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買ってきたごはんは、床の上でピクニック! #今日は料理しない日

「料理する日もしない日も、いい日にする。」をテーマに、料理研究家のリュウジさんとスープ作家の有賀薫さんにお話を伺いました。

今回は、普段料理している人に向けて、「料理って大変じゃない?」「料理しない日ってある?」という質問から、料理の大変さを周りに知ってもらうこと、料理をしない日をつくることの大切さなど、「料理しない日」を少しでもいい日にする秘訣を伺いました!

料理に疲れたら、買ってきたっていいよね。

有賀:実は昨日の晩ごはんは、宅配のピザでした。このところ仕事もちょっと忙しくて、毎日、朝、昼、晩とご飯をつくるのに疲れてしまって。「もう今日は無理!」ってピザをとりました。

リュウジ:あ、有賀さんもそんな瞬間あるんですね。

有賀:ええ。結構あります。でもそういうときはもう無理しないと決めているので、なんかとったり、買ってきたりっていう感じでやっています。今は残念ながら外には行きづらいですけど。

リュウジ:今回のテーマを崩してしまうような発言ですが、実は僕は外食やお惣菜を買うことってほとんどないんです(笑)。

有賀:そうなんですか!(笑)リュウジさんはごはんはいつもだいたい一人で?

リュウジ:全部1人です。ああ、1人だからかもな。僕も家族のためにつくるんだったら、そういう気持ちになることもあるかもな。

有賀:そうね、前編のお話にもあったけど、家の料理って意外と制約が多い。自分のためにつくるのは、わたしも大好きで。それこそ、自分が好きなようにつくっていい料理としてスープをつくりはじめました。

リュウジ:僕は自分のために料理をつくる感覚が染み付いているから、つくった相手が食べたくないって言ったら、じゃあ買ってきてって言っちゃうかもしれない(笑)。

有賀:なかなかその一言が言えない人が多いんだよね。家族のためにおいしいごはんをつくってあげたい、その気持ちに全然うそはないんだけど、時々、もうつらいと思うのはすごくよく分かるんです。やっぱり家族の食事って、好き嫌いやアレルギーを気にしたり、経済的なことも考えなくちゃいけない。いろんな縛りの中で毎日途切れずつくり続けるのってかなりすごいことだから。

リュウジ:僕は有賀さんと違って独り身なので、自分でつくって自分で食べるので、別に何つくってもいいわけですよ。今日はだるいと思ったら、卵かけご飯で済ませても別にいいわけですよ。誰も文句言わないし。でも家族と住んでたら、「え-、卵かけご飯じゃなくて、もっとちゃんとしたの出してよ」となる。

有賀:唐揚げつくってよとかね(笑)。

リュウジ:それ言われたら、嫌になる気持ちは分かりますね。

有賀:それを言う相手がパートナーだったら、じゃあ自分でやってよと言えるかもしれないけど、子どもたちに言われると、つくらなくちゃ! となりますね……

料理は答えのない、答え探し。

有賀:女性の場合、特に旦那さんにあまり強く言えない方ってすごく多いんですよね。そうした相談をされるときに、わたしはよく「逃げ道をいっぱいつくっておこう」という話をするんです。ひと手間加えるだけで、ちょっと立派そうに見えるようなレシピを持っておいたり、冷凍しておいたり、本当にちょっとしたことでもいいから逃げ道を、って。

お惣菜を買うのも、わたしは全然ありだと思っています。少し前にポテサラ論争がありましたけど。スーパーで惣菜のポテサラを買ったお母さんに、ポテサラぐらいつくれよと言ってきた人がいたという。自炊は基本的には経済的だけど、つくるのにかかる時間や量によっては、買った方が合理的なときもある。何より自分の心がつらくなっているときに買うことでそれが少しでも解消されるのだとしたら、とても価値のあるお金の使い方です。

リュウジ:僕はこの話になると、過激派なんですけど(笑)。

有賀:どうぞどうぞ(笑)。

リュウジ:さっきも少しお話ししましたが、いやいや、文句があるんだったらもう買ってくればいいじゃんって。だってそもそも家事において、料理は答えがないんですよ。掃除や洗濯はそれに比べてわかりやすい。きれいになることがゴールだから。でも料理は違う。なぜかというと、食べたいものがみんなバラバラだから。

それは料理する人に合わせないとダメなんですよ。料理する人に合わせられないのであれば自分でやらないと。家族のために、誰かのために日常的に料理をつくってる人は、答えのない答えをいつもいつも探している。

有賀:家族に対して「何食べたい?」って聞くの、シュフはよくやると思うんですけど、わたしも、もうひとりでは献立が決められない……という日には、何食べたい? って夫に聞くんです。でも絶対に自分の望んだ答えは返ってこない。

「コロッケが食べたい」とか言われて、いや、もう料理するのがちょっと億劫になっているから聞いてるのに……とか思うわけですよ。かといって、「じゃあ買ってくればいいじゃん」って言われても、ちょっとかちんときたりして。

「今日はもう手を掛けないから」って自分から言い出せれば、一発で解決する話なんだけど、なかなか言えないんです、って人が多いの。言っていいんだよ!

リュウジ:つくってくれた人にはもう逆らわない。「忙しい中つくってくれてありがとう!」と称えるような世の中にしたい。

有賀:本当だね、料理だけでなく家のこと全般において、もっと肝っ玉母さんみたいな、もちろんお父さんでもいいんだけど「今日のご飯はこれだよ、もう文句は言わせない!」そんな気持ちでやっていける人が増えるといいよね。

共有スペースとしてのキッチンに、必要なルールとは?

