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そうだ、メイド服を着よう。

画像:https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/_8rK_Tb7Ju0

序文 なんで片付けってあんなに気が重いんでしょうね

片付けより嫌いなものは無い。
何を隠そう、僕という人間は本当に、片付けが嫌いで嫌いでしょうがないのである。
片付けでぶち上がったことなど、小学校の運動会のお片付け競走でデットヒートを繰り広げた以来の話であり、すなわちオタク=クソデカ=単位で表すところのおおよそ6億年前の出来事である。それも自軍に点数が入る!という特大ニンジン付きだからなんとかやれたようなものだ。悲しいかな、人間も動物だ。ニンジンがなければ動かない。僕とて例外ではなかったということになる。
A型が几帳面というのは真っ赤な嘘だ。嘘でなくても100%当てはまってたまるか。「まあ次の休みに片付ければいいか……」と来週の自分にパスしまくった結果、几帳面で綺麗好きというA型の特性とやらに正面から疑問を投げかける哲学的かつ前衛的な部屋の出来上がり。この世の不条理と、韓国や日本だけがやけに盛り上がっているらしい血液型占いについてチベットスナギツネ的な目線を向けざるを得ない。
いや、流石にちょっと言いすぎた。弁明をさせてほしい。僕は決して掃除が嫌いな訳では無いのだ。両親はよく教えてくれたし、手伝いをするのも好きだった。無心になって汚れを落とす作業は心も洗われるようで、学校でも家庭でも熱心に取り組んだものだ。
ただ片付けという作業が致命的にダメだ。視界から消えた瞬間、僕の世界にその物品は存在しないことになる。誇張抜きで、記憶から綺麗さっぱり消えてしまうのだ。だから必然、大事なものが目に付くように配置しよう、配置しようとする結果、日々少しづつ自分なりに“片付け“が進み、この四畳半に魑魅魍魎が跋扈するわけだ。
ここまで列挙すれば、片付けに対して気が重いことも理解いただけることだろうと思う。
しかし分かっているのだ。そりゃ綺麗な部屋で過ごした方が精神衛生上いい。本当にいい。帰ってきて、朝起きて、一番最初に目に入るのが、刑事ドラマなら十中八九争いがあったと目されそうな部屋なのは、本当になんというか……しょっぱい気持ちになる。でもそんなこと言ったってめちゃくちゃ気が重い!片付けきらい!
そんな感じで二律背反に弄ばれていた僕だったが、先日、ふと天啓を得た。

そうだ、メイド服を着よう。

白昼、シラフの洞察である。

俺自身がメイドになることだ


冷静に考えて欲しい。メイドさんの仕事は何だ?それ即ち、家主に代わり家事炊事などの雑用を行う事だ。
この辺りはサブカルにあまり造詣が深くなくともなんとなく知っているだろう。萌え萌えきゅん♡だけが彼女らの仕事では無い、はずだ。
また、我々は部屋着からスーツに着替え、ジャケットに袖を通し、あるいは化粧を施して、私的な自己と公的な自己を、服装で区切ることを自然に行っている。
これらを悪魔合体し、一度状況を整理してみよう。
まず、僕の中には「メイドさんの仕事は家主に代わり家事炊事などの雑用を行う事である」という前提がある。次に、服装で自己をある程度切り替えることが出来ることを知っている。最後に、僕は片付けの類が致命的に苦手である、という現在の困り事を加えてみる。
導き出される結論はこうだ。

「メイドさんの格好をして掃除とか片付けをしたらノリノリで片付けられるのでは?」

胡乱だ……。
しかし、前からメイド服を着てみたかった僕の脳内BGMは完全にWANIMAのやってみようだった。

https://youtu.be/eIja9BI_h9U

まあやらないよりはやった方が面白いよな……。ダメでもTwitterのネタにはなるだろ……。そんなこんなで勢いとノリだけで清掃を計画。早速メイド服を購入した。


アマプラってすごいのよ!

メイド服はあくまで掃除や片付けの作業着として使うため、安物のロングスカートタイプを買った。値段は3000円しないくらいだった。安物とは何か考えさせられる値段だ。アマプラの恩恵で注文した次の日に到着した。ありがたい。

https://amzn.asia/d/3u74PIg

なんでこんなに高いんだ……?と思っていたのだが、それもそのはず、内容物はワンピース、エプロン、エプロンの後ろにつけるのであろうリボン、フリルの着いたカチューシャ、黒ストの豪華5点セットだったのである。
なるほど囲い込みじゃねーの。軽い気持ちで買った人間の退路を断つ鮮やかな手腕に、思わずイマジナリー跡部様が降臨してしまう。跡部様にはコートで活躍してもらうとして、オタクは大人しく着替えて自分の部屋を掃除しようと思う。

目的は掃除と片付けなので、リボンやカチューシャ、黒ストの類は着用せず、素うどんならぬ素飯として装いを改める。そこから掃除と片付けに軽く手をつけた感想を記しておく。

思った以上に己がメイドになる

思った以上にやる気が沸いた。やったりますか……という気合にあふれていた。メイドとしての感情が芽生えたというよりかは、元から人生経験として一回くらい着ておきたかった欲がうまい具合に作用したのかもしれない。

作業着であるという安心感


学校のプリントによく書いてある「汚してもいい服装」という指示に対する不信感を未だに擦り続けている人間としては、本当に「汚してもいい服装」が存在する安心感はすごかった。いくら汚したっていいとはいえですね……というモニャモニャした言い訳を叩いて砕くメイド服。なぜなら今も昔もこの服装は作業着だから。思い切って掃除や片付けが出来たのは嬉しかった。

ポケットが無かった

ものによるとしか言いようがないが、作業中はスマホで音楽聞いておきたい民からすると地味にストレスだった。まあ平民如きが作業中にBluetoothなんか繋いでるんじゃねえ!という意図なら、メイド()である僕としては頷くことしかできないわけだが。

人権を無くしかける危険性がある

メイドは普通住宅街に出現しないので、根城を出ると異常成人オタクとみなされかねないリスクがあるのは大きい。ハラハラする。
着替えて掃除をし始めてからゴミ袋を切らしたことに気づいたときは”終焉”を覚悟したが、エプロンを取って上着を羽織ればロングスカートという体でごまかせないことはなくはないと思われる。
大事なのは変にびくびくせず、ハ?これが正装やが?くらいのふてぶてしい堂々とした態度を貫き通すことだ。
都合の悪い記憶を早急に消す能力がある事が望ましい。

跋文 千里の道も1ミクロンから

何はともあれ、今日分の片づけと掃除はかなり気持ちよく終えることができた。暫く継続してみないとデータが少なすぎるが故に何とも言えないが、あながち悪い手法ではないのでは?という手ごたえがある。
しばらく続けてみる必要があるだろう。実は掃除より片づけより、何かをコツコツ続けることが苦手なのだが……。まあ、今日一歩踏み出せたのだから出来ないということはないだろう。何とか捻出してみることにする。

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