moon child(短詩)
寂しくなれたと思うときに
むかし聴いたピアノの旋律を今でも口ずさむ
肩を寄せて聴いたラジオから流れ出す音
海と電線と青空
強くあると思える日も最近は増えて
白鷺は分岐する水流の水平線と沸点を溶けあわす
裸眼で見るものだけが真実だった
貧しさは冬との横着に似ている
白鍵と黒鍵が向かう先ばかりを気にしていて、いつも
見えているものばかりから確認に縋ろうとして、
晩夏は要請された素肌に触れる風の滑稽さを冷笑する
生まれてから一度も日焼けをさせたことがない
誘拐した大衆性を余すことなく隠しきる
夜の対称性は僕に恥ずかしいことだから泡の癒着の中に捨ててしまった
(恥ずかしいこと……?)
◇
出自は呪いのように付き纏う
革命は月のもとでなくても起こせる
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