リュウジ:キッチンに立つ話をしたけれど、僕の動画を見て料理をはじめたというコメントをもらうことも増えてきて、社会の流れとしてもだんだんと家庭の中でキッチンに立つ人がひとりではなくなってきていますよね。共有スペースとしてのキッチンでは、使った人がきちんと片付けるのってとても大事。

有賀:それはごもっとも。

リュウジ:僕、料理動画で片付けまでは見せてないんです。たいてい酔っぱらっちゃってるから。なので片付けは翌日にやります。僕はひとり暮らしだからそれが許されるけど、翌朝に別の人が使う可能性があるならば、自分がつくったものの後始末はその日のうちにやらないといけない。だから使った人が片付けましょうと。

片付け動画もつくって欲しい、とよく視聴者さんに言われます(笑)。僕の料理って、手軽さと面白さを重視しているので、男性が最初につくる料理として重宝してもらっています。だからか「旦那が料理をするようになりました」「彼氏がごはんをつくってくれました」とコメントをいただくのですが、お酒飲みながらつくるから、寝てしまって片付けまではしてくれないんです……とも。

有賀:片付けまで流す料理動画は見たことがないです。あったら新鮮かもしれない。

リュウジ:自分が責任を持って片付けないとダメですよね。もうコミュニケーションの話だけど、例えばお酒を飲みながらつくって酔っぱらっているから、片付けは明日にしたい。でもパートナーが明日朝からキッチンを使いたい。その場合は話し合えと。でもそれを話し合わないで放置してしまうと翌日揉める。「今日朝やろうと思ってたんだよ」「いや、わたしは、いますぐ使いたいんだけど」っていう具合に。コミュニケーションをとることで解決するのに。

有賀:キッチンに立つのがひとりなら、別にキッチンの使い方を話す必要はないし、自分のペースでいいけど、キッチンに2人以上入るようなら、ルールや話し合いが大切になってくるんですよね。

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有賀:最初の話に戻るけど、話し合いができるようになると、料理がつらいときには話し合って、「じゃあ今日は食べに行こうか」とか「簡単なものをつくってみよう」って一緒に判断できる。家庭で料理をする人のつらさって、ひとりで抱え込んでることも多い気がするので、共有できる人がいるのは心強い。

リュウジ:そうですね。キッチンに立つのがふたりなら平等なわけですよ。それは別に男性でも女性でも関係なく。

有賀:子どもでもいいですよね。

リュウジ:そうそう、子どもがやってもいい。
有賀:わたしはミングルっていう、ミニキッチンみたいなものを家のリビングの中にどーんって置いたんです。それまで要するに、密室は言い過ぎですが、割と閉じられたキッチンの中で料理をしていて、完成したものをリビングに運んでいました。

リュウジ:キッチンが奥まっている間取りの家って普通に多いから、何をしているか見えないんですよね。

有賀:そう。だけど、新しいミングルで作業を始めたら、家族の料理への関心度がものすごく変化したんです。昔ってお母さんが子どもに、「ちょっとこれやりなさい」って、絹さやの筋むかせたりこんにゃくをくるってひっくり返したりちょっとした料理参加を促してきましたよね。いまはあまり子どもをキッチンに入れない、お手伝いをさせない人もいると聞きますが、ちょっとしたお手伝いが、料理の裏側や手間の多さを知ってもらうことにつながるので、回り回って精神的に楽になるんじゃないかなとは思います。

リュウジ:だから野菜の皮むくときも、もう食べる人の目の前でむいたほうがいいんじゃないかな。有賀さんも、たまにライブ動画で、ずっとモヤシのひげ根をとる、みたいなことをやるじゃないですか。

有賀:そうそう、延々やるとかね(笑)。

リュウジ:あれ見たら、もうつくってくれる人に足向けて寝れないですよ、本当に。

買ってきたごはんを楽しむためのライフハック。

有賀:わたしは、買ってきたり出前をしたりするときは、食べる場所を変えるんです。いつもはダイニングで食べているけど、ちゃぶ台や場合によっては床で食べることも。ピザだったら箱を床にぼんって置いて。

リュウジ:ピクニック感覚みたいな感じですか?

有賀:そうそう。ほとんど毎日家だから、最近だとベランダでごはんを食べている人もいますよね。庭がある人なら庭でもいいと思う。そういうふうに場所を変えることで、面倒くさかったから出前にしたんじゃなくて、「ちょっと今日は特別なごはんなのよ」って切り替えをする。いつもの食卓で買ってきたお弁当を食べていると、なんとなくわびしいと感じることもあるんだけど、なぜか床の上で食べると楽しいんですよ、これが。

リュウジ:それはもうライフハックですね!

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有賀:例えばクロスを1枚用意しておいて、ごはんを買ってきた日はテーブルにクロスを掛ける。そういうのでもいいと思うんですよね。

リュウジ:僕からは絶対出てこないアイデアでした……。でも欧米のレストランだと、デザートは特別だからと別の部屋で食べることもあるので、そういう文化としては相性が良いのかもしれませんね。

有賀:そうですね。「今日はもう手を抜くぞ」ってはっきり決めているときは、ある程度きっぱり割り切った方がリフレッシュできる。そのほうがかえって食卓も新鮮になる、そんなふうに感じています。


#今日は料理する日 のnoteはこちら。