第17回 存在しない夏 ’24
この連載ではエッセイを書くことになっている。実際に起きた出来事をもとに筆者の所感がまとめられた文章は「エッセイ」であり、その形式に沿ってわたしも連載の文章を書いてきたはずだった。でもさ、もう現実に書きたいことがなくなっちゃったんだよね。太ってきたこととか、うんざりすることもたくさんあるなかで、静岡までお墓参りに行って山中で迷子になって車にひかれかけたり、久しぶりに会った地元の友人がイタリア人みたいになっていたり、わたしは充実の夏を過ごしていた。しかし、だからといって書き残さな