合、相手と本人の安全確保を最優先する。相手への断りと共に速やかに本人を連れ帰り、事情を確認する。統合失調症の場合病識がないため、本人を責めることはせず、事例性について客観的事実を整理し、本人の困りごとに対して協力して解決に向かうというスタンスを取る。直接の利害関係のない産業保健スタッフによる対応が望ましく、家族にキーパーソンを得るよう努めるが、協力が得られない場合は就業の適否判断の困難性を理由に専門医の診断を求める業務命令を出し、受診させることも考えられる。また、治療による回復後は周囲の理解がないと批判的な態度を取られることで再発しやすいため注意が必要。
教育研修
労働者への教育研修内容(セルフケア)
①ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識
②セルフケアの重要性および心の健康問題に対する正しい態度
③ストレスへの気づき
④ストレスの予防、軽減及びストレスへの対処の方法
⑤自発的な相談の有用性
⑥事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報
教育研修の内容(ラインによるケアと自身のセルフケア)
①メンタルヘルス活動を行う意義:「健康の保持増進活動」「労働の質の向上と職場の活性化」「企業活動のリスクマネジメント」など
②実施すべき活動内容:職場のストレッサーを減らし、緩衝要因を増やすことが管理監督者の役目。職場環境の改善と部下からの相談対応が主となる。
③職場環境の改善:ストレス要因を的確に評価し、問題点を明らかにし、必要があれば軽減する。ストレス要因の評価についてはkarasekのモデル(仕事の要求度、裁量権、支援に尺度で職場のストレス要因を表すモデル)、問題点については長時間労働者の面接指導や仕事のストレス判定図、軽減のための改善案の提案や実行ではメンタルヘルスアクションチェックリストなどの活用ができる。また、職場のストレスモデルとしてSiegristの努力-報酬不均衡モデルも知られている。職場環境の重要な要素として組織的公正がある。組織的公正は大きく、対人的(何かを決める時の配慮や尊重)、情報的(決定の理由や根拠の十分な説明)、手続き的(職場での意思決定の手続きや過程の一貫性)、分配的(自分の得た報酬や結果が公平か)の4つがある。
④部下からの相談対応:集団からのズレ、常態からのズレがカギ。変化に気づいたら傾聴の機会を持つ。
⑤ラインが知っておくべき心の病気:職域で罹患者の多いうつ病、全国に130万人を超える患者のいるアルコール依存症などを扱う。産業保健スタッフへのつなぎ方など対応方法について事例検討会などの方法が有効。
⑥新型コロナウイルス感染拡大によるストレスと働き方の変容
リテラシーを高めることで観戦関連の不安を低減させ得る。テレワークの広がりによる変化として管理監督者と労働者の間でコミュニケーション不足や信頼感低下が憂慮される。全員とのフェイストゥフェイスのミーティングやインフォーマルなイベントの企画、相談しやすい環境づくりなど。
セルフケアの教育研修の留意点とラインケアの教育研修の留意点
→セルフケア教育では労働者自身がストレスに気づき、軽減や対処が適切に行えるようになることが目的であるため、楽しく役に立つ企画となるよう工夫する。産業保健スタッフが担当することで、労働者が相談するハードルが下がる。繁忙期や年休取得者が多い時期を避け、なるべく多くの労働者が参加できるようにする。ラインケア教育では事業者の方針が反映できるよう工夫する。人事など関係部門と内容をよく検討し、PDCAサイクルを意識して経年的にレベルアップできるよう計画する。
キャリア発達
キャリア開発はキャリア発達を促すための方途。キャリア発達は心理学的知見に立ち、、個人がキャリアを発達させていく心理学的メカニズムに
焦点を当てている。心理学的メカニズムとしてのキャリア発達とは、個人のキャリア行動を全人格的発達の一部を構成する一側面と位置づけ、知的、身体的、情緒的、社会的発達と同様、一生涯変化し発達し続けるという知見に立つ。すなわち、キャリア行動を心理的要因(気づき、態度、興味、価値観、業績、生物的要因など)と環境的要因(社会経済的要因、社会の構造の変化、歴史的状況など)の相互作用の結果と捉える。
