マエストロ
よく「アダルトビデオじゃないんだから」って男性のことを揶揄するけれど、男性だけでなく女性も同じように洗脳されているかもしれない。
だって最初にセックスを知ったとき情報なんてなかった。私の思春期に性の情報が得られるのってアダルトビデオだけ。
性の話はオープンにしないのがルール。そんな感じ。相手の自尊心を損なうものだと口をつぐんでいた。
沢山のことを両親から教わったけど、それだけはオブラートに包まれたまま細かく教わらなかったし。
ある時、ラブホテルで彼に言った。
「私の喘ぎ声はAV女優さんと全然違うよね、なんか色気もないし。」
『誰かにそう言われたの?』
「そういうわけじゃないけど、比べてみると抑揚もないしつまらない感じかなって。もっと色気がある感じにしたいんだけど、自分でもどんな風に声が出てるのか分からない。」
『何にも気にしなくていい。今のまま、そのままで充分に興奮する。いい声だよ。』
その答えの後に私は密かに感動していた。ずっとそんなふうに言って欲しかったのかもしれないな。
答えなんてないものにずっと彷徨い続けて来た気がするよ。わりと暗くて辛い道のりだったから。
ある女性が喘ぎ声は悦びの歌だと表現していて、しっくりきた。
喘ぎ声は好きな人にだけ聞かせる唄声。
モノマネじゃなくていい。
自由に伸び伸びと歌って、それを愛おしいと思ってくれる人の前でだけ唄い続ければいい。
世界最高峰のマエストロは自由に唄うことを私に教えてくれた。
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