Episode in Watcher #19
萩野くんの前の彼女は、ショップ店員で、ストーカーに困っていたそうだ。
小さな店舗だったので、平日の日中は、萩野くんの前の彼女ひとりで任されていたとのこと。
そこの客のなかにストーカー男がいたらしい。
そして、前の彼女からアプリのメッセージが来たそうだ。
「ストーカー男と二人っきりになるの怖いからお店に来て」と。
そのとき、萩野くんはまだ大学生だった。
つき合う前だったが、“好きな娘を守らなければ”と、萩野くんは、前の彼女が勤める店へ向かったそうだ。
出席するはずの講義には出ずに。
お店につくと、ピアスをたくさんつけた細身の男がいたそうだ。
客を装って入ってきた萩野くんを、前の彼女が接客しだすと、男は帰っていった。
そんなことが何回もあって、萩野くんと、萩野くんの前の彼女はつき合うようになった。
その後、ストーカー男のストーカー行為はおさまっていった。
もともと、前の彼女の後をつけて住んでいる所を突き止めるような、悪質なタイプのストーカーではなかったのだ。
順調な交際だと思っていたが、あるとき前の彼女に打ち明けられた。
浮気をしてしまったことを···
相手は、あろうことかストーカー男だった。
なんで、そんなことになったのか、と聞いた。
「だって、私のこと死ぬまで好きだって言ってたのに、あきらめて他の人とつき合ったんだよっ」
前の彼女の方から連絡したそうだ。
そのとき萩野くんは、自分がなんのために大学をぬけ出して、店へ駆けつけていたのか、と虚しさにおそわれていたそうだ。
前の彼女は、さらに続けた。
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