キャリア発達の3つのカギとなる概念
①「キャリアの意味」:個々人が生涯にわたって遂行するさまざまな立場や役割の連鎖及びその過程における「自己と働くこと」との関係づけや価値づけの累積の結果としての個々人の人生、生き様。
②「発達」:生涯にわたる変化の過程であり、個人が自分の生きる諸環境に適応する、より高次な能力、資質を獲得していく過程。
③「支援の必要性」:発達には外部からの働きかけが必要。
キャリア支援の意義
キャリア発達は社会的発達の重要な部分であり、メンタルヘルス推進においても重要。日本は急速に自己責任、自己決定を個人に求めるようになったため、組織は労働者一人ひとりがキャリア発達できるように支援する教育研修を実践することが重要。
キャリア発達とストレス反応
さらに、キャリア発達状況がストレス要因となることもある。成人の大多数はSuperの示すライフ・キャリア・レインボーによれば6つの役割を同時に果たしており(子供、学生、余暇人、市民、労働者、家庭人)、そこに充実感や葛藤が生じる。重要なのは、社会の中でより効果的に機能することを目指して自分らしく生きることを目指して、複数の役割の優先づけをして、現実的な行動がとれる能力と態度を発達させること。
キャリア発達が関与する4つのストレス反応
①職業的ストレス反応:仕事への嫌悪感や退屈感、興味ややりがいを失い、職務の遂行がうまく行かず、仕事が停滞したりミスやトラブルが起こる。
②心理的ストレス反応:気持ちの落ち込みや不安、イライラ。
③対人的ストレス反応:職場の上司、同僚、さらには夫婦、家族、友人などとの諍いの増加や過度の依存。
④身体的ストレス反応:風邪、頭痛、胃痛、体重の急元気な増減、不眠や脱力感などの種々の身体症状が現れ、健康上の問題を生じる。
キャリア発達プログラム
目的:キャリア上の課題に直面した時に自分で解決するための能力や態度を向上させること。職業人生の節目に、それまでの職業人生を振り返り、自分のもつ他の役割と関係づけながら「これからの人生をいかに生きようか」を熟考する機会を提供する意図的なしくみ。
セルフ・キャリアドッグ制度
各従業員がそれぞれキャリアの目標を明確化し、仕事の目的意識を高め、計画的な能力開発に取り組むことにより、仕事を通じた継続的な成長が促され、働くことの満足感が向上することを目標とした制度。
キャリア発達支援プログラム開発のための注意事項
①キャリア発達支援の目的は労働者の「セルフケア」を促進させることであり、労働者が自分のキャリア形成の主体者として自覚をもち、自律的なキャリア発達を支援することがプログラムの最初のステップとなる。そのため、ストレス対処は二次的な目的であり、また特定の資格取得や職業能力向上でもないことに注意する。
②キャリアの意味を正確に把握し、組織内の人事管理とは関係ないことを認識しておく。キャリア発達を昇進・昇格などの人事、あるいは特定の知識、資格取得を通じた上昇志向と誤解しないこと。労働者にも正確な理解を促すように努めること。
③労働者全員が参加できるような体制づくりが必要。
メンタリングプログラム
メンターとプロテジェによる相互発達支援関係を人工的に生起させ、その関係性をメンタルヘルス対策やキャリア発達支援に役立てる一種の社会関係プログラム
特徴
①一次予防に焦点が当てられていること
②実際に実行するのは専門家ではなく素人であること
③比較的コストがかからないこと
④メンターとプロテジェの自発的な参加が基礎となっていること
メンタリングの基本8ステップ
①メンター(熟練者、支援者、助言者など)が、
②プロテジェ(若年者、未熟者、非支援者)と
③1対1で
④継続的、定期的に交流して
⑤信頼関係の構築を通じて
⑥役割モデルを示しながら
⑦プロテジェのキャリア発達の支援と
⑧心理・社会的な発達の支援を行うこと
基本スキーム
①対人的支援や教育の専門家ではない素人の支援であること
②基本的に金銭的報酬をともなわないボランタリーな活動であること
