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エッセイ 【聴く読書】

本が好きな人って必ずきっかけがあるというか、好きな本があったり、好きな作家ができたりするというけど、正直いうとほんとかなと思ってしまう。

というのは読書好きの友達を何人も知っているが、恐ろしくテレビを見ない人が多い。ゲームや映画を見たりはしているが、仕事が終わってすぐにテレビやYouTubeをつけてみる人がいない。

つまりは時間のつぶし方が根底から違う感じがする。

この頃、散歩をするルーティン化している。平日の通勤ラッシュの前の朝の時間を聴きながらAudibleを聞いていた。そこで『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を聴いていて、そうだな、これを読んでいたんだと実感する。高校の時に読んで「最高傑作だ」と思った。

僕が村上春樹を知ったのは、中学生の時に図書委員をやっていたからで、周りから「本好きでしょ?」と言われて、図書委員にさせられた。本が好きなのではなくお金がなくテレビはあったけど、いつもNHKだった。「テレビ代金払ってるから」という訳の分からないオヤジの主張もあった。なのでテレビを観ないことから本を読むようになった。

その頃は司書の人も通いで来ていて本の整理みたいなものを学生たちに任せていた。土曜日が半日の日があってその放課後に無理やり本の整理を指示されて何があるないなどを記録したり本を並び替えたりしていた。

その当時の普通の田舎の中学校に村上春樹の『風の歌を聴け』と『1973年のピンボール』があった。(羊をめぐる冒険はなかった)ただ、読まれた形跡はなかった。図書委員の先輩が義理で借りていたのが図書カードに記されていた。

村上春樹って正直有名ではなかったけど、アイドルであったときの島崎和歌子が好きな作家として名前をあげていたことがあったので、コアなファンはいたんだと思う。『ノルウェイの森』が出版されて有名になるのはもう少しあとの話でもある。

村上龍さんはテレビに出演されていて、作者として有名だった。村上バーとか言って糸井重里さんと時代の寵児として出ていた。芥川賞作家というのも全面にでていた。同じ村上を名乗っていて、尚且つ、同時期に同じ文学賞(群像新人文学賞)を受賞していた。そういう関係で図書館司書の方が置いてくれたんだと思う。

ハードカバーの本を手に取って借り、家に帰って読んだ後には村上春樹のファンになっていた。衝撃だった。ポストモダンの世界観がわからない中学生がラジオのDJのが語る言葉ON・OFFで表す表現の自由さをビックリしながら夢中になっていた。


ラーメン屋でバイトをしている時に『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』を大学生のバイトの先輩がくれた。「貸してやるよ」と渡されると僕が相当喜ぶのでよく本をくれた。「漫画を読まないなんて珍しいな」といわれたけど、気にられたのかよく貸すと言ってはくれた。『深夜特急』なんかもくれた。ハードカバーで重いのにバイトのお兄さんは「持って帰れるか?」と心配してくれていた。

ここら辺の文学は本当に自由というか売り手市場というのもあってかくだらないものもあった。ただ、後世に残っているものはやはりあってそこらへんを読めたのは本当に良かったと思う。


 

 

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