偉大な日々ではないけども

「新婚生活、どう？　やりたいこと、できてる？」

いつもふらっと連絡をくれるお兄ちゃんみたいな人から、またこんなLINEをもらい、一瞬考える。

最近、本当に風の如く1日1日が過ぎ、１週間が過ぎ、1ヶ月が過ぎている。

目がまわるような速さで、日が昇ってまた沈んでいる。

1日に何回もヘンシーン！！と変身してる自分がいる。

朝、日が昇って妻として目が覚める。

台所に立ち、流れてくるニュースと天気予報を片耳で流し聞きしながら、

卵焼きをじゅわーっと焼いて、ウィンナーを茹でて、

夫のお弁当詰める。

かきこむようにいただきまーすごちそうさまーとふたりで言う。

お皿洗いしながら夕飯の計画を立てて、

冷凍庫の漬け込んだ鶏肉を冷凍庫で解凍する。

夫が会社に出発したら、一瞬ヨガとニュースで一息ついて、

洗濯機を回し、窓を開け、

メイクをして、蕎麦屋のバイトに変身して、自転車に飛び乗る。

蕎麦屋で汗だくになりながら天そばやらもりそばを運びまくり、

猛スピードでまかないをいただいて

また自転車に飛び乗って坂を駆け上がる。

蕎麦湯の匂いを漂わせながら塾の先生に変身。

夫を泣かせながら予習した算数を頭の中で反復。

超ハイテンションの英語の先生と、算数の先生をこなして、

さよならーの声で子供達を送り出し、

自分もまた自転車に飛び乗って、

家路につく。

妻になる。

そしてまた夜が更けて、朝が来る。

偉大なことは、何一つしてない。

特に何も、

趣味とか、ココロオドル〜ってこともしてない。

でも思う。

こんななんでもない日常が

ぜんぶぜんぶ、愛おしい。

バイト行きたくなーいと布団の中でうじうじする今日も、

ご飯炊き忘れたーっと絶望する今日も、

入道雲めっちゃキレーイと叫ぶ今日も、

算数、これわかんなくね？と生徒そっちのけに頭抱える今日も、

私のお財布今月もひもじいんですけどなんでと嘆く今日も、

ぜんぶぜんぶ大切で、なんかかけがえない。

ドタバタと駆け抜ける今日は、

きらきらしてる。

と思う。

何一つ

偉大なことはしてない。

でも

そのドタバタの中に、

梅シロップを口に含んで、

えめっちゃ美味しい！と顔をほころばせる一瞬があったり、

バイト帰りに一人、山が見える公園でしみじみ、

子供達がガン見してくる前でアイスをかじる瞬間があったり、

夫婦そろってお笑い番組にツッコミを入れるくだらない瞬間がある。

そんなどうでもいいような日常が、

今の私の暮らし。

そんな暮らしが、この街のすべての窓の向こうにあるんだと、

日々感じる暮らし。

何気ない日常が、豊かだと知る暮らし。

その暮らしが好きだと思う。

そして、それでいいんじゃないかと思う。

生きてるってそういうことなんじゃないかと思う。