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ドラマ『いちばんすきな花』のゆくえ&赤田と『カルテット』の別府&九條さんについて

※特に深い分析や考察はなくただ個人が思い巡らせたことを綴っただけの文章ですという前置き。

脚本が『silent』の生方美久、4人の俳優が主演を務める“クアトロ主演”でも話題のドラマ『いちばんすきな花』。

その第1話がこれ以上面白い回が以降出てくるだろうか逆に心配になるほど素晴らしく、主題歌の藤井風「花」も悶絶するほど出色の出来(ドラマ主題歌において「枯れていく」という歌詞で始まる曲がかつてあったであろうか)で、とりあえず今クールはこのドラマに付き合おうと思っている次第。

その第1話に出てくる人物の中で、とりわけ印象的なキャラクターといえば仲野大賀演じる赤田であろう。その赤田が友人である潮ゆくえ(多部未華子)に、今付き合っている恋人との結婚の報告をするくだりがあったのだが、観てすぐにこのドラマを連想した人も多いのではないか。
それは2017年のTBSドラマ『カルテット』。
今回はその第2話のエピソードにフォーカスする。

別府(松田龍平)が会社の同僚である九條(菊池亜希子)に、カラオケボックスで唐突に恋人との結婚を告げられるシーン。

この2組の共通点としては、異性の友達関係で、会う時は常に第三者はなく2人だけ、場所は決まってカラオケボックスで、頼むメニューは山盛りポテト。まるで『カルテット』の脚本・坂元裕二へのオマージュあるいはアンサーではと思うほどシチュエーションが酷似している。

しかしこの2組は以降、別の展開を見せる。
『いちばんすきな花』では赤田の報告を受けたゆくえは心底友人の幸せを喜び、それゆえにその後に続く赤田の「もうこうして2人で会うことはできない」という申し出を一時は受け入れられず、性別が違うだけでいとも容易く崩れてしまった友情というものについて思い悩む。

対照的に『カルテット』では九條の報告を受けた別府は同じように友人の幸せを喜びつつも突然のことに戸惑い、複雑な心情を隠さない。

つまり、前者は真の友情であるのに対して後者はそうではなく、お互い異性としての存在を実は意識しあいながら友人関係を続けてきた。
本人たちも真の友情を築けていると思っていたのだけれど、いざ片一方が結婚するという現実を目の当たりにしてその取り繕いが剥がれた、ということだとおもう。

そしてその後どうなるかというと別府と九條さんは結局酒の勢いに任せて身体の関係を持ってしまうのである。

翌日朝焼けをバックにベランダで1つのマフラーを巻いた2人がサッポロ一番を食べる。非常に美しいショットの名シーンではあるのだが、改めて思い返すと何を美談にまとめてくれちゃっているのか、とかも考えてしまう。

なんせ、2017年からもう6年だ。ジェンダーに対する世間の捉え方はこの6年で劇的に変わった。映画やドラマでの触れ方ひとつ取ってもものすごく意味を持つものになった。

脚本家の性別が異なることによる視点の違いみたいな話では特にないと思うが、結果的に
『いちばんすきな花』の赤田は婚約相手を傷つけたくない思いで友人関係を断った潔い男、
『カルテット』の別府は最後にワンチャンお願いみたいな下心丸出しの最低な男、
という見られ方になるだろう。そして九條さんも婚約者がいながら他の男と寝る最低な女ということになる。劇中の彼女もそれを分かっていて、こんな台詞を残している。
「君もズルいし私もズルい。」

なんだかとりとめがないが、生方による私ならこうする、2023年の今ならこういう男女の友情を描く、という回答なのは確か。

これをもって令和という時代を切り取っているとか、アップデート版だとか、ましてや女性作家ならではのフェミニズム的視点だみたいな間抜けたことを言うつもりは毛頭なく。

思えば4人主演という構成からして作り手側も意識してないわけないよな。まだ始まったばかり、たまに比較したりしなかったりしながら、勝手に楽しもうと思います。

ちなみにカラオケボックスで結婚を報告された直後に最初に選曲した歌は『いちばんすきな花』ではコブクロ「永遠にともに」、『カルテット』ではX JAPAN「紅」。いろいろ深読みも出来そうな気もするし、特に意味なさそうな気もするし。

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