国立劇場六月歌舞伎鑑賞教室『日本振袖始ー八岐大蛇と素盞嗚尊ー』

会場に入ると、どどんとでっかく勘亭流の歌舞伎の文字がはいった幕の後ろに透けて見えるせり上がった舞台装置。普通は緞帳であったり定式幕であったりするのでそれだけで何?何?とわくわく

前半はまず『歌舞伎のみかた』初心者向けの、歌舞伎の基本と本日の演目についての解説です

音楽が、何?え?歌舞伎?となる現代風なもの(ジャンル等詳しくなく…)に変わったかと思うと開幕。セリのてっぺんに上下デニム姿の虎之介さん登場です。コレ、虎之介さんのことを知っていれば「このー相変わらずオサレさんめ」となります(虎之介さんアパレルショップで働いていたほどファッションに造形が深い)が、学生さん等全くしらなければ「何?普通の兄ちゃんでてきたけど?」ってなると思うんですよね

ラストに虎之介さんが「歌舞伎は決して特別なものではないです。すぐそばにあります」(ごめんなさい…ちょっとうろ覚え)とおっしゃっていたのですが、ものすごくそれを印象づける良い演出だなあと思いました

セリと廻り舞台を同時にめいっぱい使っているのも普段みることはないのでとても面白い。真っ平らになったあと、奥まで走っていくのをみて国立劇場の廻り舞台あんなに大きいんだ!?とシンプルに驚いてしまいました

開演前撮影OK

祥馬さんをアシスタントに迎えての解説、初めの頃は祥馬さんの緊張が伝わってきて心のなかで「ガンバレー」と応援してしまいましたが、段々に鍛えられ楽日には心配することもないほど堂々とされていました

花道やスッポン、ツケ、立ち廻りや義太夫節の解説も実演をまじえて、演目についてもクイズ形式でテンポ良く進みます。

中二階の海鮮居酒屋(ではありません)

しかし虎之介さんは本当に場の空気を掴むのがうまい。学生さん多めのときには「リトルマーメイドとか観にいきたいよねえ。でも残念でした!今日は僕がアリエルです」とか掛け合ったり、遅刻してきたお客さんをいじったり(それも嫌味なく)、お客さんの反応をみながらの返しがとてもテンポよく心地よい

こういう場の空気を的確に掴んで対応できるのって、お役のお芝居にも通じると思うのです(決してアドリブとか大袈裟なことではなく)そういえば、自分が虎之介さんのことを気になったのはそういうところだったと思います

後半は『日本振袖始ー八岐大蛇と素盞嗚尊ー』

閉場まであと129日…泣

岩長姫実ハ八岐大蛇 中村扇雀
素盞嗚尊 中村虎之介
稲田姫 中村鶴松

鶴松さん演じる稲田姫ですが、前半はほとんど台詞がないため表情と仕草、振りで、理不尽に生け贄にされてしまう哀しみ切なさを表現しなければなりません。初日にも拝見したのですが、わりとスッスッと演じられていて「わぁ綺麗…」という印象だったのですが、だんだんと感情の表現が深まり楽日に拝見したときには目元がじわりとなるほどに感情移入してしまいました。それがあるからこそ、素盞嗚尊に再会できたときの晴れやかなお顔が何十倍にも可愛らしくみえましたなあ…

岩長姫は最初こそ綺麗なお姫様ですが、お酒を飲みはじめるとだんだんと本性をあらわしてしまうのが面白い。がぶりとのんだあとにものすごく幸せな酔っ払いのお顔をしているところがあって、そこは妖ながら可愛く思ってしまいました

八岐大蛇は扇雀さんと愉快な仲間たち(違います)が分身で演じますが、もうこの同じ姿の大蛇がわらわらしているのも隊列組んで決めるのも立ち廻りも大好きです。本当に歌舞伎ならではの表現ですよねえ…

そして虎之介さん演じる素盞嗚尊、見得も力強く格好良いのだけれど、声がとても通って素敵なのです。歌舞伎の発声って不思議ですよね、今回花道横も離れたお席も経験したのですが、決して音量がばかでかいというわけではないのに同じように聴こえる。近いところは「声でか!」というよりは振動が強くくる感じがしました

あ、あとその袖の紐ってそうやって使うんだ!というのが勉強になりました笑

途中ででてくる、三味線と唄のツーマンセルが「大薩摩」ということはわかったのですが、誰かあの三味線のかたが足をかける台の名称を教えてください(私はつい「波止場」と呼んでしまいます笑)。…ではなく、歌舞伎を観始めてから三味線の格好良さに心を奪われております。ロックでもありブルースでもあり万能すぎる。本当に格好良くて好きです。もう少し歌舞伎の音楽について勉強したい…

話がとっちらかって、歌舞伎鑑賞教室の良さが全く伝わらない文章となりました(文章下手!)。学生さんも多くいらしたので、今すぐに歌舞伎を好きに!とはならなくても、大人になって「歌舞伎、学生のころみたの意外と面白かったんだよなあ…」なんて繋がってくれたら嬉しいですね



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