ヱリ

3行の雑記と3行におさまらなかった小話、ときどきLINEの記録を投下しています。島とビ…

ヱリ

3行の雑記と3行におさまらなかった小話、ときどきLINEの記録を投下しています。島とビールとアートが好きです。へんなものを見つけると嬉しくなります。

マガジン

  • ザッキ

    3行から5行の雑記。印象に残った一言や風景の覚え書きなど。

  • シロクマ文芸部

    お題の言葉を冒頭一語目にして作品をつくる、シロクマ文芸部への参加記事です。

  • 自己紹介みたいな

    創作以外の記事やつぶやきをまとめています。自己紹介がわりになる、かもしれないです。

  • ナガバナシ

    2000字以上の物語。複数回に分けて公開したものもここに入れてます。

  • わたしたちのLINE

    日々のLINEから抜粋。昭和生まれの私と平成生まれの妹の雑談記録です。

最近の記事

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ミッドナイト・ランドリー【ピリカ文庫】

すすぎの音を立てるドラム式の洗濯乾燥機の中で、元気に泳いでいるのは河童だった。 洗濯槽が右に左に回転するたびに生み出される、ねじれた水流の中をほとんど転がるようにして、河童は短い手足で気持ちよさそうに水を掻いている。ウィルキンソン炭酸のずんぐりとした1Lペットボトルほどの大きさしかないので、河童はまだ子どもなのだろう。マンションの一階部分に完備されたコインランドリーの、二台並べ置かれたうちの右側の洗濯乾燥機を指差しながら、僕は先客に声をかける。 「これだめでしょ」 ベン

    • ピリカ文庫「ミッドナイト・ランドリー」を朗読していただきました! 津田くん&本文:こーたさん シイラさん:ピリカさん 洸(ほのか):納豆ご飯さん が読んでくださって、腰が抜けるほど感激しました。よかったら聞いてください✨ https://note.com/saori0717/n/ndf5a96068b6f

      • 梅雨晴れのチョロQ

        月曜日。自転車を雨晒しにしたせいで、サドルから芝生がぼうぼうに生えている。 カゴに入っていた「刈り〼」のチラシを見て電話をかけてみると、すぐにチョロQが足元に走り寄ってきて「ゴルフ刈りでいいですか」と訊いてきた。 小さな芝刈り機をサドルにのせてやりながら「ピクニック感のある長さがいいです」と注文する。サドルの上をゆっくり走り始めたチョロQが、育ちすぎて穂をつけた逞しい芝生をショリショリと刈っていく。

        • エキゾチックブーケ

          水曜日。新婦からジャスミンの花束を向けられ「いい匂いなの」と言われたけれど、カレーを食べ始めたところなので花の匂いを嗅ぎたくない。 ねっとりと甘たるくて生温い、熟れた死骸みたいなジャスミンの臭気が入り込まないよう息を止めて「おかまいなく」にっこりと告げると「遠慮しないで」同じように微笑んだ新婦に小鼻を摘まれ、するりと上方向にスライドされ顔面から外された。 花束の中央に据え置かれた自分の鼻を眺めながら、カレーをひとくち食べてみる。ジャスミンの激臭にまみれたターメリックの、ク

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        ミッドナイト・ランドリー【ピリカ文庫】

        • ピリカ文庫「ミッドナイト・ランドリー」を朗読していただきました! 津田くん&本文:こーたさん シイラさん:ピリカさん 洸(ほのか):納豆ご飯さん が読んでくださって、腰が抜けるほど感激しました。よかったら聞いてください✨ https://note.com/saori0717/n/ndf5a96068b6f

        • 梅雨晴れのチョロQ

        • エキゾチックブーケ

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        記事

          低刺激性フルーツポンチ

          金魚鉢に三ツ矢サイダーを注いで日光に当て、炭酸がぷつぷつ抜けていくのを眺めていると「ごめんやで」炭酸の飲めない神田さんが決まり悪そうな顔つきでフルーツミックスの缶を開けている。 「どうにも泡が苦しいねん。息出来んようになんねん。いまは紫外線強いから、一時間くらいで気ぃ抜けるんちゃうかな。そしたら安全やねん。ほっとすんねん。ごめんやけど待ったげてや」 黄桃やパイナップルをつつきながら眉を八の字にして笑っているので「待ったげてって、誰のことを?」神田さんに尋ねてみる。缶からつ

          低刺激性フルーツポンチ

          文学フリマに行った話

          行ってきました文学フリマ東京38! わたしの中では春先から楽しみにしてた一大イベントだったので、直前の一週間はタイムラインに文フリ関連の記事があらわれるたびにワクワクが高まり、前日の夜は高まりすぎで情緒不安定になりました。 (※客として行くだけです) そんな文フリ。 出品されているおびただしい量の本にも興奮してしまうんですが、いちばんの興奮ポイントはやっぱり、 「会場で芋洗いになってる誰も彼もが全員、本好きの変態」 っていう点でしょうか。 まずね、初めて会場に足を

          文学フリマに行った話

          この世に鯖専用の日本酒があることに感動したはずなのに、この後まぁまぁの量の日本酒を飲んでしまったせいで味がイマイチ思い出せない火曜日。

          この世に鯖専用の日本酒があることに感動したはずなのに、この後まぁまぁの量の日本酒を飲んでしまったせいで味がイマイチ思い出せない火曜日。

          公園で。隣のベンチで電話している女性の声が心地よかったので耳を傾けると、ヒラヒラしたスカートが踊りやすいとのこと。アベさんはLINEもメールもできるちゃんとした方だから大丈夫とのこと。私があんぱんの袋を取り出したら、女性の膝上でお座りしてたプードルがハッとこちらを見て可愛かった。

