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ショートストーリー

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2023年8月の記事一覧

渚にて(ショートストーリー)

ただ歩くだけで良いからと君は言った。 「最後のお願い、一緒に渚まで歩いて欲しい。話しかけてくれなくても良いの」 私は小さく頷き、彼女の歩調に合わせてゆっくりと歩く。 私たちは終わったのだ。終わりがあるということは始りがあったはずなのだ。それはいつだったのだろう。どこで出会ったのだろう。 彼女の長い髪、その後ろ姿に見覚えがあるような気もした。 そうだ、この私はいったい誰なんだ。名前は?彼女の名前もわからない。自分の名前さえも。 だが、私は彼女を知っていたはずだ。愛していた記

ゲジ眉物語(青ブラ文学部)

迷っている。 僕のゲジゲジ眉を剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題だ。 はっきり言って、この眉は嫌いだ。好むと好まざるとにかかわらず、父譲りのこの眉を剃り落としたいが、学校があるからマズイ。それに街を歩けば、声をかけて来るお兄さん方があるかも。因縁でもつけられ、仲間に入れと言われたらどうする? で、毎回同じ事を繰り返し思い、結論を延ばす。 ある日、僕は一人で繁華街を歩いていた。 後ろから声をかけられた。振り向くと、さっきすれ違った綺麗なお姉さん。 「あの、私のカットモデ

アイスクリーム(140字小説)

アイスクリームを二つ買った。老夫婦の楽しみ。 食べようと冷凍庫を開けたら、二つとも無くなっていた。 アイスクリームを三つ買った。今度は食べられる。食べようと冷凍庫を開けたら、三つとも無くなっていた。 私は頭の黒い、いや、白いネズミを退治した。 明日はアイスクリームを一つ買う。 楽しみだわ。 甘いものは苦手ですが、アイスクリームはいただきます。特にハーゲンダッツが好き、ですが、ちょっとお高い。なので、自分を褒めたい時、元気づけたい時、ミニカップを購入します。時々の特別感を