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起業時の資金調達方法【15選】メリット・デメリットを詳細解説

これから起業を考えている方のなかには、必要な資金が足りずに悩んでいる方もいるでしょう。起業における資金調達方法はさまざまで、自己資金の有無や起業する事業規模・事業内容によって適している方法が異なります。
そこでこの記事では、起業時に利用できる15種類の資金調達方法の概要とメリット・デメリットについて解説します。スタートアップ企業やベンチャー企業など目的別のおすすめ概要の資金調達方法についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

起業時のおもな資金調達方法

起業時の資金調達方法を決める判断基準の1つが自己資金です。自己資金は、預金や貯金、保有資産を売却してできた資金、退職金など自分で所有しているお金を指します。
自己資金が一定額以上ある方は、銀行や信用金庫からの融資またはノンバンク(お金を貸すなどの与信業務に特化した金融機関)からの借入を推奨します。自己資金がない場合はベンチャーキャピタルや投資家から出資を受けることを検討しましょう。
融資を受ける場合に必要となる自己資金の目安は、「起業資金総額の3分の1」程度の金額です。目安となる自己資金が用意できない場合は、最低でも100万円を目安に用意するようにしましょう。
出資を受ける場合は自己資金および返済も不要ですが、将来的に事業の成長が見込めない場合は出資してもらえません。投資家は出資先の企業が上場した際の株式の売買差益を目的に出資しており、成長性が乏しければリターンを得られないためです。従って、これから起業を検討している方は、事業の成長性も視野に入れる必要があるでしょう。

資金調達方法1『出資』

出資とは、特定の団体や個人から資金の提供を受けて事業を始めることです。多額の資金が必要な場合や成果が出るまでに時間がかかる場合などに利用する方法となります。
ここでは、出資による主な資金調達方法を4つご紹介します。
 
・自己資金
・ベンチャーキャピタル
・エンジェル投資家
・クラウドファンディング

自己資金

資金調達を考える前に、まず自己資産を資本として事業を始めることができないか検討しましょう。自己資金を起業の資金に充てることも出資のひとつと言えます。
自己資金で事業を始めるメリットは経営権を保持できて経営の自由度が高い状態にできることです。金利負担がなく、資金調達先とトラブルが起きるリスクがない点もメリットでしょう。一方、資金量に限界がある点はデメリットとなります。また、事業の清算を行った場合、自分の資産を失うことになってしまいます。

VC(ベンチャーキャピタル)

ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業に出資して株式を取得し、その企業が上場した際に株式を売却して大きな値上がり益の獲得を目指す投資会社や投資ファンドのことです。一般的なベンチャーキャピタルは出資だけでなく経営コンサルティングも行います。
ベンチャーキャピタルの出資を受けるメリットは経営のアドバイスを受けられる点や、顧客やビジネスパートナーを紹介してもらえる可能性がある点です。しかし、起業家の保有株率が下がる点や起業直後の資金調達が難しい点はデメリットでしょう。
ベンチャーキャピタルを利用する場合は、設立目的や支援実績、外部協力者などを確認しておくことが大切です。株の買戻し条件や投資契約の各条項についても留意しなければなりません。

エンジェル投資家

エンジェル投資家とは、ベンチャー関連の出資を得意とする個人投資家のことです。ベンチャーキャピタルと異なり、個人の資金を投資します。出資のリターンとして企業の成長を配当や株式で受け取ることが一般的です。最近では、起業したい人とエンジェル投資家をつなぐビジネスマッチングも存在します。
メリットは、エンジェル投資家が共同経営者として事業に参画し、具体的な支援やアドバイスを期待できる点です。一方、起業家の保有株比率が下がる点や、成長が見込めない場合は出資してもらえない可能性がある点は注意が必要です。

クラウドファンディング

近年、一般的になりつつある資金調達方法のひとつがクラウドファンディングです。クラウドファンディングとは、インターネット上で実現したい事業を掲げることで、理念に共感した人や活動を応援したい人から資金を募る資金調達方法です。
出資と比較して低リスクで起業にチャレンジできる点や、起業前から全国各地で支援者を集められる点は大きなメリットとなります。しかし、クラウドファンディングの認知度の向上に伴い、プロジェクト数も増加しているため強い特徴やストーリーがないと資金が集まらない可能性があります。
また、クラウドファンディングはあくまで「個別のプロジェクト」に出資するため、「起業家」や「法人」自体に出資するものではありません。従って、プロジェクトごとに収支の計算や結果の総括などを行い、出資者に配分や報告を行う必要があります。

