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魂のふるえる場所 Ⅸ Ψ ♾ 時空創造エネルギーの突破口 No.46

「あっ、あそこ、何だろう。」  急にマデが田んぼの下の崖を駆け下りて川の中にザブザブ入って行きました。

どうやら足の痛いことなど、もうすっかり忘れきっているようです。

「わっ、水が湧いてるよ! 川の底から、ほら、砂がこんなに舞い上がってる。
やぁ、面白い、キャハハ・・・」

なにっ? 川の底から水、ですって?!

大急ぎで腰布 カインをたくし上げ、はやる気持ちで足場の悪い崖を構わず飛んで跳ねるように下りて行きました。

川岸近くの浅い砂地にのように石を円く積んで囲った中に、渾々と澄んだ湧き水が砂粒を噴き上げて溢れています。

「ひやぁー、気持ちイイ〜〜〜❣️」

二人して思わず何度も冷たい水をすくっては顔やら首やら腕やら、服が濡れるのも構わず水をかぶりました。

沐浴 マンディーしたいんなら、ここでしていけば?」

「うん、でも、もうちょっと上流まで行ってみてからにする。」

岸に上り、また奥へ向かって歩き出します。

いつの間にか私たちはズンズンと速足になっていました。

やがて田んぼが少しずつ荒れた感じになり、草ぼうぼうの灌木の間を抜けると、目の前に岩壁の崖が立ち塞がりました。

ガーーン、

「ここで行き止まりかぁ、・・・」

マデが腰に手を当てて向き直りました。

「どうする? 引き返す?」

「そうね、仕方ないね。」

そう言いながら川の方に目をやると、だいぶ川幅の狭くなった流れの中に大きな岩がゴロゴロして、その向こう岸は何とか辛うじて歩けそうな様子に見えます。

「そっか、渡ればいいんだ。」  そう言って、マデが岩から岩へと軽々と渡って行きました。

渡れば良い、・・・それは分かった。

「そのデッカい岩からこっちの岩に跳び移りゃいいの、
そこ、苔があって滑るよ。深いから落ちないように気をつけて。」

ん、それも分かった。
でも、踊りで鍛えまくっているマデのようなわけにゃいかないのだ〜〜😂😂💦

仕方ないので遠回りでも少し引き返し、流れの緩やかな浅い所を探して、やっとこすっとこ渡って何とかマデに追い付きました。

岩壁の崖の向こうで大きく蛇行した川の流れに囲まれた円い広場のような場所に出ました。

「何か、不思議な景色・・・」
マデがキョロキョロ見回しながら、地面に落ちていた細長い白い布を拾い上げました。

「へぇ、こんな所まで人が入って来てるんだね。真新しい帯? 誰かの忘れ物かな?」
近くの木の枝にヒラリと布を引っ掛けて、また歩き出します。

「来て! 何かあるよ!」
マデが小走りに土手を駆け上がって行きました。

プラだ。」

プラと言うにはあまりに小さな ほこらのようなものが祀ってありました。
ほんの5坪ほどの枯葉一つ落ちていない四角い庭の正面に、こじんまりした石の塔が3つ立っています。
実に簡素だけれど、庭を囲むように植えられた草花や小さな植木、
こんな奥まった所なのに、誰かがついさっき掃き清めたばかりかのような風情です。

二人で入り口の前に立ち、黙ったまましばらく庭を見つめていました。

上手く言葉にならないけど、何かに思わず感謝したくなるような気持ちが込み上げてきました。

「お参りしていこう。」

「でも、ぼく帯が無いから入れない・・・あっ、そうだ!」 
マデは一目散に土手を駆け下り、さっきの広場の方へと走って行きました。

私は庭の中へとお邪魔させて頂き、心を込めてご挨拶のお祈りスンバヤン をしました。

私と入れ違いに、さっきの白い布をしっかり腰に巻いてマデが戻って来ました。

「エヘ、借りちゃった。ぼくのために用意してくれてたみたいだよね。」

マデは土の上に胡座 あぐらをかいて座り、静かに目を閉じて祈り始めました。

私は ほこらから一段下がった同じぐらいの広さの場所の真ん中に据えられた石組みのような物が妙に気になり、下りて行きました。

胸の高さほどの四角い井戸のような石組みの四隅に載せられた4つの苔むした石、
石組みの真ん中に空いた穴は、周りの古びた石とは異質な赤煉瓦のような石と土で後から埋められたように見えます。

