マガジンのカバー画像

ショートストーリー

116
短い創作小説を置いています。
運営しているクリエイター

2024年10月の記事一覧

ススキ ショートストーリー(694文字)

買い物帰りにいつもの道を歩く。小さな水路のような川べりにススキがたくさん生えていました。 「ちょっと、そこの美しいお嬢さん」 そう声がしたのですが私はお嬢さんでも無く、美しくもありません。でも一応辺りを見回しました。けれど先ほどすれ違った初老の男性の後ろ姿が見えるばかりです。 どうも私に声をかけてきたのはススキのようです。 この辺りのススキも随分増えてきました。ススキたちの僅かな隙間にやせ細ったセイタカアワダチソウが隠れるように一本覗いているのも見えました。 随分前、

ハロウィンの夜 ショートストーリー

2学年のハロウィンパーティーの後、仮装したままパレードに参加した。 私の仮装は黒猫。本当は魔女になりたかったのだけど、いろいろあって私は黒猫に仮装する事にしたの。 星のついたステッキを振りながら意気揚々と行進の末尾を行く私。様になっていると自画自賛。 そしたらね、本物の黒猫たちが私の後ろをついて来たのよ。足取りも軽やかに。初めからそうなるのが当たり前だったみたいに。不思議よね。 皆も驚いた顔をしていたけれど、気に入ったみたいで、私の肩をポンポンと叩いてくれたんだ。 「やっ

山姥海姥(やまんばうみんば)ショートストーリー

あたしは以前、山姥だったんだがね、今は海姥なんだよ。海姥ってあまり知られてはいないだろうが……。 そうかい、あんたも知らなかったのかい。 まあ、聴いておくれよ。あたしの話。 かなり昔のことさ。あたしゃ泣く子も黙る山姥でね。恐れられたものさ。 道に迷った人間を惑わしたり、頂いたりしたんだが、そんな生活に嫌気がさしたというか飽きたというか、あたし自身が時代にそぐわなくなって。だもんで山を下ったのさ。 結構歩いたかね。すると海に出たんだ。話には聞いていたが向こうの向こうのそのま