③メンターとプロテジェの関係性の生成や進展を、事務局や専門家がモニタリングしていること
メンタリングの機能
キャリア的機能
・スポンサーシップ
・推薦と可視性
・訓練/コーチング
・保護
・挑戦しがいのある仕事の割り当て
心理社会的機能
・役割モデルの提示
・受容と確認
・カウンセリング
・友好
プログラムの実際(7ステップ)
第1ステップ:プログラムの計画と実施準備
第2ステップ:プログラムの告示と候補者の公募
第3ステップ:メンターとプロテジェの選抜
第4ステップ:オリエンテーションと事前教育
第5ステップ:メンターとプロテジェのマッチング
第6ステップ:メンタリングの実施とモニタリング
第7ステップ:プログラムの評価と改善
職場環境等の改善
ki職務レベルの改善
QWLの向上手法
・安全な作業環境の構築
・能力の向上につながる職務の割り当て
・個人の成長を保障する職の安全
・公平な評価と報酬
・昇進の機会の提供
・個人のプライバシーや権利の保護
・個人の私生活を脅かさない仕事の要求
・企業の社会的責任の追及
職務特性モデル
従業員の動機付け、業績、離転職行動に影響する5つの職務特性
①スキル多様性
②タスク一体性
③タスク重要性
④自律性
⑤フィードバック
①~③は仕事の有意義感につながる。④は仕事の結果への責任感、⑤は従業員の成長欲求の強さに繋がる。それら重要な心理状態を介して、高い内発的動機付け、高い質の遂行、高い職務満足、低い離転職率につながる。
MPS(モチベーションポテンシャルスコア)
式:(スキル多様性+タスク一体性+タスク重要性)÷3×自律性×フィードバック
職場集団レベルの改善
改善イニシアチブ別の職場環境改善の分類例と特徴
①経営者主導型:主体者は経営者、人事部門等:概要→経営者が自らの経験や知識、経営判断などにより職場環境改善を実施する。人事的な介入や費用のかかる改善の実現可能性が高いが、経営者の理念が先行し、職場ニーズとのギャップが生じる可能性があり、専門的サポートが不足しがち。
②管理職主導型:主体者は管理監督者:概要→自職場の職場環境改善を管理監督者が実施する。内容や方法は管理職研修などで伝達される。強制力を持って実行でき、職場労働者の負担が少ないが、管理職の負担は大きくなり、労働者のニーズとのギャップが生じる可能性がある。
③専門家主導型:主体者は専門家:概要→専門家が各職場を訪問し、専門的見地から改善点を指摘し、その指摘・助言に基づき職場環境改善を行う。職場全体への負担が少ないが、職場の自主性がない場合や職場のニーズとのギャップが生じる可能性がある。
④労働者参加型:主体者は労働者:概要→小グループでの集団討議の結果に基づき、職場環境改善を職場の半数程度の労働者が参加して実施する。現場をよく知る労働者の参加で適切なアセスメントができる。対話による民主的雰囲気が醸成される。ただし手法になじみがない場合は時間的、心理的負担が大きく、また他の改善活動とのすみわけに工夫が必要となる。
職場環境改善のためのヒント集
6つの改善技術領域
①作業計画への参加と情報の共有:作業日程作成への参加手順、少人数単位の裁量範囲、個人当たりの過大な作業量の見直し、分担作業の達成感、情報の共有
②勤務時間と作業編成:労働時間の目標値を定め残業の恒常化をなくす、繁忙期やピーク時の作業方法の改善、休日・休暇の確保、勤務体制・交代制の改善、個人の生活条件に合わせた勤務調整
③円滑な作業手順:物品の取扱い方法改善、個人ごとの作業場の整備、作業指示や表示内容の明確化、反復・過密・単調作業の改善、作業ミス防止策を多面的に講じる
④作業場環境:温熱環境・視環境・音環境の快適化、有害環境源の隔離、受動喫煙防止、衛生設備と休養設備の改善、緊急時対応の手順改善
⑤職場内の相互支援:上司に相談しやすい環境、同僚に相談でき、コミュニケーションがとりやすい環境、チームワークづくり、仕事に対する適切な評価、職場間の相互支援
⑥安心できる職場づくり:健康相談窓口、セルフケア学習、職場の将来計画や見通しの周知、昇進・昇格・資格取得の機会を明確にしてチャンスを公平に確保する、緊急の心のケア
職場環境改善の評価と改善に関する科学的根拠に基づくガイドライン項目
