白い砂浜
自分の言葉と自分の声シリーズ
第二話 白い砂浜
こないだの日曜日かな。うちの嫁はんと、たまには息抜きや。遠出でもしょうか、言うてな。車で和歌山の方まで行ったんや。で海岸線走って、白浜までは遠いけど、その手前あたりまで走って行ってたんやけど。あれは昼の2時過ぎ頃やったかいな。もうそろそろ引き返えさな。だいぶ来たで。とふたりで話してたらな。車の右手の方にのびてた海岸線の向こうに、真っ白な砂浜が見えてな。あぁあれ見てみいな。キレイな。とふたりで言うて。ちょっと、あそこまで行って、それから帰ろか、いうことになって。んで5分ほど走ったかいな。さっき見えた白い砂浜へつづいてるらしい細い道を見つけたんで、ゆっくりと車で行けるとこまで行こか言うて入っていったんや。そしたら20メートルほど先に、さっき見た白い砂浜が見えてきたんで。Uターンして帰らないかんし、ま、もうこのへんで車をいったん置いて。あとはもう歩こかということになって。とりあえずそのへんに車をとめてふたりで歩いたんや。ちょうど砂浜に出るあたりで、古い木の看板が立ててあってな。そこにカタカナでな「このはま、きけん」って、それだけ書いてあったんやけど。看板の前で立ち止まって、どういう意味かいな?ってふたりで考えたんやけど。わからん。立入禁止みたいなことちゃうかとふたりで話して。そーっと砂浜を覗いてみたけど。普通の砂浜で、誰もいてへん。砂浜がめっちゃ真っ白でな。いままで見たことのないような白さやなってふたりでいうて。で、気ぃついたら、もうふたりで、砂浜を歩いてたんや。で、ふたりでうっとりしながら波打ち際までいって。めっちゃ気持ちええなぁいうてたら。真っ白な砂浜がめっちゃやわらかいんうあんか。さらさらやんか。すごいな。いうてた。そうこうしてるうちに足のくるぶしまで砂に埋まってしもうてな。へー、こんな砂浜、はじめてや、笑いながら、嫁はんの方を見たら。なんと嫁はん、膝まで砂浜に埋まってる。お父さん、なんや、おかしいで!っていうて。必死に足を抜こうとしてんねんやけど、抜けへんみたいで。僕の、目の前、2メートルぐらいのところなにゃけど。もう、どんどんどんどん砂浜に埋まっていってる。おい、大丈夫か、と嫁はんに手を出そうとして、気がついたた。俺も、もう、膝まで砂浜の中に埋まってる。これはえらいこっちゃと必死になって、何とか、抜け出そうとするけど、できひん。ですればするほどズブズブズブズブ埋まっていく。おーい、誰かー。助けてくれー。思わず大声で叫んだけど。誰もいてない。気配もない。胸のあたりまで埋まったとこで、なんかの拍子で波の方に向かって身を傾けたら、そんときだけ、少し身体が抜け出るような感じがした。ひょっとしてとおもうて、おもいっきり波がくる海の方へ身を預けながらもがいてみたら胸まで砂浜に埋まっていた身体が腰まで出せた。さらに波を被り、溺れそうになりながら、思いっきり海側へ身を寄せて足をばたつかせたら、なんやしらんけど抜け出せた。嫁はんの方を見たら、彼女は、もう首まで埋まってる。あとは頭だけ。顔だけ。わんわん泣いてる。砂だらけの僕は海の方から必死になって近づき、頭の両側、両肩あたりからまっすぐ両腕を砂浜に突っ込み彼女の両脇に腕を差し入れて、せぇーので一気に海側の方へ、引っ張りあげた。両肩が砂浜から出た。がんばれ。がんばれ。そう叫びながら。必死に、身体を海側に預けて引っ張り続けた。そのうち、胸から腰あたりまでが砂浜から出た。あとはその勢いで必死に抜け出し。命からがら、砂浜を駆け抜け、車に戻り、半ば、放心状態のまま、猛スピードで家に帰ってきた。えらい遠出やったわ。
5分00秒 1518文字
過日、オンラインのワークショップに参加しました。これはその時の事前課題・宿題としてつくったものです。
宿題は「自分の作品を自分の言葉と声で表現する」。具体的には「実際には起きていないけれども、自分にとっては本当に経験したように思えるあるシーンを、そのことを経験した自分が話すときの話し言葉で書いてください。どんな設定でもいいですが、その話をすることにリアリティのある相手に話している設定にするのがいいと思います」というものでした。
録音は、話し言葉で書いたものをもとに自分で読んだものです。自分の言葉とはいえ書いたものを読んでいるので、少し、ギコチナイところがあります。でも、これが、自分の言葉であり自分の声だとおもうとおもしろいものです。
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