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本日、和歌山日和

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和歌山ならではの神社仏閣、イベントなどをまとめています。神話や歴史背景など、豆知識を書き添えていることも…。地元目線を楽しんでいただければ嬉しいです。
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記事一覧

世界遺産「高野参詣道 三谷坂」を歩いて③【和歌山】

三谷坂を登り切り、無事、天野の里に到着。花盛祭の渡御行列を見るために、私たちは世界遺産・丹生都比売(にうつひめ)神社まで歩きました。 丹生都比売神社 花盛祭 丹生都比売神社の鳥居をくぐると、境内には参道の両側に色とりどりの花が飾られており、とても華やかな雰囲気でした。 ほどなく始まった渡御行列は、天狗の姿をした道開きの神・猿田彦さまが先頭です。 猿田彦さまに続いて、笛を吹く人、弓や刀を携える人、獅子頭を持つ人、お神輿を引く子どもたち……時代衣装をまとった行列が粛々と進ん

世界遺産「高野参詣道 三谷坂」を歩いて①【和歌山】

世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」のひとつとして登録されている、高野参詣道 三谷坂。かつらぎ町三谷の丹生酒殿(にうさかどの)神社と、高野山の守護神・天野の丹生都比売(にうつひめ)神社を結ぶ、約5.5㎞の急登です。 古い時代、丹生都比売神社の鎮座する天野は聖地とされ、人の住むことが許されない地でした。神職はふもとの三谷に家を構え、そこから毎日、天野まで山の中を歩いて通っていたとのこと。その道筋が三谷坂なのだと伝えられています。 そんな歴史ある三谷坂を2024年4月半ば、紀州

厄除け祈祷 ~丹生都比売神社へ~【和歌山】

今年は前厄なので、年が明けてから早いうちに厄除けのご祈祷をお願いしたいと思っていました。 地元の氏神様や、毎月一日にお参りしている和歌浦の玉津島神社さんなど、信用してお任せしたいところはいくつかあるのですが、なぜか、 「厄除けは丹生都比売(にうつひめ)神社でご祈祷を受けたい」 しっかりとそんな気持ちになったのです。 丹生都比売神社はかつらぎ町天野に鎮座する、高野山の守護神。弘法大師空海が密教を開く場を探していた際、高野山へ導く助けをしたとされる女神・丹生都比売さまがおまつり

南紀熊野 奇岩巡り⑥ 「神倉神社」

「那智駅」の次に向かったのは、新宮市の「神倉神社」。 「熊野速玉大社」の境外社で、源頼朝が寄進したと伝わる、500段を越える石段を上った先にある巨石「ゴトビキ岩」がご神体です。 ここからは縄文時代の祭祀跡が見つかっており、パワースポットとしても知られています。 私は三度目の参拝になるのですが、やはり石段はかなり手ごわく、ことに上り始めの傾斜の厳しさと、踏み石のばらばらな角度には難儀しました。 ひどい巻き爪に悩まされている次男は途中で断念し、一人で「熊野速玉大社」の方へ。何事

南紀熊野 奇岩巡り⑤ 「那智駅」

少し間が空いてしまいましたが……南紀熊野への旅の続きに戻りますね。 しばし時間を戻して、晩秋の陽光を楽しんでいただけると幸いです。 「那智大社」と「青岸渡寺」へ参拝した後は、那智勝浦町にある「湯快リゾートプレミアム越之湯」に宿泊。 昭和を感じさせる少し古いお宿でしたが、ベランダの下はすぐ海となっており、魚が泳いでいるのが見えました。遠くの島を望んでの眺めも良く、開放感を満喫できる部屋でした。 そして翌日、私たちが朝一番に向かったのはJR「那智駅」です。 3年前の冬至の日

南紀熊野 奇岩巡り④「熊野那智大社」・「青岸渡寺」

「那智の滝」を堪能した後、私たちは徒歩で「熊野那智大社」と「青岸渡寺」へ向かいました。 どちらも地図上では「那智の滝」のすぐ近くなのですが……長い階段が折れ曲がりつつずっと続き、上っても上ってもたどり着かない……。 果てがないのかと思うほど上った先に、やっと「熊野那智大社」の鳥居が見えてきました。 「熊野那智大社」 鳥居の上には小さな馬の雲が。「お疲れさま」と言ってくれているようで嬉しかったです。 「熊野那智大社」の主祭神は熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)。「ふ

