Paris,tokyo

「そうだ、東京に行こう」

何を言い出すかと思ったらまた突拍子もないことを。

今俺らのいるパリからどれだけ時間がかかると思ってるんだ。

そんな簡単にスーパーに行こう感覚で言われても困る。

「なんだよその顔。行きたいだろ?」

俺の顔を覗き込むやつは俺の理解者、良き友人、悪友ともいう。

「なんでいきなり東京なんだよ、3ヶ月前に行ったろ」

「変なことないだろ?俺らの故郷だし」

実際日本人ではあるが、故郷ではない。

育ちはずっとこっちだし両親が家では日本語を話すから身について

日本語を話せるだけであって実際に喋ったのは親とコイツくらい。

しかも日本に行ったのはこの前が初めて。

ずっとこっち暮らしの俺らには初めて日本に触れた。

正直日本は人気だしTokyoなんて世界で取り上げられるほどのもの。

ノリで行ったこの前でこいつは思いっきりハマってしまったんだろう。

「俺らはハーフじゃない、純日本人で暮らしはパリ。

 あっちが本当の俺らの居場所なんじゃないかって思うんだよ」

「そんなことないだろ、生活はずっとこっちなんだし」

「俺は、行くよ。帰ってくるかもわかんないかもな」

ハッとした。こいつはマジだ。

この前の遊びで行ったTokyoがこんなにも。

「・・・何しに行くんだよ」

検討はついている。

Tokyoに行った時に出会ったクラブの女だ。

長い黒髪のいかにも毎晩クラブで遊んでるあの女。

アイツにあってから帰るのを躊躇ってたからな。

「あの子はパリじゃない、Tokyoにいるべき子。

 俺はあの子の隣にいたいんだよ」

目がマジだよ。ご執心ってわけな。

「そんな簡単に言い切っていいのかよ」

「それだけじゃない、実際にTokyoに行って思った。

 ここしか知らない世界で留まりたくないってな。

 あの子に会ったのは運命だし、そう思わせてくれたのも

 必然だって。俺も大人だ、自分の事は自分で決断する」

こいつはいっつもそう。

突拍子もないこと言ってもやり遂げられるやつ。

いわゆるヒーロータイプ。

俺はそのヒーローの友人、てところ。

小さい頃からそうだった。コイツがいての俺だった。

コイツがTokyoに行ったら俺はどうなる…?

「お前も、行くだろ?

 お前もいたらTokyoだって最高だ」

俺は

俺は

「俺は…行かない」

自然と出た言葉に自分でも驚いた。

やつもまた俺の言葉と表情があってなくて驚いていた。

「…そうか、いつもお前が隣にいたから調子狂うな」

笑って顔を下に向けたやつ表情はわからなかった。

「お前の人生、楽しめよ。俺も、楽しむ」

だな、顔を上げたやつは笑ってた。

女に振り回されたって、人生うまく行かなかったって

どこにいたって変わらないよhomie。

10000kmなんて俺らの過ごした青春に比べたらちっぽけだろ。

俺は俺の人生をスタートさせる。 good  luck.


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