その周りをぐるりと回り、上から横からとしげしげと眺めていると、マデも下りて来ました。

「何なの、それ?」

「分からない・・・」

マデが塞がれた穴を覗き込みました。

「なんだか封印されてるって感じだね。」


えっ・・・   ドキーーッ‼️   何にも知らないハズのマデが、な、なんでそんな際どい発言を?!


ふと後ろを振り返ると、一段上のさっきの ほこらとの段差の土手に、短い大砲台のような形をした石が3つ、川の方に向かって半分土に埋もれるようにして突き出していることに気づきました。

それは四角い石組みのものより随分と風化が烈しく、形もかなり崩れかけています。

いったい何なのでしょう?

「あぁ、これ、泉の水の出口だ!」

マデに言われて、やっと気づきました。

グヌン・カウィ遺跡のように壁から筒が飛び出しているタイプの形ではなく、大砲台のように両側から支えて固定するための石の台座に納まっていたので、分からなかったのです。

「じゃ、ここに昔、泉があった、・・・ってこと?」

「・・・ってことだよね。」

そして今、自分が当時書き記した『ナムの日記帳』のページを捲り、思い出しながらこれを書いている真っ最中に、私はゾクゾクと鳥肌が立ち、茫然としています!!

何故なら、ナムの物語の中に出てくる山の寺院の聖なる誕生の泉と、緑の断崖に囲まれた滝壺が、ここにあったということを、たった今、ナムがあらためてはっきりと示してくれたからです。

それだけではありません。
私はこの数十年の間、この時に経験したことの、残りのもう半分の意味にまったく気づいていませんでした。

知るべきタイミングを待って知らされること、こうして時が経って初めて理解出来ることがまだあったなんて!

それは、今ここにいる自分と、 ほこらの前に立っている自分がまるで織り重なったかのように、
──いやいや、実際、私たちはいつどこの時空間にいる自分自身とも繋がっていないわけがないのですが、──
そうやって時と処を超えてじかに伝わってくるものへの驚きに、今、心底圧倒されています。

この ほこら自体は、さほど古いものではありません。

けれど、ここに無垢でダイレクトなエネルギーが滔々と流れているのが手に取るように感じられます。

この場所は永いあいだ殆ど忘れ去られていました。が、この地面の下に埋もれている古代遺跡のただならぬ気配に気づいた村の誰かが、今も密かに大切にお祀りしてくださっています。

同時に、この古代遺跡の建てられるさらにずっと以前、川床の岩を揺るがして轟々と水の柱が立ち上ったまさにその瞬間、滝壺の縁に立ち尽くしてそれを驚きに満ちた眼差しで見守っている自分がいます。

そしてこれらは決して過ぎ去った遠い昔の話ではないのです。

すべては同時に今ここにあり、一つの万華鏡を幾つもの窓から同時に見て、感じている、その全体がわたしなのです

チョルーラの巨大なピラミッドの地下に、まるでマトリョーシカのごとく時代を遡るようにして幾重にも古いピラミッドが隠されていたように、古代からその土地や空間に刻まれてきた様々な情報や記憶の痕跡は、相応しい時が来て再び発見され、新しい次元へ読み解かれるのを待っています。

私たちの意識はここから先、時空の重なりや繋がりへと一気に広がるワンネスの視野、"立•立体 りつ りったい的" な世界観へと見開かれてゆくのでしょう。

そうして一人一人のワンネスの万華鏡がさらに手に手を取り合って繋がった世界をちょっと想像してみてください❣️💕💖

たしかにこの場所は、ナムの言っていた通り、時空創造エネルギーの突破口となり得る "力のヘソ" の一つに間違いなさそうです。

つづく


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木倶知のりこ 著書:●絵本『小箱のなかのビッグバン』 *・* ・*●『ナム "RNAM" 時空を超える光と水の旅』

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