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はなり亭の料理から5「和風タルタルソースのチキン南蛮」

このコラムは読酌文庫が執筆・発表している小説「はなり亭で会いましょう」に登場する料理を取り上げたコラムです。本編未読でも問題なくお楽しみいただけますし、ネタバレにならないよう配慮した書き方を心がけております。

和風タルタルソースのチキン南蛮

衣をまとわせてカラッと揚げた鶏肉に、甘酢ダレとタルタルソースでいただくチキン南蛮。「はなり亭」では、タルタルソースを和風アレンジしている。

タマネギのみじん切りとレモン汁の代わりに茗荷の甘酢漬けを、彩りに散らすパセリの代わりに刻んだ大葉を。人によってはクセがあると言って嫌うかもしれないが、サッパリとした風味がでて、和っぽい味わいになってくれる。

この料理は、1巻の最初に収録しているエピソードにて、不慣れなアルバイトをする涼花が団体客用の料理として運ぶ一品であり、仕事の後に賄いとしてありついた料理でもある。

「渡辺さん、これ団体さんとこ持ってって。『和風タルタルソースのチキン南蛮』、ソースには茗荷の甘酢漬けと大葉入れてるし」
「了解です」
先ほど御厨が揚げ具合を慎重に見極めていたチキンは、少し雰囲気の違うタルタルソースとタッグを組んで、美味しそうな一皿に仕上がっていた。

はなり亭で会いましょう1「お試しバイトとお客様」

団体客に運びながら気になっていた、和風タルタルソースのチキン南蛮も、程よい量が盛られている。口に入れた最初の印象は、普通のタルタルソースと変わらない、マヨネーズ中心の風味だが、アクセントに入れられている茗荷と大葉が和のテイストを導き、アッサリとした印象になっている。程よく揚げられた鶏肉も、淡泊な肉質ながら程よい噛み応えで食べ甲斐がある。

はなり亭で会いましょう1「お試しバイトとお客様」

鶏料理は安っぽく見られがちな要素が多いが、手をかけるとグッと特別感の増すポテンシャルを持っていると思う。

ちなみに、「はなり亭で会いましょう」を書き始めたころの設定メモによると、団体客向けのコース料理は次のように設定していた。

  1. 自家製豆腐の冷ややっこ

  2. 季節のおばんざい

  3. 季節の野菜サラダ特製ポテサラ添え

  4. ささみの梅肉和え

  5. 和風タルタルソースのチキン南蛮

  6. 焼鳥盛り合わせ

  7. 鶏だし茶漬け

  8. 季節のデザート

自家製豆腐と鶏料理に、季節感あるものを絡めながら、程よい品数を揃えようと考えた様子が伺える。なお、季節のデザートは通常メニューには置いておらず、コース予約があったときのみ和菓子屋さんから仕入れて提供しているとか。

委託先情報

「はなり亭で会いましょう」1巻は、委託先「ぽんつく堂」「犬と街灯」「架空ストア」の通販でもお買い求めいただけます。はなり亭での飲み食いを通して、ちょっとだけ交流する関係を主軸に、2人の主人公の視点で物語が展開します。

※委託先により、販売価格・送料等が異なります。また、現在ぽんつく堂さんでお取り扱いいただいているのは、旧装丁版となります。ぽんつく堂さん取り扱い分も新装版となりました。

そのほか、大阪・文の里にある「みつばち古書部」の読酌文庫棚や、奈良・ならまちの無人書店「ふうせんかずら」(有人営業日もあり)の虎月堂さんの棚でも販売しています。お近くの方は是非どうぞ。

果てしない自由の代償として、全て自己責任となる道を選んだ、哀れな化け狸。人里の暮らしは性に合わなかったのだ…。