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月報:2023年12月

 冬を乗り切るための営みは、なんだか儀式めいているような気がする。やわらかい毛布を膝に掛け、紅茶に温めた牛乳と蜂蜜を混ぜ、ぬいぐるみたちをそっと撫でる。街からは木々のざわめきが失われ、うっすらと雪が降り積もっている。静かな世界ではページを繰る音がよく響く。「寒さは豊かさだ」という言葉がとても好きです。

■2023年のこと

 年の瀬のどこか落ち着かないような、浮き足立っているような慌ただしさが好きだ。今年もいろいろなことがあったなと思い返していると、記憶の遠近が必ずしも現実の時間軸と一致しないことを思い知る。

 私が楽しく遊んでいるソーシャルゲーム『あんさんぶるスターズ!!』では、2月にバレンタインをテーマにしたEdenのユニットイベントが開催された。ジュンくんと茨がメインに据えられたことにどこか緊張しながらも、すばらしい曲とストーリーに感極まったことをまるで昨日のことのように覚えている。
 ほんとうに良かったし、うれしかったよね。ストーリーのサブタイトルにも用いられた「結果的愛情」というフレーズの幸福さがずっと響き続けている。

『Rouge&Ruby エピローグ①』より

 私がジュンくんと茨の物語を見守り始めてから、決して短くはない年月が経過している。数えるほどしかなかった会話がもはや数えられないほどになり、同じ時間を過ごしていることを感じさせる場面が増え、同じパートを歌うことも増えた。そうしてたどり着いた今が「結果的愛情」なのだと思うと、凪砂くんの台詞と同じ願いを抱かずにはいられない。

 かねてより、私はEdenのなかで愛情が循環する日が来ると信じていた。
 幼い日和くんが凪砂くんに出会ってアイドルを志し、アイドルの日和くんが振りまく愛にジュンくんが出会い、そうしてEdenはユニットとしての生を受けた。茨もまた凪砂くんをプロデュースする中で、愛情にも似た執着のような複雑な感情を向けている。
 ユニットの中での愛情の輪は、茨とジュンくんをつなぐパーツが決定的に欠けていた。日和くんと凪砂くんに確固たる運命があり、AdamとEveの各々にもまたドラマチックな出会いあるいは因果がある一方で、茨とジュンくんのあいだには何もない。私はその偶然性のようなものを愛しながらも、いつかふたりのあいだになんらかのパーツが嵌ってきれいな環となる日が来ることを信じていた。

『Rouge&Ruby 恩情と温情/第四話』より

 どうやらそのパーツは、彼らが同じ時を過ごすなかでいつの間にか生まれていたらしい。運命的なロマンスや決定的なドラマはないまま、自然と「結果的愛情」が生まれていたことを知る。大々的なきっかけがなくても絆が生まれたことがとてもうれしくて、いま・この瞬間も幸せな気持ちでいる。かつて茨が「いちばんそれが都合が良かったから」などと線を引いていたことが信じられない。

 幸いにもあんさんぶるスターズ!!は変化を許容するコンテンツだ(『ガーディアンズ◆アイとラストミッション』も今年のできごとだった)。ゆるやかに進化を続ける彼らの眩しい光のゆらめきをいつまでも見守り続けたい。クライマックスイベントも楽しみだね。

 そのほかにもたくさんの美しいものに触れた一年だった。
 ゲームでは『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』と『ファミレスを享受せよ』、小説では青崎有吾『地雷グリコ』、映画では『グリッドマン ユニバース』、マーダーミステリーでは『英国探偵とウォルターの遺産』がひときわ良かった。丁寧かつ緻密に構成された作品は宝物のように感じられる。

 ありがたいことに謎解き公演にもたくさん参加することができたのだけれど、いちばんうれしかったのはタンブルウィードの『immortal』だ。

 謎解き公演にはよくあることだが、基本的に事前に内容を知らされることはない。公演後のネタバレも固く禁じられているため、どのようなことが起こるかは参加するまでわからない。ただ、この公演の感想からは熱狂のようなものがかすかに漏れ出していたことを記憶している。

