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青色申告と白色申告って? 個人事業主の基礎知識

今回は、前回の開業届についてお話した際にも出てきた「青色申告」と似たような名前の「白色申告」についてまとめていきます。

事業を行う上で避けては通れない「確定申告」。「青色申告」と「白色申告」はこの確定申告の形式タイプです。
ちなみに「白色申告」という言葉は所得税法や法人税法の条文には存在しません。その理由も併せてご説明します。

青色申告とは

日々の取引を所定の帳簿に記載し、それに基づいて正しい申告を行うことで、税金の面で様々な特典を受けることができる制度です。
簡単に言うと、税金に関して様々な控除を受けられる確定申告のことです。
青色申告には事前申請が必要で、青色申告の対象としたい年の3月15日までに「青色申告承認申請書」と「開業届」を所轄の税務署に提出する必要があります。

主な特典
・所得金額から最高 65 万円を差し引くことができる
・配偶者等に支払う給与を必要経費として扱える
・赤字を前年や翌年の所得金額から差し引くことができる

白色申告とは

冒頭にも記載した通り、法律上、「白色申告」という言葉は存在しません。その理由は「青色申告以外の申告」のことを「青色」に対して無を表す「白色」で称しているだけだからです。
タックスアンサーなど国税庁のWebページでも便宜上「白色申告」という言葉は使われているため、知っておいて損はありません。

「青色申告」と「白色申告」の違い

上記の通り、簡単な違いは青色申告で確定申告をしているか否かです。

2つの申告で事業運営において重要となる内容の違いは「節税が可能か」というポイントです。

青色申告:節税可能
白色申告:節税なし

そんなの青色申告一択でしょう!と思いますよね。
しかし一概にどちらが良いとは言えず、状況によってどちらが最適かばらつきが出てきます。それぞれのメリット・デメリットを見て、事業状況としてどちらが必要か、向いているかを見ていきましょう。

青色申告の主なメリット・デメリット

メリット1 青色申告特別控除
青色申告の大きなメリットとして最大65万円の特別控除が挙げられます。特別控除とは、収入から65万円を引くことができ、最終的に所得税の減額ができる、といったものです。序盤に記載した「節税」がここに値します。
青色申告の控除制度には65万円の控除10万円の控除の2種類があり、控除額により提出書類、記帳方法などが異なります。
※e-Taxでの申請を行わない場合は最大55万円の控除となります。

メリット2 家族への給与が全額必要経費として扱える
生計が同一の家族への給与は専従者給与として規定がありますが、青色申告では妥当性のある金額であれば、上限設定は設けられていません。こちらも「節税」に繋がるメリットですね。なお、青色申告で専従者給与を控除する場合には、その年の3月15日までに、税務署へ「青色申告書」とは別で「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。

メリット3 赤字の場合でも繰り越しや黒字の繰り戻しが可能
青色申告では赤字を最大3年間繰り越すことが可能です。また、前年に黒字で青色申告を行っていれば、還付金をもらうことも可能です。
通常、1年ごとに税金を計算します。そうすると、赤字だった年の翌年に多額の利益が出た場合、実際は前年の赤字の埋め合わせで手元にはほとんど利益が残っていないのに、当年に出た利益分の税金を支払うこととなります。
<青色申告をしているとできること>
・赤字の場合 最大3年繰り越し可能
 翌年~3年後の申告時に利益が出た際に赤字分と相殺して課税対象額を算出できる
・黒字の翌年に赤字となった場合 還付金が受け取れる
 赤字を前年分の黒字と相殺して納付済みの税金が返ってくる

デメリット1 事前申請が必要
青色申告には事前申請が必要で、青色申告の対象としたい年の3月15日までに「青色申告承認申請書」と「開業届」を所轄の税務署に提出する必要があります。専従者給与を控除する場合には、上記2点に加え、「青色事業専従者給与に関する届出書」も提出が必要です。

デメリット2 複式簿記での記帳
青色申告で65万円の特別控除を受けるためには、単式簿記に比べてやや作成が複雑になる「複式簿記」で記帳する必要があります。 近年では会計ソフトがあるため、比較的簡単に記帳できるようになっています。なお、10万円の控除で問題なければ「単式簿記」で記帳することも可能です。

白色申告の主なメリット・デメリット

メリット1 手続きがシンプルで記帳も簡単
確定申告には変わりがないので、記帳や書類保管の義務はありますが、単式簿記で済ませられるため、青色申告に比べて簡単です。

メリット2 事前申請は不要
白色申告の説明時にも記載しましたが、青色申告以外の確定申告を白色申告と呼ぶ為、事前申請は不要となります。また、青色申告申請をしていても、白色申告として提出することも可能です。

デメリット1 特別控除を受けられない
白色申告は特別な申請はないため、65万円の控除や10万円の控除が受けられません。

デメリット2 家族への給与も規定通りの経費計算
生計を同一にする家族への給与は、専従者給与として規定があります。白色申告では、収入から専従者給与として差し引けるのは、配偶者86万円、その他の親族は50万円と定額です。

デメリット3 赤字へのフォローができない
白色申告では赤字の場合に繰越しや繰戻しができない為、赤字と黒字を繰り返したりしている場合は青色申告よりも税負担が大きくなります。

結局どれがいいの?

ここまでそれぞれの主なメリット・デメリットを見てきました。自分は結局どの申告をしたらいいの?という方には、著者の個人的な意見としては、なるべく青色申告申請は出しておいた方がいいと言えます。

青色申告は申請を出したからと言って必ずしも青色申告を行わなければいけないわけではありません。申請を出していても白色申告は可能です。
経理作業が苦手でまだ収入も少なく会計士や税理士に依頼もできない、といった場合には白色申告で簡単に済ませた方がいい場合もあります。
開業時に開業届と一緒に青色申告申請を出しておけば、青色にも白色にもできるので、出しておいて損はないかと思います。

白色申告でも帳簿付けは義務となるので、特別なことがない限りは、経理作業の負担は10万円控除の青色申告とさほど変わらないでしょう。個人事業向けにも会計ソフトは展開されているため、活用していくと苦手な経理作業も軽減できます。

事業が突然軌道に乗って「今年から青色申告にしておきたい!」といっても、期限までに事前申請をし、承認を得ていないと青色申告の恩恵は受けられません。

まとめ

ざっと説明してきましたが、実際に申告するとなると提出書類や保存帳簿などの細かい違いが他にもあります。
掲載日時点では2022年の申請期限は過ぎてしまっていますが、来年から起業する、副業が軌道に乗りそうといった方は青色申告を視野に入れていくと、スムーズに開業手続きや確定申告を行えるかと思います。

~補足~ なぜ青色?

もともと青色の申告用紙を使用して申告していたことに由来しています。2001年以降の所得税申告書は青色ではなくなりましたが、実務上でも青色申告と呼ばれ、正式に所得税法や法人税法にも起用されている単語のため、当時の名残で変わらず「青色申告」と呼ばれているようです。なお、法人税の青色申告用紙は今でも青色です。

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これから事業を始める方、事業を開始して間もない方の少しでもお役に立てますと幸いです。是非ご活用ください!

参考
国税庁『はじめてみませんか?青色申告
国税庁『純損失の繰り戻しによる所得税の還付請求手続き


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