南紀熊野 奇岩巡り① 「一枚岩」

10月下旬、家族で南紀熊野の奇岩を巡る旅をしました。 「南紀ジオパーク」としてユネスコにも認定されている一帯です。 最初に訪れたのは古座川町の「一枚岩」。 文字通り、板のような大岩が空に向かってそびえています。 高さは100m、幅はなんと500mもあり、日本の地質百選に選ばれた「古座川弧状岩脈」の一部だそうです。 体をそらすようにして見上げていると、なぜか大気が小刻みに震えているような感じ……。 2022年にはこの岩をスクリーンにして「大地を見上げる映画祭」がおこなわれたそ

1年ぶりの更新

ほぼ1年ぶりの更新となりました。みなさま、お変わりございませんか。 前記事からの続きとなるのですが、昨年5月28日、母は静かに他界しました。 今は弟が暮らす宝塚市の見晴らしの良い墓地で眠っています。 いろいろとこだわりの多いひとだったので、生きている時よりも幸せなのではないかな、と、これは私の勝手な思い込みなのかもしれませんが……。 先に天で待っていたはずの父や祖母と再会して、穏やかな魂となっていることを願っています。 私自身の状況も少しだけ変化があって、昨年秋に開校した

レンゲ畑

いつものウォーキングの途中、日当たりの良い田の脇の道で、ほんの一群れのレンゲの花を見つけた。春のゆるやかな風を受け、そこだけ明るい赤紫色に揺れている。 私が子供の頃は春になると、家の近くにも小学校のまわりにも一面のレンゲ畑が広がり、友達と一緒に夢中で花をつんだものだった。たくさんの花の中から、まだ色の浅いものや、盛りをすぎて濃い紫になったものを避けて、ぱっちりと瞳を見開いたような瑞々しい花を選んでつんでゆく。 広いレンゲ畑ではいつも、私たち子どもと無数の蜜蜂とが共存してい

白梅

里山へと登ってゆく山道の脇に、年を経た白梅の木が一本だけ立っている。誰かが世話をしているふうでもなく、後ろの藪が枝の間に倒れ込んでいたり、蔓が幹に絡まっていたりするのだが、毎年きまって三月になると、満身真っ白な花をつけてくれる。 山道の手前には細い道が一本あるだけなので通る人も少なく、だから花が咲くといつも、メジロやヒヨドリなどの野鳥で白梅はにぎわっている。 今日もウォーキングの途中に前を通ると、羽ばたきの音と共に、鳥たちの影が一斉に空へと消えていった。 公園や神社にある梅

二月尽

2月下旬の、とても冷え込んだ朝。手早くマフラーを巻いて手袋をして、霜の撮り納めにゆく。 立春を過ぎてから夜が明けるのがずいぶん早くなり、気温もすぐに上がるので、おそらく今年の霜はこれで最後。 義母をデイサービスに送り出すため、この日は早い時間に家を出なければならず、「5分だけ」と決めていつもの空地へと向かう。 タネツケバナはゴマ粒ほどの、小さな小さな白い花。冬の半ばからずっと、枯色の風景の中、群れて咲き続ける芯の強さを持っている。 ホトケノザの花色は、すでにくっきりと濃い

春の雪

立春も過ぎた2月半ばのこと。朝、ベランダの雨戸を開けると、一面の雪景色が広がっていた。お向かいの屋根も、その向こうの里山も、いつも霜を撮りに行くお隣の空き地も、真っ白な雪に覆われている。 和歌山は温暖な気候なので雪が積もることはめずらしく、しばらくは窓を開けたまま、ほうっ、と風景に見入ってしまった。 「一晩でこんなふうになるなんて。何の音もしないままで」 雨が激しい夜は雨戸を閉めていても音でわかる。でも、雪はまったくの無音。不意打ちのように風景が美しく変わってしまったことに、

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一陽来復

記憶装置

実家の納戸で見つけた段ボール箱には、モノクロ写真がみっしりと詰まっていた。 詰襟の学生服を着て、ちょっと斜に構えたポーズをきめている若き日の父。 逆毛を立てた髪をアップにし、ミニスカートで足を交差させている若き日の母。亡き祖父の精悍な登山スタイルや、祖母の小粋な和装姿にも惹かれてしまう。 モノクロの世界からの過ぎた日のまなざしは、やけにくっきりとこちらを見つめてくる。 今はもう、無いもの。いつの間にか変化してしまったもの。 それは確かにここにあったのだと、写真は教えてくれる