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授かり、失い、そして母になる。

命を授かり、失いました。
そして母になりました。

卒論を提出し、
大学生活に区切りをつけた頃、
お腹に命が宿りました。

大学のトイレで検査薬を使い、
二本の線がじんわり浮かぶのを見、
静まり返った図書館の中で
体中に熱がめぐるのを感じました。

こんなに早く、
私達のところへやってきてくれた赤ちゃん。

まだ顔も見ていない、
声も聴いていない、
性別も分からないその子を、
その時からすでに、
深く深く愛していることを、
自分で感じました。

電車に乗るとき。
授業を受けるとき。
バイト先でコーヒーを淹れる時。
お腹に手を当てました。

夫を抱きしめる時。
夜眠りにつく時。
朝焼けに身を包まれる時。
お腹に手を当てました。

そこに、確かに命が宿っている。
私の体の中で、確かに命がうごめいている。23年間私だけのものだったこの体の中で、確かに、もう一つの人生が始まっている。
それを実感しました。

小学校5年生の時から毎月きていた生理が嘘のように止まり、
胸が張り、歩きながらも寝れそうなくらい、
眠気が強くなりました。

自分の体が、
心が、
母になっていくのを感じました。

もう少し安定したら
大切な人たちにも伝えていこう。
そう思ってました。

それから7週経った2月16日。
下着に滲んだ鮮血を見て、
心臓が冷たくなるのを感じました。

クリニックへ向かう途中の電車の駅で、激痛。
どくどくと血が流れ出すのを
感覚で理解しました。

夫に会う前に、多分歩けなくなる。

思わず、
隣に座っていた女性に声をかけていました。

「私、あの
流産しかけてるかも知れなくて」

初めての、初めての赤ちゃんなんです。
助けてください。

それから、駅員さんや救急隊の人、真っ青になった夫に囲まれて、クリニックへ。

エコーに写った暗闇には、
赤ちゃんのいない胎嚢が映し出されました。

「4人に1人は初期流産です。
初期流産は99%、赤ちゃんの側に生まれてこれない理由があったということ。
自分を責めないように」

でもその確率に
自分が当たるなんて思わなかったよ。

それから、1週間が経ちます。
流れてゆく血をトイレで毎日見つめ、生理痛よりはるかに重い痛みに呻きながら
どこかで
どうか終わらないで。
そう祈ってしまう。

私を置いて行かないで。
私の初めての、
私と
この世で何よりも大切な人の赤ちゃん。

妊娠したことも、
流産したことも、安定期がくるまでは…次妊娠するまでは…黙っていなきゃ…
そう最初は思いました。

この私の話を聞いて、
傷付いてしまう人がいるかも知れない。
同情を買いたいだけと思われるかもしれない。目立ちたがり屋と鼻で笑われるかも知れない。
こんな時まで、いいねを欲しがっているのか。
そう思われるかも知れない。
「こんなことSNSにあげちゃって、大丈夫なの?この子」
そう思われても、それは仕方ない。

でも、
私の中に宿った命が今、
ちゃんと私のお腹を痛めて
出発しようとしている今、
文字を打つ手が止まらないのは、
知ってほしいから。

電車の駅で、
踏ん張れたかもしれないのに
思わず女性に助けを求めてしまったのは、
救急隊の方に抱き上げてもらったのは、
涙が止まらなくなったのは、
知ってもらいたかったから。

日本中を走るすべての電車を止めて、
声を枯らすまで、
皆が知ってくれるまで、
叫び続けたかった。

私の中に
確かに新しい命が在ったこと。
私が、その命の母になったこと。
そしてこれらも、その母で、父で、
私達が在り続けるということ。

それを、
世界に知ってほしかった。

顔を見ることも、その可愛い声を聴くことも、性別を知ることも、
その小さな体を抱きしめることも
できなかったけれど、
私はその命の母になったことを。

お腹に手を当てるたびに、
血が流れ続ける今でも、
そしてこの先も一生、
その子のぬくもりを感じることを。

誰かに、
この話に目を留めてくれたあなたに、
知ってほしかった。

畠 天と名付けた我が子を
嘘みたいに深く、深く
愛しています。

あなたのお母さんになれて、
ママは嬉しいよ。

世界には優しさ溢れてること、
誰もが何かを抱えて
それでも生きていること、
私はもう愛されていること、
教えに来てくれてありがとう。

またすぐに、
忘れ物をとって帰ってきてね。

そんなことを呟いて空を仰ぎなら、
お腹に手を当てています。

そこに、天の鼓動を感じます。

最後まで読んでくださった方、
ありがとうごさいます。

皆が生まれてきてくれたこと、
そんな皆にこうして出逢えたこと、
とても幸せに思います。

皆の大事な人にも
一言だけ
そんな思いを伝えてあげてください。

これからは親子3人、
それから何人家族が増えても
はっちゃかめっちゃか暮していこうと
そう思います

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