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King Krule / Man Alive!

King Krule。詳しくはWikiを。一部抜粋すると1994年生まれ、2011年に現名義での活動開始、UKインディーロック界の新星として注目されて評価を受けている、といったところ。聴いてみるとつかみどころがない音楽というか、音響的な面白さだったりアート性の高い音像の追及だったりをしている印象。うーん、流している分には心地よいし、空間を作るという意味では良い音楽だと思いますが、このレビューのスタイルが「ヘッドホン(ないしスピーカー)で集中して聴く」なので、それだとちょっと娯楽性にかけました。書店とか美術館とかブランドショップとか、クリエイティブな雰囲気の場所で流れていたらすごく合うと思う。そういう他の五感刺激と結びついて有機的に反応する音楽という印象。

スマホで聴きながら読みたい方はこちら(noteに戻ってくればYouTubeでバックグラウンド再生されます)。

2020年リリース

★ つまらない
★★ 可もなく不可もなく
★★★ 悪くない
★★★★ 好き
★★★★★ 年間ベスト候補

1.Cellular
さざめくような電子音、ゆったり遠くから近づいてくるベース音
ドラムが入る、どこか歪んでいる、声が入ってくる
「このテレビが僕に話している」
狂気や孤独を感じる、つぶやくような声
どこか閉ざされた音世界、ミドルテンポでゆっくり進むが音にヘヴィさはない
つかみどころのないコード、和音が入り場面が変わる
チープな打ち込みドラム、機械的に拾われて整えられた鼓動音のようでもある
声やコード、電子音がいくつも重なる、さざ波のように近づいては消えていく
シュプレヒコールのような声
★★★☆

2.Supermarche
這うようなベース、爬虫類のような
そこまでヘヴィというより、単に這いずっているような
ヌルヌルとしたベース、かすかなドラム、ノイズのようなギター
喚くようなボーカル、ただ、言葉数は少ない
うまくかみ合わず壊れている機械なのか、閉じ込められた囚人か
後半になると湧き上がってくるようなパート、ギターやベースが上昇していく
言葉で終曲
★★☆

3.Stoned Again
歪んだベース音がドローンで響く
ヒップホップリズムが入り、ラップ的なスタイルでボーカルが入ってくる
途中でパンクっぽい喚き方に
ストリート感が強い、路地裏
色々な音が重なるが、和音はちょっとずれたコードが重なっているような
二重に、すこしずれた像が重なっているような音像
聞いていると酩酊感、ドゥーム、ストーナーな響きに
ヒップホップの歯切れよさ、軽快さは消える、苦悩というか混沌、酩酊した精神
サックスか何かの音、ギターの音、ジャムセッションなのか、どこかの室内か
部屋が歪んで見える、視界が消える
★★★

4.Comet Face
ゆらゆら、羽音のようなギター音
ドラムが近づいてくる、ベースがうねる、パンク的な音作り
初期衝動は感じる、けだるさもあるのだが妙な熱量はある、緊張感というか
ライブどんな感じなんだろう、グランジなのかパンクなのか、近づくとぶん殴られそうな殺気があるのか、内向的なのか
暴力性も感じるが暴れる感じでもない、どこか醒めている
音は荒々しいがそれほど破綻はしない
Stoogesとか、、、パンクか
でもあまりスクリームは出てこない、だんだん声を荒げてアジる感じにはなるが、絶叫ではない
ライブではどっちに触れるのだろうか、アグレッション系なのか、酩酊系なのか
唐突にシャットダウンし、ナレーションが入る
★★★☆

5.The Dream
ナレーションが続きつつメロウなギター音、コードにけだるげなボーカル
コード進行はつかみどころがない、インディーズポップというか、気ままにギターをつま弾いて口ずさんでいる印象
反復フレーズがバックで微かに鳴りだす、メロディが重なっていくが相互にあまり絡み合いはしない
勝手に鳴っている感じ
怒りなのか諦念なのか
★★☆

6.Perfecto Miserable
ナレーションとふわふわしたギター、リバーブが強めで、どうも音階もはっきりしない
つぶやくような、ぼやくような声、ボーカルというより声、語りに近い
ベースが入ってきて、地層が動くような、大きなものがのっそり動くようなコード移動
大きな音の塊がコードをなぞっていく、音の輪郭ははっきりしない
全体がつかみどころがないが、サイケというか、、、ガレージ色の強いサイケだろうか
途中からリズムが入ってくる、しかしこれも雰囲気だけではっきりは打ち鳴らさない
アンビエント的、だいぶ描かれない音や展開があるが、幻聴のように補完される
絵画では印象派とか抽象画とか、書かれていないものが見えるというか見る側によって記憶がずれるみたいなものがあるが
そうした音の印象
★★★

