陽春花形歌舞伎 怪談乳房榎(2023年4月御園座)

今日は初代三遊亭圓朝の誕生日とのことなので、縁の演目を…。


配役

菱川重信
下男正助
うわばみ三次 中村 勘九郎

重信妻お関 中村 七之助
松井三郎 中村 虎之介
重信弟子信鳥 中村 鶴松
住職雲海 市川 男女蔵
磯貝浪江 喜多村 緑郎


勘九郎さんの三役早替わりと本水を使った迫力のある演出が見所の作品です。落ち着いて威厳のある重信、真面目で悪い奴ではないけれどすぐに流されてしまう下男正助、金のためなら殺しでも何でもする悪党うわばみ三次、姿形はもちろん性格まで一瞬で変化するのが本当にお見事。

七之助さん演じるお関は、何だかふんわり危うい色気を醸しています。お関に横恋慕する磯貝浪江役の緑郎さんもイヤ~な色気があって良かったです(でも悪人)。実はこの浪江、お関の従兄弟にあたる松井三郎(虎之介さん)の国元で起きた強盗事件の犯人。松井三郎はそのことを気に病み死んだ父の仇討ちのために浪江のことを追っているのです。虎之介さんのすっきり真っ直ぐな松井三郎がとても好感を持てました。

この仇討ちと、浪江の横恋慕による重信殺害事件とが絡み合ってお話は進んでいきます。

大詰は本水を使った大滝の場。浪江に依頼され重信とお関の息子真与太郎を亡きものにしようとする正助、それを追ってきた三次との立ち廻り、さらには重信の亡霊まで現れ大迫力の場面で本当に目が離せませんでした。

大滝のセットを組む間、舞台番の鶴吉(鶴松さん)が前列のお客さんに水避けのためのビニールシートの使いかたをレクチャーしたりご当地の話をしたりして客席を盛り上げます。初めての首抜き※の衣裳がとてもお似合いでした(話す内容はすべてご自分で考え、とても難しかったとのこと。七之助さんはモニターの音をつけてチェックしてくれていたそうです)

※首抜きとは↓


それにしても早替わり!わかるんですよ?わかるんですけどわからないんです!(?) しかも「今替わったよね」と思ったらフェイントで替わってなくてくっそーっとなったり、「そこは無理でしょー」ってところで見事に替わっていたりで客席も一体となって大盛り上がり。勘九郎さんも「何歳までできるかわからないから…」的なお話をされていましたがさもありなん、観ているほうは本当に楽しいですが役者さんにとっては本当に大変な演目なんだろうなあと思います。


オマケ: 公演期間に鶴松さんの芸談の会があったのですが、御園座の大向こうさんがいらしていて「何て大向こうをかけられたら嬉しいですか?舞台番のときにかけます!」と質問されていました。そのとき鶴松さんが「勘三郎さんは自分に『鶴松!』と大向こうがかかるのは好きではなかったです。『こいつも中村屋なんだから『中村屋!』とかけてくれよ』と言ってましたね」と仰っていたのがとても印象的でした。

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