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詩ことばの森 森 雪拾(もり ゆきひろ)

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複雑で変化の激しい時代ゆえに 優しさと癒やしの詩の世界を伝えていければと思います
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記事一覧

詩ことばの森(166)「岬の風」

岬の風 古の人びとが夢見た 沖にあるという幻の国 誰も見たことのなかった 理想の世界から 今…

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詩ことばの森(165)「砂の記憶」

砂の記憶 古びた机のうえに 置かれたままの 夏が残っていた だれかの語りつづける 言葉が漂…

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詩ことばの森(164)「ふたたび」

ふたたび 静けさの部屋のなかで ふたたび 変化の波が漂い始めている また いつかの翻弄さ…

53

詩ことばの森(163)「深い水」

深い水 わたしの魂は 深い水のなかに潜んでいる だれかが 岸辺をさまよっている 足音も無く…

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詩ことばの森(162)「懐かしい庭」

懐かしい庭 自分は見たらしい 点滅する幻影の街を そこでは何も生まれず 繁栄もなければ衰退…

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詩ことばの森(161)「美しい街」

美しい街 孤独は空から降ってくる 雨模様ではなく 青空だったりする 都会の街並みに あるいは…

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詩ことばの森(160)「朝の森で」

朝の森で 神奈備の木に花が咲き 天が喜び 地が潤い 依代は輝きを灯しつづけた あれから季節は巡り 緑の季節となり 木々は自らの葉の重みに 軋んだ声をあげている 強い風に髪を振り乱した姿は まるで鬼神だ 私が思っているのではない 木が教えているのだ 成長とは犠牲を伴うのだと 朝の森をひとり歩き 闇の名残に湿った道に 散乱している枝葉の 鈍い音を踏みつつ行けば ちぎれた鬼たちの腕 (森雪拾)

詩ことばの森(159)「古城の夢」

古城の夢 山あいの村には昔 小さな城があった 崩れ落ち土と化しつつある 石垣だけが残ってい…

UNWIND&KOMOREBI
11日前
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詩ことばの森(158)「情念」

情念 森影に家々は沈んでいる 月の光が溢れだすと 岩肌は錆色に輝きはじめる 深い沼に秘めら…

UNWIND&KOMOREBI
13日前
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詩ことばの森(157)「流離う人に」

流離う人に 流離う人に 風は 時に冷たく 時にやさしい いい人を気取らず 親切は素直に受けた…

UNWIND&KOMOREBI
2週間前
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詩ことばの森(156)(木々のあいだに)

(木々のあいだに) 木々のあいだに 箱庭のような町はあった 古い神社の鳥居が 森の中で朱色…

UNWIND&KOMOREBI
2週間前
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詩ことばの森(155)(畑中の道は)

(畑中の道は) 畑中の道は静かだった 雲のない青空から 時折 風に乗って 列車の音が聞こえ…

UNWIND&KOMOREBI
2週間前
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詩ことばの森(154)「夜のオルゴール」

夜のオルゴール 子どもの頃 自転車で 坂をかけ登り 振り返ると 町が ずいぶん下に広が…

UNWIND&KOMOREBI
2週間前
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詩ことばの森(153)「薔薇の庭」

薔薇の庭 古い石の椅子に やわらかな午後の光が 落ちている森 長い沈黙に耐えてきた 苔むした庭で あの人の影が 枝と枝との隙間を たった今 通り過ぎて行った 初夏の匂い ただ一人きりで 座りながら詩人の思いは 野ばらの道を歩んでいく 人ではない存在となって 花のアーチをくぐり抜ける 花は地に落ちていく 風がそれを拾おうとするたび くりかえし 花びらを揺らしつづけて けれども 美しい魂は 青く澄んだ空に すっかり溶けてしまった (森雪拾)