見出し画像

読み書きゼミ。する。

私は誰も気にかけなくなった過去の事件にこだわる刑事にような気持ちで中動態のことを想い続けていた。

これは、國分功一郎著『中動態の世界~意志と責任の考古学』(医学書院)の「あとがき」328ページにある文章だ。

いま僕はこの本を読んでいる。自分で読もうと読みはじめたわけではなく。「まるネコ堂ゼミ」の課題図書だから。読んでいる。ゼミは月1回ある。月1のゼミではレジュメを提出なければならない(一応提出できる人はという条件だが、僕はなるだけ提出するつもりだ)。つまりそのレジュメを書くために読んでいるといういわばそんなわけだ。

レジュメは形式も内容も自由。ゼミで指定されたところの章を読んで書きたいことを書けばよいのだ。次回ゼミは3月28日。「第3章 中動態の意味論」を読み、そして書くわけで。1月は1章を、2月は2章を読んで書いた。1章も2章も難しかった。うんうんいつものように苦しみながら本を読んで苦しみなからレジュメを書いてそしてなんとか出した。

ゼミではみんな苦しみに苦しんだレジュメを持ち寄っている(ようにおもう)。苦しみに苦しんだぶんだけ晴れ渡ったときはうれしい、と書きたいところだが晴れ渡るときもあればますます雲行き怪しくなるときもある。いっぱいある。しかし晴れ渡るか雲行きが怪しくなるかそのどちらかでもありそれがまたどちらともいえないという感じではあるけれど個人的な読書体験では得られないものがあることはある。それはちがいなくある。ここにはそんな読んだ体験を持ち寄るという経験があるように感じている。参加していておもしろい。

僕自身、1章と2章を終えて雲間に陽射しがさすような感覚もあり。なのでかだからか3章はおもしろい。もちろんすっきりと晴れ渡る感じはとてもないけど。いまは何度も何度も読み返してはその道行きを確かめているといったところ。昨夜も遅くに読んだ。同じところ何度も読んだ。道行きというか道順を確かめるようにして読んだ。そんなふうに何度も何度も読むには読むが読んでも読んでも飽きない。

いや待てよ。飽きないというのはちょっとちがうな。レジュメを書けない。そうそう何度も何度も読まなければレジュメを書けない。だから読んでる。それが正直なところ。かもしれない。でもそんな読むでもいまはちっとも苦しくはない。むしろおもしろい。

そして今朝、ちょっと「あとがき」(327~335P)を読んでみたくなり、読んだ。

レジュメを書くための下ごしらえのような抜き書きを、この「あとがき」でやってみたくなった。やってみよう。

なにかどうということではなく。ただ印象の残った箇所をつらつらと。書いてみる。いや書き出してみる。

~~~

私は誰も気にかけなくなった過去の事件にこだわる刑事にような気持ちで中動態のことを想い続けていた。(328P)

その理由は自分でもうまく説明できないのだが、おそらく私はそこで依存症の話を詳しくうかがいながら、抽象的な哲学の言葉では知っていた「近代的主体」の諸問題がまさしく生きられている様を目撃したような気がしたのだと思う。「責任」や「意志」を持ち出しても、いや、それらを持ち出すからこそどうにもできなくなっている悩みや苦しさがそこにはあった。(329P)

世の中には数えきれないほどの問題がある。問題に出会ったとき、さまざまな人がさまざまな反応をする。(330P)

哲学は概念を扱う。哲学は漠然と真理を追究しているのではない。直面した問題に応答すべく概念を創造する。ーーーそれが哲学の営みである(真理とはおそらくこの営みの副産物として得られるものだ)。(330P)

意志、責任、行為、選択等々・・・疑問視する概念を導入する・・・(330P)

結局のところ本書が問題にしてきたのは、我々が能動/受動の区別を通じて人間存在について抱いているイメージに他ならないからである。(331P)

中動態の漠然としたイメージに概念的な枠組みを与え、そのうえで、それを高次のイメージへともたらすこと。いわば、中動態の「概念的イメージ image conceptuelle」とでも呼ぶべきものを提示するのが、本書の目指したところである。(331P)

「能動」「自由」・・・「行為の批判」・・・(332P)

これは何としてでもまねしなければならない。(333P)

やはり、「読めよ。さらば救われん」こそが研究における真理である。(333P)

依存症が明るみに出した問題と中動態の概念が本質的なところでつながっているという強い信念を抱いていたのは私よりもむしろ白石さんであった。(334P)

本を書く作業には断念のフェーズがつきものであり・・・信念には、一人でそれを守るのは非常に困難であるのに、誰かとそれを共有するとむしろ信念の方が自分たちを守ってくれるようになるという奇妙な性質がある。(334P)

~~~

読み書きゼミ。する。おもしろい。 2010文字

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?