見出し画像

glam flow ring / 破壊的融合と暴力的調和

●”物を買う”ということ。

資本主義で回ってる世の中で生きている以上、ゆりかごから墓場まで付きまとう行為である。

(「墓なんて死んだ後に必要あんめよ」とさえ思っていたが、お袋を亡くして意識が変わった。いつでも線香をあげる場所があるというのは大事だ。)

死んだ後に必要になる墓でさえ、ある種の必需品であるのだが俺は基本的には不必要なもの、いわゆる嗜好品みたいなものだね。それらを売り、その給料でまた嗜好品を買っている。

ミニマリストからすれば、狂気じみたライフスタイルであり、ともすれば非生産的な経済活動と資本主義に一生を、この身を、この魂を捧げてやろう。タイラー・ダーデンには憧れるものの俺はスペースモンキーにはなれそうもないライフスタイルである。

なにかしら前書きがいるな、と思って書いたら早速脱線しているので、本題に入っていこう。まぁ要するに、新しくシルバーアクセのリングを買おうと思ったワケだ。

画像2

つい先日、12月19日SILVER GEEKSで行われた「GLAM SCALE × Dual Flow」のイベントに足を運んだ時のことである。

●過剰装飾、過剰所持、過剰消費

そもそも論として、極論を唱えれば装飾品は要らないものである。その極論のボーダーをどこに置くかだが、生命活動には必要あるかどうかで判断してみている。俺からすれば無味無臭で畜生の如き基準・ボーダーなのだが。

前述のように非生産的な経済活動に魂まで捧げてやろうと息巻いた自分にはこの上なく必要なものであり、もはや肉体の一部のかのようにずっと身に着けている。

そんな趣味嗜好、個々人の好き嫌い、ライフスタイルの差異を差し引いても、正直、俺はもう指輪もネックレスもピアスもいらない。

語弊がありそうなので訂正すると、”もう必要ではない”状態だ。何故かと言うと至極簡単な話で、飽和状態。指は今のところ10本、首は1本しかないからだ。

ところが俺の手元には指輪だけで30個はあり、

画像1

アシュラマンになる日が来ても全ての指をカバーする事が出来る。アシュラマンでさえ首は一本なので、ネックレス・ペンダントに関してはそれでも持て余す。

ちなみに今のところアシュラマンになる予定はない。過剰所持もいいところだ。タイラーにボコボコにされてしまう。

そんな具合で、あらゆる視点で見て俺はもう指輪は必要がないのだが、また新しく買う事を決めた。その指輪こそが記事タイトルの「glam flow ring」である。

●破壊的融合、暴力的調和

百聞は一見に如かず。まずはあらゆるデジタルの恩恵を感じながら写真を見て欲しい。

画像3

すごくかっこいいことが分かってもらえたと思う。

左右非対称に象られた鬼。二人のデザイナーの相反するような世界観が炸裂し、中央でしのぎを削るかの如くぶつかり合い、同時に融合している。

2ブランドのコラボという視点で考えれば、「双方の個性が融合した」あるいは「どちらかがどちらかを受け止める、譲歩するような落としどころ」を探る方が安全ではあるはずだ。それが面白いのかどうか、どのデザイナー・作風にもあてはまるのかどうかはさておき。

画像4

しかし、この「glam flow ring」はその安全策を恐ろしい方法で破壊してみせたのである。お互いの描く鬼を同じフォルムで、しかし全く別の意匠でぶつけ合っているのである。ともすれば双方のデザイン、造形を破壊してしまいそうな試みであり、あまりにも危険なバランスで成り立っている。

そのバランス感はギリギリのところで均衡を保っており、切り立った断崖の縁のように危なっかしく、文字通りエッヂの効いたデザインが誕生している。正気とは思えないアプローチだ。

画像5

二人のデザイナーが生み出した二匹の鬼は、破壊的な方法で融合してみせ、それが導いた調和はあまりにも暴力的。お互いがお互いの創造力をリスペクトしてるからこそ成し遂げられる荒技。

そしてそのリングの企画にGOを出したSILVER GEEKS店長の田口氏。デザイナー両名の作風を真に理解しているからこそ委ねられる手腕だと思う。

(実際のところ、どういう経緯でこのデザインになったのかは知らんのですが、ショップ限定のリングをその店の店長の許可なしに作るワケはないし、田口氏のことだから、キッチリ要望やアツい思いを両氏に伝えていると思います。俺の妄想ですが。)

また、あくまでフィギュアコレクターとしてではあるが、造形の意匠に視点を向けると、

画像6

GLAM SCALEサイドのデザインは故 韮沢靖氏のテイストが、Dual Flowサイドのデザインは竹谷隆之氏を思わせる意匠が見て取れる。

iOS の画像 (3)

(GLAM SCALEのデザイナー、日山氏がかつて拠点としたアトリエ兼ショップの「EXXX(現在の店名はXXX)」の看板には韮沢氏の描き下ろしイラストがあしらわれている。また、Dual Flowのデザイナー、杉山氏の個展に竹谷氏が訪れている。そんな偉大な4名のクリエイターの繋がりも連想させる節がある。)

「欲しい!!!」

と思った人は、

画像10

https://www.stfreak.com/geeks/

amebaブログ「SILVER GEEKS」【glam flow ring】

https://ameblo.jp/silver-geeks/entry-12716860193.html

SILVER GEEKS商品ページ / SILVER GEEKS限定モデル

https://www.stfreak.com/geeks/pd_limited.html


まずこのリンクに飛んで検討してから、この先を読んでくれ。

俺は決してギークスに金を貰ってないぞ。記事広告とかじゃないぞ。仕事終わりに趣味で書いているだけだぞ、いや本当にな?!

