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強きものに守られて


朝から雨が降っていた
あと少しで玉原高原へ出発するのだけれど
その前になおちゃんと近くへ
フキを採りにきたのだ

雨が心配な私はなおちゃんに
「今日は雨が結構降るかな」と聞いてみた
「降ってても森が守ってくれるよ」

森が守ってくれる

その一言に安心すると同時に
そんなことをさらりと言う
なおちゃんにシビれた

カッコいいーっ

ワクワクしてきた
ううん
朝からワクワクしていたのだから
ワクワクのワクワクだ

なにかが始まっている気がした

ガイドの二(ふた)さんは
穏和で優しくてひとつひとつ丁寧に
説明してくれた

誰かがなにかを見つける度に
一緒に驚いたり楽しんでくれていた
というよりむしろ一番眼を輝かせ
生き生きしていた気がする

子どもたちが鳥を見たと言えば
「ええっ?ふたさんも見たい」と
双眼鏡を片手に駆けつけたり
何分でもその場にとどまってくれていた

そんな姿になんだか時間内にまわるとか
前へ進むことよりも
今を楽しむ方が何倍も大切で
より濃い時間を過ごせる気がした

私はというと鳥を探すのに飽きると
周りを見渡したり
ミクロの世界を愛おしく感じたり
鳥を探すのに夢中になっている
皆を見ているのも楽しかった

ブナの幹は迷彩色をしているので
すぐに覚えることができ
葉は黄緑でとても森が明るく感じられた

一番大きなブナの木が
どのくらい太いのかと
皆で手を繋いで調べたのも楽しかった

お昼は小学生に混ざり木登りもした
靴なんて履いてられないので裸足になった
うん、やっぱりこれが好き

初めて見た水芭蕉は
小さくて可愛かった
去年、尾瀬で見た水芭蕉は
すでに時期を過ぎていて
いつか見てみたいと思っていたので
なおのこと嬉しかった

サンショウウオの卵を見た時は
小学生の頃、北海道で帽子を片手に
サンショウウオを捕まえようと
追いかけ回した小さな頃を思い出し
山の家に戻ってからは
羊や鴨にエサをあげたり追いかけたり
夜は子どもたちとかくれんぼしたり
色おにをして遊んだ

そうそう
かねてから密かな願いだった
薪割りができたことも
嬉しかったことのひとつ

ようちゃんに
「こうやったら割れるかな」と聞くと
Don’t think. feel!何も考えるな!心で感じろ!と答えが返ってきたりして(笑

「斤が足に当たったらどうしよう」とか
雑念がよぎるたびなにげにその言葉を
心で繰り返していて
何も考えないことも大事と思ったり

2日目はそんな風にみんな
各々好きなことをしていたのだけれど
薪割りから戻るときに
外で絵を描いていたふたりがいて
見せてもらった

この2日間おおらかに皆を受け入れてくれた
山の家を描いたまりっぺの絵と
ブナの木を中心に手を繋いでいる皆を
描いたゆうなちゃんの絵から
ここで過ごした楽しい時間や
温もりのようなものを感じたし
何より愛がこもっていてとても感動した

一番大きなブナの木の前で
二さんが「ブナの木にパワーを貰いましょう」と言ってくれみんなで幹に触れたり
水の音が聴こえるかもと耳をあてた
それからみんなで手をつないだのだけれど

そのひとつひとつが宝となり
私のなかを流れている気がする

小さな頃はできたけれど
恥ずかしくてもう出来ないよなんて
心を誤魔化したり諦めなくてもいいことや
好きなことは眼を輝かせて
好きと言っていいこと

そして楽しかったあの頃を
忘れたくないと思っても
忘れてしまっても大丈夫なこと

何故なら大切なことや
好きだったものは
心の奥にずっとあり
思い出すことのできる
山の家があるのだから

強きものに守られて
私たちは生きている

生かされて生きている


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