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はなり亭の料理から9「あんかけ豆腐」

このコラムは読酌文庫が執筆・発表している小説「はなり亭で会いましょう」に登場する料理を取り上げたコラムです。本編未読でも問題なくお楽しみいただけますし、ネタバレにならないよう配慮した書き方を心がけております。

あんかけ豆腐

これまでずっと、はなり亭で会いましょう1巻に登場していた料理を取り上げていたのだが、そろそろ2巻で出てきたものも見ていこう。そういうわけで「あんかけ豆腐」である。

作中での初出は、ある事情で涼花がいつものアルバイトではなく、お客側として「はなり亭」に来たときのシーンになる。

椀に添えられた匙ですくい上げると、湯気と共に出汁の香りが広がる。餡には季節を感じさせるキノコがたっぷり。火傷しないよう、息をはふはふさせながら口にすれば、柔らかな豆腐の食感と出汁のきいた餡の味が広がった。

はなり亭で会いましょう2「新たな年と小悪魔男子」

このときは今後メニューに加える予定の試作品だったが、のちに正式なメニューとなり、客から注文されるシーンもある。おそらくは寒い季節になると、冷ややっこ需要が下がるので、秋冬向けの豆腐料理として考えられたのであろう。

豆腐料理はアレンジ次第で冷たくも温かくもなるし、サッパリとしたものにも食べ応えあるものにもなる。冷ややっこは冷たく・サッパリの代表格だろう。しかし、熱々の餡と一緒になれば、寒い季節にうれしい料理へと変化する。

豆腐自体の味は素朴なものだが、それゆえに味の組み合わせは無限だ。出汁のきいた餡の奥深い味も上手く受け止めつつ、シンプルな美味しさで調和を取ってくれる。

つぶして細かく刻んだ野菜と、卵や小麦粉などをつなぎにして混ぜ込んで、油で揚げると「飛竜頭(ひりゅうず・ひろうす)」になる。「がんもどき」の方が伝わりやすいかな?

ほかにも、水切りして片栗粉をまぶしてこんがり焼いた豆腐ステーキや、味噌漬けにしてチーズのように濃厚な味わいにして愉しむこともできる。

江戸時代には豆腐百珍なんて、豆腐料理レシピ集も人気を集めたというし、料理として・素材として、豆腐は素朴ながら奥深い存在だ。

委託先情報

「はなり亭で会いましょう」1巻は、委託先「ぽんつく堂」「犬と街灯」「架空ストア」の通販でもお買い求めいただけます。はなり亭での飲み食いを通して、ちょっとだけ交流する関係を主軸に、2人の主人公の視点で物語が展開します。

※委託先により、販売価格・送料等が異なります。

そのほか、大阪・文の里にある「みつばち古書部」の読酌文庫棚や、奈良・ならまちの無人書店「ふうせんかずら」(有人営業日もあり)の虎月堂さんの棚でも販売しています。お近くの方は是非どうぞ。

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