●数値化不可能な魅力とリスキーな取引

さて。俺はシルバーアクセが好きではあるが、テクニカルなことは分からない。

「分かんねぇのかよ~~」

と思われそうではあるが、今アナタがこの記事を見ているデバイス、スマホでもパソコンでもタブレットでもなんでもいいよ。その構造分かってんのかよ?!分かんなくても欲しかったら買うだろ!!!

取り乱した。なんか”ワックス”というものを削って、型を取って、ワックスは高温で溶けるから、その分の形が空洞になって型が出来る的な。ワックスが無くなるから「ロストワックス製法」とかいうくらいの事は分かっている。

でも、本当にそのくらいしか分からない。こんなに分からない上に、付けていると何か役に立つとかもないのだが欲しい。これはちょっと特殊なことだと思う。

例えばであるが、車。車は生活必需品であると同時に嗜好品にもなり得る。っていうか、都内に住んでりゃそもそもが嗜好品みたいな扱いだ。若者にもっと金をくれ。

移動や運搬が主たる目的の車だが、明らかにオーバースペックの物も沢山ある。いわゆる”スーパーカー”とか”ハイパーカー”というヤツだ。300km/hとか速度が出るヤツ。狭い日本そんなに急いでどこに行く。

画像9

(↑パガーニ・ウアイラトリコローレ、約700,000,000円、最高速360km/h、今日から一円も使わないで生きても買えない。)

それらはエンジンやらサスペンションとかギアの性能、ボディの軽量化等々からもたらされる数値であり、その数値を叩き出すのが困難であるからこそ高価になり、一般道では持て余してしまうであろうマシンスペックが買う理由でもあり、魅力でもある。仮面ライダーのキックの威力が何十トンみたいなものに憧れるのに近いのだろうか。

数値化されることで、あらゆる部分が明らかになっているから消費者の理解に繋がり、それが選ぶ理由にもなる。もちろんガワのビジュアルで選ぶのも理由の一つだが。

(ここでは、車という道具を所持する目的を、「車の道具としての本質」と捉えたい為、カーデザイナーの話は意図的に切り離せて頂く。そういった方々へのリスペクトを排したワケではない。なぜならカッコいい車は理由なしに最高だからだ。)

しかしだ、シルバーアクセに関してはそういったスペックのようなものは一切ない。数値でいえば号数、重量あとは価格くらいのもので、結局見た目だけ、車の例えで言うならばガワの部分のみで勝負している状態だ。これは物を売る上であまりにリスキーだ。数値化出来ることがほとんどなく、個々人の感性に委ねるしかない。

洋服もそういった要素を持つが、車と同じように実用性に特化した服もあれば、嗜好品としての服、両方が存在し、また冠婚葬祭等、TPOに即した文化的に必然・必需品となる服も存在する。

一方、アクセサリー、特にシルバーアクセサリーは純粋に嗜好品としての側面でだけ存在していることが多い。ヴァンパイアハンターとかだと銀の十字架は必需品かもしれないが、今のところシルバーアクセサリーがきっかけで交友を持った人間にヴァンパイアハンターはいない。

さっきのリングは66,000円(税込)だ。俺の家賃より高い。レッチリのアンソニーとフリーは「家賃か革ジャンか」となった時に「革ジャンに住めばいいじゃん」という最高にファンキーな選択をしたそうだが、こうやって書いてみると俺らもそう遠くない種族かもしれない。

画像8

ペニスに靴下を付ける種族だ。

そんなに高価なものをだ。あろうことか個々人の感性に委ねて購入を検討してもらう。改めて恐ろしくリスキーであることが分かったと思う。

「そんなにするのか......!」

と思った人達。どうか俺の指を切り取ったりしようとはしないように。

●不必要なマスターピースに対価と敬意を払いたい

それほどまでに高価で販売が難しそうな商品をデザインする人達、作っている人達、売っている人達。月並みな言葉というより、恐ろしくシンプルな表現だが、本当にすごいと思う。

服飾品のデザインに限らず、今までこの世に無かったものを考えて生み出すという行為は果てしなく尊い。創造というのは恐らく人間にしか出来ない。

そんな行為に携わり、他の誰かの感性に訴えかけるという一点のみで、お金を頂く。こんな奇跡的な行為、巡り合わせがあるか?故にシルバーアクセファンにとって銀はその素材以上に輝いて見えるのだと俺は思う。

デザイナーの思考、技術、いわばそのクリエイターの血肉の結晶が詰め込まれた物体、人生の破片のようなもの。それを鑑みれば価格としては高いかもしれないが、金を払うべき価値はハッキリとある。

(俺がしている仕事も嗜好品、フィギュアを販売する仕事だが、ある程度販売する上での拠り所はある、ほとんどがキャラクター商品だからだ。それでも予想に反して売れる売れないは付き物だが。)

今回のコラボリングはただでさえ尊い創作活動の結晶を、あろうことかぶつけ合い、破壊寸前のようなバランスで練り上げられた恐るべき逸品であることは前述の通り。イベントには年末の挨拶がてら顔出しをするのみであったつもりが、10秒くらいで購入を決定してしまったのであった。

自分の中で”なぜ嗜好品を買うのか”という部分を言語化しておきたかった部分も多分にありキーボードを叩いたのではあるが、イマイチ固まらぬまま書きたい事は書き終わってしまった。

その言語化の作業は、”物を買う”ことで生きる人々に対して”物を売る”ことで生計を立てる販売員としての一生の課題であり、自分の中の答えはどこかで見つけておきたいものだ。故に、このような魂を震えさせてくれる不必要なマスターピースとの出会いには感謝せざるを得ない。

初めてnoteで書いた記事が予想外な記事になってしまったが、それほど突き動かされる作品であったということにして結ぼうと思う。

∴桑原∴


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?