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人工知能

自分の言葉と自分の声シリーズ

第一話 人口知能

僕、落語教室に通ってるの、知ってるやろ。で、こないだ落語教室の先生にな。ちょっと付き合うて欲しいとこあんねんって言われて。行ったとこ、どこやったと思う?それが。奈良にある先端科学技術大学っちゅうとこの研究所やねん。なんでも最先端のAI。あ、AIって知ってる?よう聞くやろ。あの~人工知能っちゅうやっちゃ。早い話がロボットの研究しているとこらしわ。そこへね。あの~先生と俺と落語教室の生徒もう一人、ま、三人で行ったんやけどね。何しにいったと思う?まぁ、落語の先生とやから。まぁ落語しに行ったんやけどね。それが~フツーの~あの~落語会とはちゃうねん。最先端のAI、人工知能の研究のために落語しに行ったんや。え?どういうことかっちゅうとな。人間の笑いっちゅうのは、人工知能の研究からしたら、実は、めっちゃくちゃ難しいそうや。いままでできひんかったそうや。ロボットが、笑ろてんの見たことある?ないやろ!笑うのって難しいらしいわ。人間の感情、つまり喜怒哀楽のなかでも、笑いは最高に難しらしいわ。で、その人間の笑いの、まぁ分析たら解析たらなんたらをするためにやな。データ収集、データを集めるのに協力してくれっちゅうことで、呼ばれて行ったんや。もちろんただちゃうで。少ないけど謝礼と交通費はもろたよ。先生はなんぼもうたんか。そら知らんけどな。んで、まぁ、そこで落語やったんやけど。AIっていうてもまぁロボットやんか。相手は機械や。そのロボットの前でやるちゅうのもなんやからちゅうんで、そこの研究所の人ら、10人ほど集めてもうて。その前で落語やったんや。人間のお客さん10人に混じってAIのロボットにも、ちゃんと客席に座ってもろうてな。データ集めなあかんから。そのロボットも一応人間らしい格好はさしてたけど。でもさすがに無表情やったわ。それ見たとき。あんな冷たい機械みたいなロボットの前でやらされへんでよかったとおもたわ。そこで落語したやで。10人のお客さんにまじってロボットも、落語聞いて、言葉理解して、人工知能を使うてどう反応するのんか。分析用のデータを集めてたらしいけど。あんまし長いことやってもしゃーないっちゅうんで、素人の落語ひとつと、プロの落語ひとつの、まぁふたつやって帰ってきたんやけどな。先生はやる前はえらい嫌がってはったけど義理のある人から頼まれたらしいんで断るわけにいかへんかったいうてたわ。やりにくいなぁいいながら。まぁ研究所の人らがお客さんで10人いたはったんで。そこは辛抱してやりはったみたいやけど。でも当たり前けど、やっぱしプロはプロやで。本番になったら全然ちゃうねん。あんだけ嫌がってたのに。僕ら素人との違いはもうあきらかや。そらそやわな。研究所のお客さん10人が10人とも腹抱えて笑ろてたわ。んで舞台の袖で見てたらあのロボットもな、僕んときはビクともせんかったくせに、先生のときは、壊れてしもたんちゃうかと思うほど、前後左右に揺れてたわ。ん。あれ笑ろうてたんやろな。まじで。怒るでほんまに。先生がえらいんか、ロボットがえらいんか、ま、よぉ知らんけど。気ぃ悪いわ。落語終わってからな、僕、なんやいつもより余計に落ち込んでん。傷ついて帰ってきた。もうあんなとこ二度と行きたないわ。AIか人工知能か知らんけど。あんなもん。あかんわ。腹立つ。

4分01秒 1393文字

過日、オンラインのワークショップに参加しました。これはその時の事前課題・宿題としてつくったものです。

宿題は「自分の作品を自分の言葉と声で表現する」。具体的には「実際には起きていないけれども、自分にとっては本当に経験したように思えるあるシーンを、そのことを経験した自分が話すときの話し言葉で書いてください。どんな設定でもいいですが、その話をすることにリアリティのある相手に話している設定にするのがいいと思います」というものでした。

録音は、話し言葉で書いたものをもとに自分で読んだものです。自分の言葉とはいえ書いたものを読んでいるので、少し、ギコチナイところがあります。でも、これが、自分の言葉であり自分の声だとおもうとおもしろいものです。

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