真夜中の公衆トイレ #たいらとショートショート
トイレに行きたい。
真夜中の公衆トイレの前で立ち止まる。
薫は利用を躊躇した。我慢の限界が近いのはわかっている。店で済ませたかったが、変なおじさんが入ったきり出てこなかったのだ。
家まで歩けば30分、でも今日は酔っているからどうだろう。
何だか夜の公衆トイレは気味が悪い。が、考えている時間が惜しい。
薫は「えいっ」とばかりに、薄暗い公衆女子トイレに入って行った。
四つばかりある個室の三つの扉には『使用禁止』の紙が貼ってある。
残る一つの扉をノックする。返事は無い。