資金調達方法2『融資』

返済を前提にお金を貸してもらう「融資」も一般的な資金調達方法です。融資による資金調達方法はさまざまですが、ここでは、以下の6つの方法をご紹介します。
 
・制度融資
・銀行融資
・信用金庫
・ビジネスローン
・日本政策金融公庫の融資
・マル経融資
 

制度融資

制度融資とは、地方自治体・金融機関・信用保証組合これら3つの機関が連携して提供する融資のことです。各地方自治体が独自に制度融資を実施しているため、自治体によって対象者や利用条件が異なります。中小企業や小規模事業者の資金調達サポートを目的としているため、これから起業したい方も借り入れしやすい制度となっています。
メリットは創業前でも申し込みできる、金額によっては無担保・無保証で借り入れできる点です。また、自治体によっては支払利息や保証料の一部補助をしてくれる場合があります。経営相談にも乗ってもらえる点も、起業に不安を抱えている方にとってうれしいポイントでしょう。
デメリットは申し込みから実行までに時間がかかる点や、支払利息とは別に保証料の負担が発生する点です。制度融資の利用を検討している場合は余裕を持って申し込み、事前に保証料の負担金額を確認しておくようにしましょう。
 

銀行融資

銀行から資金を借り入れる資金調達方法ですが、設立直後の会社には信用問題から融資してもらえない可能性が高いため地方銀行の利用を推奨します。銀行融資を利用するメリットは、顧客やビジネスパートナーの紹介や情報提供が期待できる点です。一方、「金利負担が発生する」「設立直後の会社は利用が難しい」といったデメリットは留意しなければなりません。
 

信用金庫

利用する信用金庫によっても異なりますが、総じて銀行より融資を受けやすい傾向にあります。信用金庫はどちらかというと、設立して軌道に乗った会社に向いているため、まずは「制度融資」を利用する方が現実的でしょう。信用金庫の特性から、特に地域密着型の会社が活用しやすい資金調達方法となっています。
メリットは前述のとおり、銀行と比較して融資のハードルが低い点です。顧客やビジネスパートナーの紹介や情報提供が期待できる点は銀行と共通しています。デメリットも銀行と同様に金利負担が発生する点と設立直後の会社は利用が難しい点が挙げられます。
 

ビジネスローン

ビジネスローンとは、銀行や信用金庫などの民間金融機関や、消費者金融業者や信販会社などのノンバンクが貸し付けを行う事業性の融資のことです。簡単に言うとビジネスローンは、銀行が取り扱う無担保の少額ローンや消費者金融が取り扱う事業用ローンとなります。
メリットは金融機関の通常の融資と比較して審査期間が短い点や、担保・保証人が不要である点です。しかし、金利が金融機関の通常の融資よりも高く、1.0%~14.0%台と金利幅が広いため返済負担が大きくなるというデメリットには注意しなければなりません。
 

日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫の創業融資は新しく創業する人を支援する目的で行っている融資のため、事業実績がない起業段階の方でも申し込み可能です。原則として、日本政策金融公庫の創業融資を受けるには、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要となります。ただし、日本政策金融公庫の公式サイトの「自己資金の要件を満たすものとする要件」を満たせば必要な自己資金がなくても創業融資を利用できます。
メリットは、無担保・無保証で融資を受けられ、要件を満たせば自己資金なしで融資を受けられる点です。デメリットは、申し込みから入金までに1ヶ月から1ヶ月半程度かかる点のみのため、メリットの方が大きいと言えます。
 

マル経融資

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)とは、商工会議所の推薦にもとづき、必要な資金を無担保・保証人不要で利用できる日本政策金融公庫の融資制度です。メリットは金利が低く無担保かつ保証人不要な点です。なお、この制度は創業後1年経過しなければ利用できない点がデメリットとなります

資金調達方法3『借入』

出資や融資のハードルが高いと感じる方は借入も検討してみましょう。借り入れ方法は以下の2つが挙げられます。
 
・個人の銀行ローン
・知人からの借入
 

個人の銀行ローン

個人の銀行ローンの中には、フリーローンと呼ばれる目的を問わないものがあります。フリーローンであれば、起業した事業の成長性にかかわらず、個人の信用で比較的簡単に申し込むことが可能です。一括で高額の融資が受けられる点はメリットとなりますが、繰り返しの借入はできないため、継続的な融資を考えている方にはその点がデメリットとなるでしょう。
 

