スギは敵

 22年間も生きていれば、自分がどんな風に何を感じるのかも、多少わかるようになる。

 電車の外で右から左に消えていく、ありきたりな日常のなかに、幸せを見た。白いタイル造りのベランダに、少し雑多に干された洗濯物。自分とは関わりのない、誰かの生活がなぜか「快い」と思う。
思った途端に目の端のふかふかタオルは遠く遠くに消えて行った。

 なんの前触れもなく、死にたくなる。苦しいと感じる。泥の中でゆるくもがいて、深く落ち込んでいくみたいな、絶望なんだろうかと思う。理由も何もない無意味な絶望に襲われる。

これは人間の、サイクルの中の仕方のない上がり下がりだと。私は知っている。人生は割と幸せが転がっていることも。私は知っている。この苦しみが永遠でないことも知っている。なんでも知っている。ような気になることもある。

 誰が死にたいと思っていようが、空は青く、空気はのどかで、鼻がむずむずする。くしゃみ。

満足したので終わり。

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