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月とウサギとネコと シロクマ文芸部

月の耳はどこにある?
たくさんクレーターがある中に
見つけてごらんよ月の耳
君の声は聞こえているよ
いつだってどこだって
歌ってごらんよ月の歌

月のウサギ達が歌っているのでしょうか。
歌遊びのような、そんな歌声が聞こえてきました。

ネコさんは月を見あげて泣いています。
どうしたのでしょうか。
ネコさんは遠い日に月のウサギだったことがありました。
ふっと聞こえてきた歌声に昔のことを思い出したのです。
ネコさんは、自分の耳に触れてみました。
小さな短い三角のような耳です。
やはりネコさんは猫。ウサギではありませんでした。

お月様の耳は不思議な耳。
子ども達の心の声を聞くことができます。
人間の子ども、動物の子ども、そして星の子ども。
今夜は誰の心の声を聴いているのでしょうか。

ネコさんは小さなお姉さん。五日前に妹たちが生まれました。
お母さんは妹たちを優しく舐めてやり、おっぱいを飲ませています。
私のお母さんなのに、妹たちにお母さんをとられたの。
それも悲しくて泣いていたの。

お月様は歌います。月のウサギも歌います。
それはネコさんも歌ったことがある子守歌。
ネコさんも歌います。
優しい優しい子守歌。

ぐずっていた妹たちは、小さなお姉さんの側に来て、お姉さんに体を寄せて眠りはじめました。
可愛い寝顔にホッコリします。
ネコさんのお母さんも側に来てネコさんを優しく舐めてくれています。
良いお姉さんになろうとネコさんは思うのでした。 

お月様は優しく微笑んでいます。ウサギ達の歌声はハミングに変わりましたよ。いい夜です。



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