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更けゆく。

懐かしいなと振り返る事が出来るのは、それだけの期間を積み重ねて来たということ。

楽しかった事ばかりじゃなくて、辛かった事や苦しかった事も互いに共有をしてきて、一緒に泣いたり苦しんだりしてきた。

綺麗な部分だけじゃなく、人に見せないように努めてきたものを見せることは恐怖だ。どんな反応をされるだろうか、幻滅されるだろうか、引いてしまわないだろうか。そして、それをさらけ出した自分自身の惨めさに耐えられるだろうか。

努力してこなかった、その結果だと自己嫌悪にも陥るが今更だ。今を、これからをどうしていくのかが問題だ。対峙するのは過去ではなく今だよ、と言葉では格好つけてもみるものの内心は惨めだ。

彼には、そんな情けないと自分で思っている過去も話した。誰にも見せなかった部分を見せた、これまでほぼ誰にも話さなかったことも話した。見たくなくて向き合わないでいた事実も話した。それを知った上で付き合って欲しいなんて、欲張りなことを思ったのだ。

受け入れてくれることを、当たり前だとは思わない。それこそ、軽蔑されることも危惧しながら訥々と話した。

彼は話の間、何度も相槌をくれた。ただ否定することなく聞いてくれた。それがどれだけ救われたか。どうしようもないような面白くもない話を延々と話す私にただ付き合ってくれた。その相槌には軽蔑の色はなく、ただ安心したことを覚えている。

受け入れて貰えたのか、というのは正直なところ定かではないのだけれど、否定されなかった、私にはただそれだけで充分だった。いちばん怖かった部分だったから。それに、私の周りの誰のことも否定しなかった。それが嬉しくもあった。

話し終えた深夜四時、もう深夜というよりも明け方の更けていく夜。安堵に包まれながらゆっくりと微睡んで意識が溶けていくーーー。

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