 220分間という脅威の長さの公演を乗り越えたとき、私はなぜか初めて参加した謎解き公演のことを想起していた。右も左もわからなくて失敗してしまったのに、もっと遊びたいと心から思った時のあの感覚が鮮やかに甦る。
 immortalは私にとって正しく未知でありながら、どこか懐かしい不滅の感情の存在を提示してくれた。あのときに感じた興奮と高揚はいつまでも消えないまま、今日も私を謎解きへと導いている。どのようなコンテンツであっても「ずっと好きでいて良かった」と報われる瞬間は尊く、その愛は決して消えることがないなと思う。

 来年からはとある資格試験のために多大なる努力を重ねる必要があるため、変化のない日々を過ごすことになりそうだ。好きな分野について学べることは楽しくてうれしいのだけれど、余暇は確実に減る。それでもなんとか新しいものに触れつづけて、文章を書いて、そうして生きていきたいね。小説もたくさん書きたいです。

 今年も大変お世話になりました。来年もよろしくね。

■『スカウト!ホワイトベア』のこと

 順序は前後するが、私は一年でいちばんクリスマスが好きだ。明確な信仰に基づいているわけではなく、ただきらきらと輝く街の雰囲気や、ケーキやプレゼントのかたちを取った幸福のやりとりが為されることをこよなく愛しているだけだ。そしてクリスマスをモチーフにしたデザインはどれも大変かわいい。

 今年のあんさんぶるスターズ!!のクリスマスをモチーフにしたスカウトは『スカウト!ホワイトベア』だ。もっともレアリティの高いカードは巴日和さんを描いたものであり、本当にうれしかった。好きなものと好きなものが合わさるとこんなにも美しいんだ、と改めて実感した。まさに福音といえる。

『ホワイトベア 真っ白な日記帳/第四話』より

 ストーリーのあらすじはこうだ。巴日和さんをはじめとしたアイドルの面々は、慰問活動として病院を訪れる。クリスマスを盛り上げるために患者の子どもたちと対面するなかで、ある男の子が病室から出られないことを知る。彼の代わりにと託されたホワイトベアを手に、巴日和さんたちは男の子にかけがえのない想い出を贈ろうと奮闘する。

 巴日和さんは愛のひとでありながらリアリストで、ノブレス・オブリージュを体現したようなひとだ。このストーリーではその側面がよくあらわれていてうれしかった。
 病室の男の子の願いを無理なものだと一蹴せずに検討して、どうにか叶えられないかと考える。しかしどうしても病室から出られないとわかると、可能な限りで願いに寄り添うよう努める。
 巴日和さんは世界の限界を知っているひとで、己の手が届く範囲の幸福を最大化するように努めているのだと思う。その両手におさまるすべての存在を抱きしめるけれど、彼が触れられない場所にいる存在に残酷な期待を与えることはしない。限界に対するうっすらとした諦念は彼が覆い隠そうとしている本質のひとつなのかもしれない。
 ただ、巴日和さんというひとは常人よりもずっと腕が長く、愛することができる存在がはるかに多い。青葉つむぎさんを画角におさめることだって簡単に成し遂げてしまうのだ。
 一方でジュンくんは世界の限界を知らない子どもで、それが愚かさではなく無限の可能性であるところがいいなと思う。巴日和さんがすっと線を引いた世界の輪郭をあっさり飛び越えてしまうから、ジュンくんのことがお気に入りなのかなと思う。

『ホワイトベア 真っ白な日記帳/第六話』より

 ハッピーエンドとして描かれたクリスマスの物語のエピローグに凪砂くんがいてくれてうれしかったし、どうしても日和くんと凪砂くんの幸せなクリスマスを描きたい!という強い意志を感じられてよかった。
 なんだか私までプレゼントをもらったような心地でいた。日和くんと凪砂くんが仲良しだとこんなにもうれしい。

 それでは、またね。おやすみなさい。

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