【映画の感想】シン・ウルトラマン

庵野秀明のこと、わたしはあんまりよく知らなかったんだけど、『シン・ゴジラ』がすごくおもしろかったので、今回庵野秀明が脚本を務める『シン・ウルトラマン』は、それはそれは楽しみにしていた。
劇場予告で、斎藤工や西島秀俊のシリアスな表情を見たらますます楽しみになって、友達と「絶対に見に行こうね」って盛り上がったほど。
タイミングが合わなくて初日にはいっしょに行けなかったから、後日にしようって約束をしたんだけど、なんかもうわたしは我慢できなくって、授業が終わってバイトもなかった公開1週間経たないくらいのある日、ひとりで映画館に足を運んだ。
そのくらい楽しみにしていた。

率直に、お話はとてもおもしろい。
突如巨大かつ正体不明のかいじゅう(変換めんどいからひらがなでごめん)たちが、なぜか日本だけに出現するようになってしまって、政府はあらゆる手段を用いて対策を講じる。
で、主人公はかいじゅう退治専門のエキスパートだったんだけど、逃げ遅れた子供を助けて死亡。
その体のなかに宇宙生命体が宿り、自由意志で活動し始める。
宿主の思考と宇宙生命体の思考は少しずつ交わり、やがて彼は人類を守るべく身命を賭していくことになる。
それが、ウルトラマンと呼ばれる存在。

このシンプルで熱いストーリーと、キャストの熱演を、最初から最後までひたすら邪魔し続けるのが「カメラワーク」だ。

監督を務めるのは樋口真嗣。
わたしは樋口監督の作品を観たことがないんだけど、この人は毎回こんなカメラワークで映画を撮ってるんだろうか……?
だとしたらちょっと心配になっちゃうくらい、とにかく目障りでノイジーな画が最初から最後までほぼ全編にわたって差し込まれてくる。

机の下から、足の隙間から、なぜか『シン・ウルトラマン』には覗き見っぽい画角のシーンが多い。
ある意味アニメ的な表現と言えるかもしれないそれは、実写になった瞬間、「いやそこから撮るのはいくらなんでも無理があるでしょ」というツッコミ待ちの要素になってしまった印象。
なんかそういう「無茶苦茶な画角」のシーンが、数分に一回のペースで入ってきて集中できない。
無茶苦茶すぎて、シーンによってはなんなら椅子の背もたれや机の引き出しのほうがスクリーンの大半を占めている。
何が撮りたいのか教えて監督。
家具……?

そのくせ、長澤まさみ演じる主人公のパートナーが、自分に発破をかけるために自らのお尻を両手で叩くシーンなんかは、しっかり正面から撮るからまた癪に障る。
尻を叩くシーンだけなぜか毎回尻がアップになる。
まさみの尻は確かに素晴らしい。
監督が何を撮りたいのか、このシーンだけはすごいわかる。
だけどそうじゃないんだ監督、そうじゃない……。

『シン・ウルトラマン』は、無邪気なおじさんの夢を限りなく詰め込んだ、まごうことなき「空想特撮映画」なんだと思う。
映画を作った無邪気なおじさんと同じ感覚で、観る側も無邪気なおじさんメンタルじゃないと、おそらく楽しめない。
「この画角、あんまり実写映画で見たことない! やってみよー!」
「まさみのお尻最高だから、アップにしちゃおー!」
こんな会話があったかどうかは定かではないけど、なんだかそういうキラキラしたおじさんの無邪気さが随所に感じられて、ごめん、わたしは集中できなかった。

『エヴァンゲリオン』シリーズや『シン・ゴジラ』でも多用された、「テロップで状況を説明する」という手法は本作でも健在。
ただ上記2作に比べると、テロップがとにかく読みにくかった印象がある。特に序盤。
あれは何度も観に行ったり、Blu-rayとかで一時停止したりして観る類のやつだとは思うんだけど、でももうちょい読みやすくしてくれてもよかったんじゃないのかな。
とにかく切り替えが早すぎる。

庵野監督ってほんとにセンスの塊なんだな、と実感した時間だった。
ストーリーテリングはともかく、少なくとも「映像」において、庵野監督の作品でストレスを感じたことはないもん。わたしは。

虚無って帰ってきたら周囲ではなんだか高評価でアウェーを感じたこともあって、せっかくなので感想を書いてみたよ。
でも最初にも書いた通り、ストーリー展開は好き。
ラストのセリフなんて感動しちゃうもんね。
あと戦闘シーンとかもワクワクしたし楽しかった。
主題歌も素晴らしかった。
それだけに、おじさんがひたすら無邪気に撮ってしまったカメラワークのダサさが悔やまれる。
遮蔽物で巨大化したまさみのパンツを隠すくらいなら、最初からその画角をやめよう樋口監督。
そこから撮らなければ遮蔽物がスクリーンのど真ん中に鎮座するようなことはないんだよ樋口監督。
ねえ聞いてる? 樋口監督……。

でもまあ、おじさんよかったね。
特撮好きだもんね、楽しかったね。

※追記

この映画を観たフェミは怒る、という意見を見たんだけど、なんかフェミニストが怒るほどのきつい描写はとくにないとわたしは思った。「監督のオナニー」と断ずるほど独善的な欲望に満ちてもいない。ただ本当に心の底から「おじさんが無邪気に目をキラキラ輝かせながら楽しんで作って」いる作品だと思ってる。そしてわたしは、それが「きつかった」ってだけ。







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