ショートショート(22話目)パチンコ生活者の1日

パチプロというと派手に遊ぶイメージがあるかもしれない。

だが、それは勘違いだ。

倹約家でなければパチプロは務まらない。


~AM9:30~

砂糖いりの缶コーヒーを鞄に2本入れて、開店前のパチンコ店に並ぶ。

持参している缶コーヒーはスーパーでまとめ買いしたもので1本60円。

パチンコ店の自販機で購入すると130円かかるので、1本あたり70円の節約、2本で140円の節約になる。

1日140円の節約が1年で51100円となり、この金額はスロットならば約1800回転ぶんになる。


僕は基本的に朝飯も昼飯も食べない。

だから、この缶コーヒは食事替わりだ。

パチプロは食費だって削る。


~AM10:00~

開店と同時に入店し、狙い台だったジャグラーに座る。

ジャグラーはGOGOランプが光れば当たりというシンプルな機種だ。

コインを入れ、ベットボタンを押して、レバーを叩く。

この単純作業をひたすら繰り返すのがスロットだ。

レバーを叩くときは力を入れずにリラックスして叩く。

稼働時間は最長で12時間を超えるため、いちいち力を入れてはいられない。


今日は稼働から10分ほどでランプが光った。

1枚がけでレバーを叩く。

ブドウとボーナスがどちらもテンパイとなり、ボーナスを外してブドウを揃える。

1枚がけの時、ブドウの払い戻しは14枚(280円)。小さな行いの積み重ねが、長期的にみると大きな差になる。


~PM13:00~

パチプロはパチンコを楽しんでいると思っている人がいる。

もちろんそういった人もいるだろうけれど、僕にとってパチンコはただの作業だ。


僕は基本的にジャグラーしか打たない。

ジャグラーはLEDランプが光るか光らないかという単純明快なゲームだ。

派手な演出もなければ、一撃で数万円でるようなギャンブル性もない。

ただ、いま最もホールで勝ちやすいのがジャグラーだ。

ほとんどのスロット店で、ジャグラーは2割程度の占有率を誇る。

稼働率も高く、ホールはジャグラーにある程度設定をいれることで『お客さんがきているホール』をいうことを認識づけることができる。


「LEDランプを光らすだけのゲームの何が面白いのか」と思うかもしれないが、パチンコにエンターテイメントは求めないというのが僕のスタイルだ。

どんなにつまらなくても勝てばいい。


~PM17:00~

稼働から7時間が経過して、僕は2本目の缶コーヒーを飲み出す。

目も少し疲れてきたが、適当に打ってはいけない。


ジャグラーには目押しをしないとメダルを取りこぼす子役と呼ばれるものがある。

大抵が2枚役のチェリーだが、10回の取りこぼしで20枚(400円)。100回の取りこぼしで200枚(4000円)となる。

1日単位での影響は少ないが、長期的にみると子役の取りこぼしは致命傷になる。

左リールにバーを狙って僕は打つ。

1枚たりとも無駄にしないのがパチプロだ。


~PM20:00~

好調だった僕の台にハマりが訪れた。

どんなにいい台でも、必ず1回はハマりが訪れる。


パチンコのシステムは完全確率と呼ばれている。

確率論を無視していてはパチプロにはなれない。


僕はハマっているときも当たっているときも一喜一憂しないことを心掛けている。

毎日のように稼働するのに、いちいち感情を上下させていられないのだ。


~PM21:30~

設定6の数値を示していた大当たりの合算確率が設定4まで落ちた。

やめるか続けるかの選択をするときだ。

僕は少し考えて、やめる選択をした。


目の前の台が設定1か設定6か、どちらの確率が高いかといったら、圧倒的に設定1である可能性のほうが高い。

なぜなら、パチンコ店は営利を目的として作られた法人だからだ。

だから、合算が落ちたときは目の前の台が低設定だったと思うようにしている。


メダルを流して、カードに貯玉をする。

カードを作ることで端玉の有効活用ができる。

1本7枚(140円)もするジュースに交換する余裕は僕にはない。


~PM22:00~

吉野屋で牛丼を買って帰宅。

シャワーを浴びた後、牛丼を食べながらスマホでいきつけのホールの状況をチェックする。

スランプグラフと呼ばれるデータをみて、僕は明日稼働するホールと台番を決める。

僕は朝から晩まで節約を意識している。

細かい計算ができないようではパチプロにはなれない。

パチンコを楽しみたいという人は僕のようにパチプロにはならないほうがい

パチプロになれば、パチンコは間違いなくつまらなくなる。

パチンコは娯楽と捉えているときのほうが幸せなのだ。


~PM23:45~

ベッドに横になり、目をつぶる。

この生活がいつまで続くのか、僕には分からない。

夜の闇が不安と孤独を与えていく。

こうして、僕の1日は終わっていく。








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