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BTSの世界的活躍が嬉しい理由 〜東アジア人アイデンティティとコロナ差別と〜

防弾少年団ではなく、バンタンでもなくBTSこれが私の彼らの呼び方だ。あまり同じ日本人として〜だとか、同じアジア人として〜とかいう構文はあまり好きではないが、素直に彼らが世界で大活躍していることが嬉しい。

ここ数年、BTSが世界で躍進し、活躍していることは誰も否定できないだろう。アメリカでの成功はもちろん、ヨーロッパ各地でのコンサートもどれも完売。イギリスのあの有名なウェンブリースタジアムでも2日で12万人を熱狂させた。そして2020年、米Time誌においてEntertainer of the yearに選出された。

韓国映画やドラマ、KPOPの沼に嵌っている私であるが、正直言うと私は特別にBTSが一番好きだとかファンクラブに入っているだとか、という程でもない(私の推しグループはEXIDである)。でもなぜ彼らが世界を、特にエンターテイメントの本場アメリカやヨーロッパなどの西洋と呼ばれる地域をも席巻しているのがひたすらに嬉しいのか。そこには一種のナショナリズム的な、否、リージョナルアイデンティに根ざしたもの、東アジア人としてロンドンの地で2年弱過ごした経験からくる何かがある。今回はそれについて書いてみようと思う。

近年、日本では台湾が親日国だと持ち上げられる一方で、歴史問題に関連して悪化する韓国との関係や、大国化し台頭する中国への懸念や脅威論が叫ばれたりネガティブな感情やイメージを隣国へ向けたり、持っていることがあるだろう。

しかし、留学経験や海外滞在の経験がある人の多くにわかってもらえると思うが、海外で生活する中で仲良くなりやすいのは圧倒的にこれらの隣国出身者である。文化が近いのはもちろん、なんだかんだで距離的にもそれぞれの国に行くことが簡単であったり、製品などのモノや人の交流が多いことなど様々な要因があるとは思う。

そんな彼らの多くはとても親切だ。何か困りごとがあったら親身になって話を聞いてくれたり、解決策を持ってきてくれたりする。韓国人の友達にある韓国焼肉の味付けソースが何なのか聞いたら、それを教えてくれるどころか5本もプレゼントしてくれたり。フラットメイトの中国人は料理が得意で頼んでもないのにひたすらに振る舞ってくれた(まじで美味しかった、特に木耳の入ったニラ玉は絶品だった)。日本人的には、そこまでしてくれるの!的な経験がものすごく多かったし、ちょっとパブに飲みに行こうや!ができるのも韓国人の友達だった。

そして何よりも、(これが根底にあるのかもしれない)私たちは東アジア人としての括りで差別を受けるし、疎外感を感じさせられる。昨年ブラックライブスマターとして黒人差別に反対する運動が発信源のアメリカに留まらずヨーロッパにも波及していた。アメリカ、そしてヨーロッパにおいて人種差別反対というテーマはリベラルデモクラシーの一つの土台として議論、運動が行われてきた。しかし、その社会における人種差別問題の中に埋め込まれている構図は主として白人対黒人であり、東アジア人(あまり言いたくないが黄色人種)はそこに組み込まれているかは首を傾げてしまう。

しかしれっきとした事実として、ヨーロッパでの東アジア人への差別はある。構造的な目に見えない差別だけではなく、差別発言さらには暴力まで確実に差別は存在してきた。例えば、イングランドプレミアリーグで大活躍を見せているソンフンミンも試合中に観客から何度も差別発言を受けたことを告白している。これがソンではなく黒人選手だったらもっと問題化しているはずだが、どこか軽く扱われ、見逃されている気がしてならない。

https://www.goal.com/en-us/news/son-admits-to-receiving-racist-abuse-during-tottenham-career/h9skefw25s4y1t1nef63drn7n 


そして最悪なことに昨年2020年の1月、2月はヨーロッパに住む東アジアへの差別は激化した。そう、コロナウイルスが原因で。武漢での感染蔓延以降、韓国での新興宗教クラスター、日本に停泊していたダイアモンドプリンセス号での集団感染などのニュースが流れてきていた。しかし、ヨーロッパでの流行はイタリアが最初だったがそれも2月下旬か3月上旬からであった。ヨーロッパ各地で自分たちも火の車だと彼らが気づくまで(気づいてからもやるバカはいるが)、東アジア人はウイルス扱いされ、差別の格好のターゲットになってしまった。

実際に私もコロナ差別を受けた。2月中旬のある日、ロンドン市内のあるカフェの窓際のカウンターで1人道路むきにパソコンを開き作業していたところ、通りがかりの白人三人組が私を指差しながらウイルス!ウイルス!と叫んで過ぎ去って行った。

私だけではない。日本人の友達もわざと足元に唾を吐かれたり、私の東アジア人の友達も何かしらの差別をウイルス扱いをあの期間で受けたと聞いた。電車やバスに乗るのも周りの視線が今まで以上に気になったし、車内であまり近くに座ったりしてこなくなったなと感じた。東アジア人が乗ってきたら席を移動する奴もいた。

暴力行為にまで至った事例もある。ロンドンに留学中のシンガポール人学生がオックスフォードストリートという中心部で4人組の集団に襲われボコボコに殴られた事件も発生してしまった。

https://www.bbc.com/news/uk-england-london-51722686  

あげればキリがないがコロナウイルスによって間違いなく東アジア人への差別が目に見える形で顕在化してしまった。ご存知の通り、その後ヨーロッパ、アメリカにもウイルスは拡がり、世界的なパンデミックになってしまった。そうすると東アジア人差別へは目がむかなくなってしまった。

共に極東と呼ばれる地域からロンドンという異国の地で助けあったり、多くの時間を共有する中で親近感を覚え、私の”東アジア人としてのアイデンティティ”が形成された。そしてそれは東アジア人、イエローで括られ、同じように、どこかヨーロッパの社会から疎外され、差別を受け、ウイルス扱いをされたことでそのアイデンティティをより強固なものにした。そのような中で、世界のエンタメの中心で輝き、インパクトを与え続ける韓国人アイドルグループBTSは何か希望を、私、私たち東アジア人も西洋社会を相手に堂々と戦えるんだ!というようなパワー・エネルギーを与えてくれる存在だと私は感じるようになった。

人種差別は本当に根深い問題である。先人たちが計り知れない苦労を困難を乗り越えて是正してきてくれた部分もあるが、依然として毎日のようにどこかで起きてしまっている。悲観的かもしれないが人種差別はゼロにはならない。だけれども、そこで開き直ってしまっては、また別の誰かが苦しむことになるし、差別された本人の心の傷も癒えないだろう。ゼロに近づけるためにはそれに対して立ち向かうしかない。そしてそれは1人で闘う必要はない、連帯して一緒になって闘ってくれる人がたくさんいる。闘った後は一緒にご飯でも食べよう、それぞれの箸を使って。

コロナが収まったら、ソウルでソジュ飲んでサムギョプサル食べて同窓会して、台湾は今度は豊かな自然を求めて台南を訪れて、まだ中国には一度も訪れたことがないけど広州のあたりに友達が住んでるので案内してもらおうかな。

#stopasianhate


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