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パワーウィンドウ

自分の言葉と自分の声シリーズ

第三話 パワーウィンドウ

あれはまだスマホがない時分のことやったから。もう20年以上前になるんかな。友達と車2台で旅行に行ったときのことや。信号待ちで、俺の車が前で、友達の車が後ろになって止まったときのことやった。いまやったら連絡しようと思たらLINEかなんんかでするんやけど、その時分はLINEというか、ま、ケータイ使うこともあんまりなかった。で、俺は、運転席の窓を開けて首をだして後ろの車の友達に大きな声で、何かひと言伝えようとしたんやな。窓を半分開けて首出して後ろを振り向いた、その拍子に、あの右肘でパワーウインドウのスイッチを押したんやな。ほしたら、突然、窓が、あの閉まりだして、俺の喉のあたりをウィンウィンウィンウィンいうて締め付けてくるねん。ぼっくりしたで。それもえらいチカラでや。窓を開ける方のスイッチを必死に押そうとおもて探すんやけど、首は外へ出てるもんやから見えへんがな。で、そのうち信号が青になって。後の友達には、わけわからへんから、クラクションならされし、首は絞まるわ、息はできひんわ、もう死ぬかと思たで。いやほんまに。で、あの結局やな。何やおかしいと思た後ろの友達が、あの走ってきてくれて。ほんでまぁ、見て、そのドア開けて、一命を取り留めたんやけどな。パワーウィンドウ、なめたら、あかんで。えらいめにあうで。ほんまにもう。気ぃつけや。

1分59秒 592文字

過日、オンラインのワークショップに参加しました。これはその時の事前課題・宿題としてつくったものです。

宿題は「自分の作品を自分の言葉と声で表現する」。具体的には「実際には起きていないけれども、自分にとっては本当に経験したように思えるあるシーンを、そのことを経験した自分が話すときの話し言葉で書いてください。どんな設定でもいいですが、その話をすることにリアリティのある相手に話している設定にするのがいいと思います」というものでした。

録音は、話し言葉で書いたものをもとに自分で読んだものです。自分の言葉とはいえ書いたものを読んでいるので、少し、ギコチナイところがあります。でも、これが、自分の言葉であり自分の声だとおもうとおもしろいものです。

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