客観的証明1 アイデアを形にする 9

こんにちは。 一連の動画の中で、研究の過程について述べてきました。 課題の発見、方法の開発、については今までの会で話しました。 今回は1番最後の客観的証明について述べたいと思います。

科学研究の分野における客観的証明とは学術論文雑誌に自分の論文を投稿し掲載することをいいます。

研究の過程では、自分の興味がある領域について、本で勉強して知識を高め、発想力を磨く努力もしますが、こうした活動は研究の本質ではありません。

論文を作成すると言う創造的な創作活動を行うことが研究の成果となります。

前にも述べた通り大学院で、あるいは実際に研究者として研究している人の仕事は勉強ではなく、論文を書くという創造活動なのです。

論文には自分が実験的な検証などによって得た新たな事実に関する報告を行います。

事実と言いましたが、これはこの論文の中で明示された方法によって、その実験状況下で導き出された1つの可能性すぎません。そういう意味で論文は新たな仮説を世の中に示す過程だという言葉が最もしっくりきます。

論文の中には検証に用いた実験方法に関する詳細な記述をつけます。この記載の通りに同じことをすれば他者も同じ結果が確認できるはずで、このことをして客観的証明と言う言葉に当てはまります。

以上概略を述べたところでこれからこの論文の作成の過程のうち、そもそも論文という形にすることの困難と、客観的証明を行うことに関する困難について述べたいと思います。

研究を行うときには様々なアイディアが浮かんできます。そしてそのアイデアを検証するような実験を日々行うことができます。


しかしそうした思いつきをひとつのまとまりを持ったストーリーとしてまとめあげる事はとても難しいことです。

皆さんも普段ふとしたきっかけで、これはいいなと思えるアイディアに出会う事は割にあるかと思います。

例えばノリの良いラップのフレーズが頭に浮かんだとします。例えばうまくいきそうなビジネスアイディアが浮かんだとします。こうして浮かぶだけならとてもたやすいことです。

けれどそうやって浮かんだアイデアから実際にラップの楽曲を作詞作曲する人は果たしてどれだけいるでしょうか。ビジネスアイデアもそれを実際に実践する人はどれだけいるでしょうか。

強調しますが、思いつきを形にすることは非常にエネルギーがいります。

そして仮にそれができあがっても本当に人を感動させられるような作品、儲かるビジネスになる可能性はそれほど高くないのが普通です。

論文を書くという事は実はこうしたことと何も変わらない難しさを含んでいます

自分自身のアイディアでこれまで人に知られていなかった新たな仮説を世界中の人に向けて発信をするのです。

そして投稿雑誌は週刊誌にしろ月刊誌にしろ、掲載する紙面に限りがあります。その限られたページに自分の作品を潜り込ませる必要があるのです。これは非常な競争です。

そうできる位自分の思いついたアイデアを洗練していく必要があるのです。

自分の研究経験と照らし合わせて、こうしたアイデアの検証に関して起こりがちな失敗についても話したいと思います。

自分のアイデアを検証する実験のうち1番筋が悪いのは、出てきたデーターから自分の仮説に対してイエスともノートとも取れないような結果になる時です。

自分の仮説と合致する結果が出た場合はこれはある意味ベストです。しかし逆に自分の仮説とは反対の結果が出た場合もしかしこれも実はそれはそれでいいのです。

自分が考えていた前提が間違っていたのなら、この新たな事実を踏まえたより違う仮説を立ててそのことを次に検証すれば良いからです。

しかし結果が曖昧な実験では研究上の進展はゼロになります。

こう言うとそもそもなぜそんな無駄な実験をするのかと思うかもしれませんが、しかし現場に立つとどっちの結果も持てないような実験をしてしまうことが多々あることに気づきます。

これはデータに関して楽観的なラッキーが積み重なることを「前提」にアイデアを検証するときに起こりがちです。

これはさながら豪華な食事を計画して、そのための資金をギャンブルが当たることをあてにするような状況です。笑い話のように聞こえますが、人間の本質的な楽観と無計画はこうしたことに時間を浪費しがちだということが研究からも見えるのです。そしてこれは本当によく起こることです。

これは何も研究だけの話ではありません 自分は行う何か創造的な検証を行うときに yesノーが出ないような検証をしていないかと立ち止まって考える事はとても有用です。

そしてこうした研鑽を行う研究という営みが研究の中の世界だけではなく、広く世の中に通用する力を育てることができる、ということが一連の動画のメッセージでもあります。この点伝わっていればいいのですが。

どんとこいサイエンスアンドテクノロジー 。具体的な成果のためには 大きなエネルギーと妥協のない検証が不可欠だ。今回はそういうお話でした

たどたどしい演技をぜひご確認ください。


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