知人からの借入

親族や知人からお金を貸してもらう資金調達方法です。トラブルを防ぐためにも出資してもらう際に契約書を作成しておくことを推奨します。
知人からの借入の場合、経営権を保持しやすい、条件に融通が利く、資金調達時の審査が不要などさまざまなメリットがあります。しかし、ベンチャーキャピタルのように専門家のアドバイスを受けられない、経営がうまくいかなかった場合にトラブルに発展しやすいなどのデメリットあるのです。
金融機関と比較して安易に借りられる分、親しい人との関係を壊してしまうリスクがあるということを忘れないようにしましょう。返済額や期間を契約書で決めておいたとしても、親族や知人の経済状況が悪化して返済を迫られるケースも少なくありません。あらゆるリスクを想定して、金融機関に融資を受ける以上に慎重に検討する必要があります。

資金調達方法4『助成金や補助金』

これまでにご紹介した方法のほかにも、助成金や補助金を利用するという方法もあります。ここでは、以下の助成金および補助金をご紹介します。
 
・創業補助金
・小規模事業者持続化補助金
・再就職手当
 

創業補助金

創業補助金とは、起業や開業する人が受けられる補助金です。国が主催する「地域創造的起業補助金」のほか、地域ごとにさまざまな補助金制度が用意されています。例えば、東京都中小企業振興公社が運営する「創業助成金」は上限300万円、補助率2/3としています。
創業補助金のメリットは、起業前・起業後問わず申し込みできる場合が多く、基本的に返済が不要であることです。助成金の場合は申請さえすれば高確率で受給できる点も特長です。一方、常に募集しているわけではなく、補助対象経費の種類も限定されている点はデメリットでしょう。また、将来的に収益が上がった場合は補助金を返済しなければならないケースもあるようです。
まずは募集自体行われているか確認し、受給要件やいつ頃受給できるのか、どのような場合に返済が必要となるのかなど詳細を把握しておきましょう。
 

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、日本商工会議所や全国商工団体連合会などの支援を受けながら、事業計画書と創業計画書に基づき販路開拓を行う際に費用の3分の2まで(最大50万円)まで受給できる補助金制度のことです。
メリットは、経営計画をしっかりと練ることができる点や経営アドバイスが受けられる点です。デメリットとして、補助金は原則として後払いであるという点、利益が出たら返納しなければならない可能性もある点が挙げられます。
 

再就職手当

再就職手当は、雇用保険の受給資格者が創業した場合にもらえる手当です。起業も再就職に含まれます。離職して失業状態にあり起業を検討する場合は、都道府県労働局やハローワークに問い合わせてみましょう。社会保険労務士は再就職手当に精通しているため、社労士への相談もおすすめです。
メリットは、前職の退職日から原則として1年以内に起業する人であればいつでも申請でき、要件を満たせば高確率で手当を受けられる点です。
一方、デメリットというよりも注意点になりますが、起業した翌日から1ヶ月以内に支給申請書を郵送する必要があります。さらに、自己都合で前職を退職した場合は、1ヶ月経過してから起業しないと支給対象になりません。

おすすめの資金調達方法

スタートアップ起業やベンチャー企業など目的によって適した資金調達方法が異なります。ここでは、企業のタイプ別に適した資金調達方法を解説します。

スタートアップ企業

スタートアップ企業とは、新しいビジネスモデルで市場を開拓し、短期で急成長する起業のことです。創業したばかりの段階では多額の資金が必要となりますが、銀行からの融資は難しい場合が多いため返済義務のない資金調達方法が適しています。
具体的には、日本政策金融公庫の融資やベンチャーキャピタルからの出資、エンジェル投資家からの出資、クラウドファンディングなどが挙げられます。

ベンチャー企業

ベンチャー企業は、設立が間もない企業やスモールビジネスを展開する起業などを指します。
ベンチャー企業は既存のビジネスモデルをベースに収益性を高めるのに対し、スタートアップ起業は新しいビジネスモデルを手探りで構築していくという点で異なります。
スタートアップ起業と同様に銀行からの融資が難しいため、日本政策金融公庫の融資やベンチャーキャピタルからの出資、エンジェル投資家からの出資が適しているでしょう。既存のビジネスモデルのため、クラウドファンディングは既存の起業と差別化を図らなくてはならずハードルが高くなる傾向にあります。

まとめ

ここまで起業時の資金調達方法を「出資」「融資」「借入」「助成金・補助金」に分けて解説しました。
自己資金や事業の将来性などを考慮して資金調達方法を決めることが大切です。返済が不要であっても自身の保有株率が減るなど、メリットだけでなくデメリットも把握しておく必要があります。
即決はせず、あらゆる資金調達方法を比較検討するようにしましょう。

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