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あの頃のこと

彼女の右手は意外に小さくて薄っぺらだった。それにすごく冷たかった。ぎこちなさも信号を越えるたびにほぐれて。歩く早さなんかもはじめは気にかけてはいたけどそれもいつのまにか忘れていた。クリスマスが近づくとそんなことも思い出す。

たくさんの時間を使っては話し合ったけど本当のところはわからなかった。でもそれが知りたくて言葉を重ねた。ただ重ねても重ねても重ね切れることはなかったしそれができないこともなぜかどこかでわかっていた。でもそれでよかったんだしそれがよかったんだ。

僕の愛が足りなかったのか。彼女の愛が足りなかったのか。きっとそのどちらでもありどちらでもなかったんだ。もう過ぎ去った事なのに思い出してはあの頃に帰って、いる。

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