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STOで受益証券発行信託が用いられる理由

いま日本で行われているSTOの多くで、受益証券発行信託が用いられています。

受益証券発行信託とは、信託行為において受益証券を発行する旨を定めた信託をいいます。

受益証券発行信託では、特定の内容の受益権については、受益証券を発行しない旨を定めることができます(信託法185条)。この場合、受益証券を発行しない受益証券発行信託の受益権となります。

STOにおいては、この受益証券を発行しない受益証券発行信託が便利なので、このストラクチャーが多く用いられています。どう便利かは、以下の3点の通りです。

1.効力要件の視点

証券不発行の定めのある受益証券発行信託の受益権は、当事者間の合意が効力要件とされますので、当事者間で”トークンとともに受益権を移転させよう”という合意があれば、トークンの裏付けとなる受益権が移転します。

2.対抗要件の視点

そして、受益権原簿への記載が、受託者及び第三者に対する対抗要件となりますので(信託法195条2項)、受益権原簿の書換えをブロックチェーンと連動させることで、トークンの移転のみで対抗要件の具備を含む譲渡手続を完結させることができます。

3.排他性の視点

また、受益権について、信託行為において付した譲渡制限は、悪意または重過失の譲受人その他の第三者に対して対抗することができるとされていますので(信託法93条2項)、トークンの移転によらずに受益権を譲渡できないようにすることができます。
但し、受益者の相続、差押えおよび倒産の場面で、トークンの移転によらない権利移転を排除できない可能性がありますので、完全ではありません。


※「セキュリティ・トークン・オファリング(STO)の実務」(共著、金融法務事情2024年1月10日号(2225号))に記載しています。

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