推奨事項
1.計画・組織作り→事業場での合意形成、問題解決型の取り組み
2.実施手順の基本ルール→良好事例の活用、労働者参加型で実施、職場環境に幅広く目配り
3.実効性のある改善策の提案→現場に合わせた提案の促進、ツール提供
4.実施継続→フォローアップと評価
職場集団レベルでの職場環境改善のステップ
①目的・方針の設定:職場トップの理解を得る、管理監督者に職場環境改善を進めることがストレス対策上重要であることの理解を得る。
②役割・責任・権限の明確化と組織作り:関係者によるワーキンググループ、対象となるグループを決める、職場内の情報や過去事例を集めておく
③職場集団での討議の実施と対策の検討:ヒント集などのツールを用いて良好な点と改善したい点をグループ内で話し合って整理し、改善のための提案を取りまとめる。OSHMSを導入している場合、リスクアセスメントの実施結果として活用できる。
④改善提案の実施と結果の記録:改善提案の実施時期と期間をきめ、実施後に評価する。自主的に進んだかどうか、職場の一体感やコミュニケーションの向上につながったかどうかが重要。
⑤監査と見直し:OSHMSを導入している場合、リスクアセスメントの一部として位置づけることもできる。
企業組織レベルの改善
働き方改革の背景・問題
①少子高齢化による労働力減少
②非正規従業員の増加と不合理な待遇格差
③従業員の負荷増加(長時間労働、過重労働、メンタルヘルス不調)
④健康問題やハラスメントに伴う経営リスク増加(過労死、過労自殺、パワハラ訴訟等)
⑤単線型キャリアパスと多様な働き方ニーズとの不整合
働き方改革の具体的取組
①雇用管理:限定正社員制度、副業・兼業解禁、高齢者・障害者・外国人などの雇用促進
②報酬管理:同一労働同一賃金、最低賃金、脱時間給制度(高プロ)
③人材開発:正社員登用制度、キャリアコンサルティング、リカレント教育、個人の学び直し支援
④労働時間管理:時間外労働の上限規制、勤務間インターバル制度、テレワーク
⑤安全衛生:職場環境の整備、ハラスメント対策、メンタルヘルス対策
目的
①経済的自立の実現
②WLBと柔軟な働き方の実現
③QWLの向上
④ダイバーシティの実現
⑤イノベーションの創出
⑥生産性の向上
組織の構成要素
①組織構造:部門化の程度、管理階層数、権限・地位関係など分業の関係様式、仕事の進め方や各種手続き、評価制度や就業規則などの諸制度・規則・ルール(組織の静態)
②組織過程:コミュニケーション、意思決定、リーダーシップ、コンフリクト解消など成員の相互作用の過程(組織の動態)
③組織文化・風土:成員によって共有された信念・価値観・規範の集合体、ないしは共有されたモノの見方、考え方、パラダイムのこと。組織風土とは社風や職場の雰囲気のような、成員に共有化された組織全体に関する主観的特性
④人間行動
組織開発
組織内の当事者が自らの組織を効果的にしていくことや、そのための支援
ホールシステム・アプローチ:経営層から管理者層、一般層まで階層を超えて一堂に会し、全体のシステムについてありたい姿を本音で対話することを通して、新しいアイデアや施策を生み出していくこと。
対話型組織開発
アプリシエイティブ・インクワイアリー:組織や個人の「ありのままの姿」を肯定的に受け入れた上で未来の可能性を探求し、実現する。
①ディスカバリー(ポジティブコアを探す)、②ドリーム、③デザイン(「挑戦的宣言文」を作る)、④ディステニー(変革を定着させる)
フューチャーサーチ:特定課題に関係するすべてのステークホルダーを招き、コモングラウンドを見出す。①過去の振り返り、②現在の探求、③理想的な未来のシナリオを描く、④コモングランドを発見する、⑤行動計画を作成する
ワールドカフェ:カフェのようにリラックスできる環境で話し合い、深い相互理解や新しい知識を生み出す。①模造紙にいたずら書きをするなどテーマについて探求する、②他テーブルへ移動して他花受粉する、③最初のテーブルに戻り気づきや発見を統合する、④全員で集合的な発見を話し合い共有する。
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