          公園で。隣のベンチで電話している女性の声が心地よかったので耳を傾けると、ヒラヒラしたスカートが踊りやすいとのこと。アベさんはLINEもメールもできるちゃんとした方だから大丈夫とのこと。私があんぱんの袋を取り出したら、女性の膝上でお座りしてたプードルがハッとこちらを見て可愛かった。

          以下レシートの転記。 国産鶏もも唐揚用398/日清ごま香油439/割烹白だし329/シャローワンズ328 自分が30分前に買ったものなのに、記憶を辿っても食材を格納した冷蔵庫を確かめてもシャローワンズが何なのか絶望的に分からなくて、とうとうweb検索をしてしまった夕方。

          以下レシートの転記。 国産鶏もも唐揚用398/日清ごま香油439/割烹白だし329/シャローワンズ328 自分が30分前に買ったものなのに、記憶を辿っても食材を格納した冷蔵庫を確かめてもシャローワンズが何なのか絶望的に分からなくて、とうとうweb検索をしてしまった夕方。

          日帰りスパのレストランにて。ホットコーヒーを飲んでたら口寂しくなったのでガトーショコラを追加注文し、食べ終わったら本格的にお腹が空いてきたので台湾まぜそばを頼み、まぜそば食べ始めたら飲まずにいられなくて「ビールください」とか言ってしまい、完全にベンジャミンバトンな食事だった。

          日帰りスパのレストランにて。ホットコーヒーを飲んでたら口寂しくなったのでガトーショコラを追加注文し、食べ終わったら本格的にお腹が空いてきたので台湾まぜそばを頼み、まぜそば食べ始めたら飲まずにいられなくて「ビールください」とか言ってしまい、完全にベンジャミンバトンな食事だった。

          邂逅ビワレイク

          年忌を重ねるたびに薄れてゆく夫が、今年はとうとう、人のかたちをした淡い影に成り果てていた。玄関と部屋を隔てる硝子戸の前に立ち尽くす、骨格の華奢な人影は夫であるようにも見えるし、夫でないようにも見える。炬燵で寝そべっていた体をもたげると、透けたり濃くしたりを繰り返していた影が、軽く握った右手を頬にあてた。親指でメガネを上げる、見覚えのある仕草に思いがけず胸が締めつけられて 「わたし琵琶湖いく約束してるから」 突き放すように今日の予定を口走る。十五年前に死んで以来、命日に欠か

          邂逅ビワレイク

          初めて聞いたすまスパはあやしもさんゲスト回だったなぁ、と思い返しながら2年ぶりに拝聴。たのしい!当時すまスパはnoteの公式チャンネルで、ピリカさんとMarmaladeさんはnoteの運営の方で、noterさん=公式の企画を担当してるnoteの中の人、と思いながら聞いてました。笑

          初めて聞いたすまスパはあやしもさんゲスト回だったなぁ、と思い返しながら2年ぶりに拝聴。たのしい!当時すまスパはnoteの公式チャンネルで、ピリカさんとMarmaladeさんはnoteの運営の方で、noterさん=公式の企画を担当してるnoteの中の人、と思いながら聞いてました。笑

          平熱のティータイム

          「春の夢なので、三十六度がちょうど良いでしょうね」 茶師に言われて頷いたけれど、お茶のことは何も知らない。 霞がかった空色を広げる晴れた午後に、店にいる客はわたしだけだった。L字型をしたモルタルのカウンターには炉が備えられ、据え置かれた鉄釜からほのかに湯気が上がっている。そこへ音もなく柄杓が沈められると、汲み上げられた湯は白い陶器にそそがれた。みっつ並べられた湯さましの、いま湯の張られた右側の器を茶師が手に取り、真ん中に全て流し切ってから器を持ち替え、左側の器へと移してゆく

          平熱のティータイム

          金のアレ、銀のアレ

          木曜日。おいしいところを最後に食べようと思い、今川焼きの周りをぐるりと一周かじり切ったところで電話が鳴る。 「あなたが食べているのは甘夏マスカルポーネですか? それとも抹茶ティラミスですか?」 コールセンターの喧騒をまといながら柔かに訊かれ、「食べているのは小倉ですが、その今川焼きも食べたいです」正直に答えて購入の手続きをする。

          金のアレ、銀のアレ

          今日でnote1歳になりました。 いつも読んでくださる皆様、遊んでくださる皆様、ありがとうございます。 おかげさまでnoteがすごく楽しいです。

          今日でnote1歳になりました。 いつも読んでくださる皆様、遊んでくださる皆様、ありがとうございます。 おかげさまでnoteがすごく楽しいです。

          チャイムの鳴るまで【piano】

          まんまるがうつくしいから。やわらかくて儚いから。後戻りのできない形だから。揃いも揃って晴れの日に膨らみ満ちてしまって、もう飛んでゆくより他ないから。 近所の霊園のたんぽぽがいっせいに綿毛になっているのを見ながら、毎年この風景に胸がしめつけられる理由を考えていたら、すごく似たものを最近見たような気がしてきた。よい旅になりますように、と、いつもなら思わないような感想をたんぽぽに抱いて西友に行く。

          チャイムの鳴るまで【piano】

          チャイムの鳴るまで【piano】