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トレーニング補償金とは?

トレーニング補償金とは、FIFAが定めるTraning Compensation(TC)が日本版にローカライズされた、JFA(日本サッカー協会)規定の国内制度です。TCと同様に、「Ⅰ:アマチュアからプロに登録された場合」と「Ⅱ:プロからプロに移籍した場合」で運用が異なり、JFAはそれぞれを「Ⅰ:トレーニング補償金(アマチュアからプロ)」「Ⅱ:トレーニング補償金(プロからプロ)」と明確に区別して呼称しています。

余談になりますが、日本では最近まで「Ⅰ:トレーニング補償金(アマチュアからプロ)」が「トレーニング費用」「Ⅱ:トレーニング補償金(プロからプロ)」が「トレーニングコンペンセーション(TC)」呼ばれていました。しかし、「Training Compensation(トレーニングコンペンセーション)とは?」の記事でご説明した通り、国際制度におけるTCはⅡだけでなくⅠの概念も内包するため、混乱を招くことから、最近になり名称が「トレーニング補償金」と統一されました。そのうち、Ⅰを「アマチュアからプロ」、Ⅱを「プロからプロ」という補足を名付けることで区別しています。

「Ⅰ:トレーニング補償金(アマチュアからプロ)」とは、アマチュア選手がプロ選手として契約された際に、その選手を12歳~22歳(小学校6年生~大学年代)まで育成した街クラブや高校・大学などに対して支払われる育成金です。実務としては、主に、高卒/大卒選手が初めてプロ契約を締結する際に発生する育成金として認識されています。そのため、TCやSolidarityなどの国際制度とは異なり、特に日本の特徴である大卒プロ選手を想定して、その卒業年である「22歳」を区切りにローカライズされているものと理解しています。

このトレーニング補償金(アマチュアからプロ)は、直前のチームの種別(高校/大学)と、プロ契約先クラブのカテゴリー(J1/J2/J3/JFL)によって単価が異なります。以下、金額の概要を示します。(便宜上、J3やJFLに移籍した際の単価は省略しています。これら基準額は本記事最下部にリンク設定したJFA規約をご参照ください)

・大卒選手がプロ契約した場合
小学年代(12歳)の登録チーム=契約先がJ1:10万円、J2:5万円(年間)
中学年代(13-15歳)の登録チーム=J1:10万円、J2:5万円(年間)
高校年代(16-18歳)の登録チーム=J1:15万円、J2:10万円(年間)
大学年代(19-22歳)の登録チーム=J1:30万円、J2:20万円(年間)

・高卒選手がプロ契約した場合
小学年代(12歳)の登録チーム=契約先がJ1:10万円、J2:5万円(年間)
中学年代(13-15歳)の登録チーム=J1:10万円、J2:5万円(年間)
高校年代(16-18歳)の登録チーム=J1:30万円、J2:20万円(年間)

この場合、例えば、J2の東京ヴェルディが、自クラブのジュニアユース・ユース(中学~高校年代)に所属し、大学年代は他大学でプレーした選手を大卒でプロ契約した場合、各年代の所属チーム/団体に対して支払われる金額は下記の通りです。

小学年代(12歳)の登録チーム=5万円
中学年代(13-15歳)の登録チーム=自クラブ下部組織のため支払いなし
高校年代(16-18歳)の登録チーム=自クラブ下部組織のため支払いなし
大学年代(19-22歳)の登録チーム=80万円(20万円×4年間)
合計=85万円

続いて「Ⅱ:トレーニング補償金(プロからプロ)」とは、23歳以下のプロ選手がプロ選手として国内移籍した場合、移籍先クラブから所属元クラブに対して支払われる育成金です。なおこの際、アマチュア時代のクラブには、所属元がプロ契約をしたタイミングで「Ⅰ:トレーニング補償金(アマチュアからプロ)」として補償されているため、トレーニング補償金の支払いはありません。

このトレーニング補償金(プロからプロ)の支払額は、細かな条件はここでは割愛しますが、概ね、J1に移籍した場合は年間800万円、J2に移籍した場合は年間400万円を基準額に所属年数を乗じた金額となります。ただし、もし所属元クラブが中学生⇒高校生⇒プロのように連続して当該選手を登録していた場合は、海外版TCと同様に中学生及び高校年代も所属年数としてカウントします。その場合、13~15歳期間(中学生年代)は一律で年間100万円を基準額とします。

この場合、例えば、東京ヴェルディで中学年代~高校年代まで自クラブで育成した選手が、プロとして丸2年間プレーした後にJ1へ完全移籍した場合、移籍先クラブは東京ヴェルディに対し、移籍補償金のほか下記のトレーニング補償金(プロからプロ)を支払います。

中学年代(13-15歳)=300万円(100万円×3年間)
高校年代(16-18歳)=2,400万円(800万円×3年間)
プロ年代(19-20歳)=1,600万円(800万円×2年間)
合計=4,300万円

※なお、実際の支払いは、基準額に所属期間の日数を乗することで金額を算出するものですが、本記事上では便宜上、日割り計算を省略し概算としています。


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