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トヨタ物語 ウーブン・シティへの道|第32回 「大増産の6年」の謎

■「あの時」と同じだ

 物流カイゼンの現場を見ていて、「ドライバーを増やせない状況、つまり、人手を増やそうと思っても簡単にはできない状況は、あの時とまったく同じだ」と直感した。

 あの時とは戦後の一時期であり、人手を増やせない危機的な状況のなかで、トヨタは生産現場をカイゼンし、自動車の生産台数を増やした。トヨタが車を増産したのはモータリゼーションの時になるが、その時は工場を増設できた。しかし、人手を増やさなくとも車を増産したのはトヨタが危機に陥った直後だった。

 それは倒産寸前まで追い込まれ、人員整理を行い、新しく作業者を募集できなかった頃の話だ。豊田喜一郎から信頼された大野耐一はトヨタ生産方式を練り上げ、現場に定着させることで増産を果たした。物流カイゼンチームが直面しているコロナ危機後の混乱とますます進んだドライバーの不足と同じような状況だった。

 では、苦しい状況のなか、大野耐一はどうやって生産性を上げていったのか。

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