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トヨタ物語 ウーブン・シティへの道|第37回 停滞とは何か

■カイゼンの元は調査と分析

 生産現場のラインで滞留が出ないようにすることをトヨタでは「整流化」と呼ぶ。

 一方、食堂で並んだ列に渋滞が出ないようにすることもまた整流化だ。ご飯やおかずを取る列を1本にせず、丼、メインといった複数の列を作った、くふうもまた整流化のひとつだ。

 こうしたくふうを考えつくにはまず状態を調べ、原因を追究する作業がいる。トヨタ生協の夏目英司、宇井和義は「時間をかけました。カイゼンには着手してから45日かかりました」と言う。

 「流れをスムーズにするとは、つまり、停滞をなくすことです。しかし、食堂行列における停滞とは何かという定義を決めなくてはならなかったのです。

 私たちは「人が両足を揃える瞬間」を停滞と定義しました。そして、列のビデオを撮撮影したのです。どこで両足が止まるか、止まったときにどういった現象が起こるのかを調べるために。作り出そうとしたのはつねに人が歩いている列、です。

 そのためにやったのが複数の列を作ることともうひとつ、厨房の作業効率を上げること。一食を出すのに何秒で作らなければならないのかという基準を設けて、それに合わせて、サイクリックにカウンターに食事を出す。そうすればお客さまはカウンターを早く脱出できる。停滞はおきません」

 食堂のなかの停滞はカウンターが発生源だったのである。客が皿を取るのに時間がかかれば、後方に並ぶ人々が停滞してしまう。

 「カウンター前はボトルネックでした。もっとも混雑の激しいエリアだったのです。メインのカウンターの混雑を起点に後方で停滞が発生していたのですが、原因はお客さまの『迷い』でした。

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