7.Alone, Omen 3
近づいてくる、コード、地下鉄を想起する
クリアなボーカルが入る、一人で歩く、寒い
どこか寒々しいのは風が吹くようなSEがあるからか
全体的に抑え目な音色、ベースがグルーヴを作る
この曲は比較的各楽器の音がクリアに聞こえる、分離している
ダブとか、そういうゆるさも感じる
ハッピーなヴァイヴレーションというよりはなんというかもっと虚脱的だが
ノイズ、スクラッチ音で終曲
★★★

8.Slinky
アコギの音からスタート、声が入ってくる
一つ一つの曲は曲としてはつかみどころがあまりないが、音として心地が悪いわけではない
いわゆる歌メロ的なものはあまりなく、音響的な作品
音としてはいろいろと表情を変えていくし、単調さもあまりない
ただ、映像的かというと音が生々しいし、なんとなく鬱屈した感情は感じるが思い切りネガティブなわけでもない
平熱
エロティックな音というわけでもないし、聴きどころが難しいが流しているといろいろと刺激はある
奇妙な身体性がある
★★☆

9.Airport Antenatal Airplane
タイトルにエアポートとあるがあまり空港感はない
ちょっと古臭いテクノ音、チープな打ち込み音が入ってくる、8-bit的な
しばらくそのビートが流れていたら唐突に終曲
★★☆

10.(Don't Let The Dragon)Draag On
何やらドラマチックなタイトルだが、けだるいつぶやきとスロウなビート
つかみどころのないコード、ジャジーと言うか
フェードアウトしていく、雰囲気だけの曲
★★☆

11.Theme for the Cross
微かなノイズ、話し声
SEが入ってくる、何かを探査するような
古めかしいトランペットの音
全体として演劇的な音楽ではあるなぁ、何かを演じているというか
つぶやくような声、ピアノの和音が入る
微かに流れているメロディ、トランペットが入ってくる
解けない謎のようだ
道路のような、飛行機のような音、どこかの場所でピアノとトランペットが鳴っている
遠ざかる、その場所は離れていく、離陸する、あるいは車で出発する
何に立ち寄っているのだろう
映画的
★★★

12.Underclass
ジャジー、静かなドラム、ピアノ、ホワイトノイズ
ジャズバラード的だがボーカルはつぶやくような声
耽美的でもない、何かの物語のBGMのような
とはいえ、この音楽そのものが物語を語っているわけだが
音楽でありながら音としてはあまりいろいろなものを描いていない
何か補完させている
途中からメロディがしっかりと出てくる、コステロ的なメロディ
一番、曲っぽいかも
★★★☆

13.Energy Fleets
ギターのアルペジオ、静かでダウナーな展開
ボーカル、揺れるリバーブ強めのコーラス、揺蕩う、煙のようなコーラス
声がこだまする、メロディが立ち上がってくる
和音感が比較的はっきりしている、音も明るめ
★★☆

14.Please Complete Thee
パニック映画のような、微かなナレーションの後に不穏なメロディがなる
ただ、ボーカルが落ち着いて語るので強い盛り上がりはない
緊張感、テンションの一定の高さはある
何を語っているのだろう、オルガンっぽい音が響く
宇宙人でも信仰している牧師の説話だろうか
奇妙な、こけおどし感もある光が差し込んでくる
チープなアセンション(次元移動)、いや、ジャケットのイメージからだとむしろ二次元に降りるのだろうか
妙な光線のような音が乱反射し、プリズムとなってアルバム終曲
★★★

全体評価
★★★
なんとも言えない、娯楽性は低いといえば低い、架空のサントラのようだ
映画を見なければ物語は分からないが、何か物語があることは分かる
一つ一つは曲と言うより効果音、シーンの断片のようなものが多い
抽象画や印象画のような音楽
色々な音色や、音の感触の変化を楽しむような聞き方が正しいのだろう
流れていたら耳を惹くというか、適度な刺激はあるが、聞いているうちに思索に引き込まれるような
耳が惹かれなければ単にBGMとして流れるような音
かなり実験的
ただ、デイヴィスのカインドオブブルーのような、「どこか凛とした静けさ」を感じる瞬間があった
独特の聴き心地はふと求める時があるかも

ヒアリング環境
夕方・バー・イヤホン

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