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ショートストーリー

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#青ブラ文学部

港のマリー 青ブラ文学部

港のマリーと噂されたのは昔の事。そのことを知っているダチももういない。 「港々に女がいてさ」そう言ってたアイツもどこかの海で藻屑になっているんだろうよ。私に待っていてくれと言っていたのも、嘘か誠かもわからない。いい加減な男だったのさ。 私は歳を重ねた。この港のあるこの街を出ることも無いままに、あっという間に過ぎていく時をただ眺めていただけ。 最近、早朝の港を毎朝歩く。昔の思い出をひとつひとつ捨てていくために。 私は、もはやマリーではない。ただの木田真理子。なんて平凡な名

赤い橋 青ブラ文学部

時々頭をよぎる光景、赤い橋。 どこかにある橋なのか。ただの空想の産物か。 ほんの一瞬しか現れないから橋の詳細は分からない。 大きな橋かと聞かれれば、違うような気もする。 では、小さな橋かと問われれば、それも違うと思うのだ。 ただ、その橋は河川や海に架かる橋では無く、木々が生い茂る森の中にあると思われる。私は獣道のような場所から赤い橋を見上げているだけ。 何度も何度も、現れる赤い橋。 私はそこに行きたいのだろうか。 原風景なのか、輪廻の中で出会ったことのある橋なのか。 いつ

ゲジ眉物語(青ブラ文学部)

迷っている。 僕のゲジゲジ眉を剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題だ。 はっきり言って、この眉は嫌いだ。好むと好まざるとにかかわらず、父譲りのこの眉を剃り落としたいが、学校があるからマズイ。それに街を歩けば、声をかけて来るお兄さん方があるかも。因縁でもつけられ、仲間に入れと言われたらどうする? で、毎回同じ事を繰り返し思い、結論を延ばす。 ある日、僕は一人で繁華街を歩いていた。 後ろから声をかけられた。振り向くと、さっきすれ違った綺麗なお姉さん。 「あの、私のカットモデ