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農業生産のノウハウをDX化!若者が魅力に感じ、新規就農者が参入しやすい環境を整える【PLANT DATA株式会社|実装報告】

農業のノウハウをDX化し、経験と勘に頼りすぎない農業を目指す実装を昨年度から行っているPLANT DATA株式会社。2年目となる今年度は、さらに多くの農家とタッグを組み、これまでの高糖度トマトだけではなく、高級柑橘の甘平や観光農園のイチゴにもこれまでの仕組みが活用できるのかを検討した。


「植物生体情報計測」データを利用することで、生産技術の早期習得が可能に

農業従事者の高齢化、新規就農者数の低迷など、農業にはさまざまな課題がある。持続可能な農業を実現するためには、従来の親から子に農業のノウハウを伝えるやり方ではなく新規就農者がすぐに農業に取り掛かれ、早い段階で事業として成立することが重要だ。
PLANT DATA株式会社が重要視しているのは、「儲かる農業であること」と「若者が魅力に感じること」。「儲かる農業」を実現するためには、高付加価値農産物を生産することと、デジタルネイティブの「若者が魅力に感じること」においては、スマート農業の提案がフックとなると考えられる。

光合成計測チャンバー。リアルタイムに「光合成速度」を確認することができる。

昨年からの実装では、高付加価値農産物として高糖度ミニトマトの栽培に新規就農者がチャレンジしている。高糖度ミニトマトは、水分を制限するストレス栽培によって糖度が増す仕組みで栽培がされているが、ストレス栽培におけるダメージが大きすぎると高糖度ミニトマトは生育不良を起こしてしまう。その見極めにおいて、これまでは経験と勘が頼りだったが、今回の実装では植物生体情報を計測しデータ化した数値を利用して高糖度ミニトマトの栽培を行う。
植物生体情報の計測には、光合成リアルタイムモニタリングシステム「光合成チャンバー」と、AI・画像解析を行う「画像計測ロボット」を利用した。これらのデータをもとに、糖度が増す適度な環境を見極め、新規就農者が1年目で高糖度ミニトマトの栽培を実現することを目指した。

画像計測ロボット。温室内を自動走行して、植物生体画像情報を毎日取得することができる。

昨年度からの実装先は西予市野村町。ここで高糖度ミニトマトを生産しているベテラン農家フローラルクマガイのデータを、新規就農者に共有したところ、半年で新規就農者も高糖度トマトの収穫ができた。また、これらのデータを取得することで、ベテラン農家であるフローラルクマガイも原因がわからなかった、冬場に起こる高糖度ミニトマトの生育不良原因も判明。光合成の低下や、蒸散速度の減少によって根腐れが起きていると分かり、これまでの生育不良を改善するために今年度はCO2施用や灌水の最適化を念頭においた栽培計画を立てることができた。さらに、今年度は新規就農者とベテラン農家フローラルクマガイのデータを共有・比較できるようになり、更なる栽培環境の向上と生産量増を目指せるようになった。

毎日の植物生体情報を生産者自らがスマホで確認。環境の制御・栽培管理の判断に役立たせる

DX化によって生産性が向上!さらに他の品種にも水平展開

昨年度は、「植物生体情報計測」を利用することで新規就農者も高糖度ミニトマトの生産技術を習得することが実証できた。さらに、今年度は、高級柑橘である甘平と観光農園のイチゴの生産にも「植物生体情報計測」を活用。これらのデータを分析することで、高糖度ミニトマトだけではなく、甘平・いちごという品目の違いを越えて、生育不良による損失を事前に防ぐことができ、結果として収量のアップを実現できた。植物生育の根源となる光合成・蒸散はすべての作物で共通する重要項目であり、葉・果実の量を把握しデータ化することの重要性を改めて確認することができた。

今年度の成果

■植物生態計測定システム
自動計測された植物生体情報に基づいた判断を、生産者自身が日常的に実施するケースは国内外あわせて先進的である。さらに、植物生体情報に基づいた生産品目をリアルタイムに生産者同士が連携するのは世界初となる。

■高糖度ミニトマト
今年度は、植物生体情報の活用によって生育不良の早期検知と生育状態栽培管理を改善。それにより、高糖度ミニトマトは初事業年度増収約1.6倍、今事業増収1.8倍と大幅に収量がアップした。

■甘平
今年度の実装では甘平の生産において、「植物生体情報計測」を利用することで裂果を減少させ、歩留の向上を目指した。生体情報・環境情報の関係のデータ化と画像AI計測にもとづいた葉量・果実数の数値などをデータ化。このデータを活用することで、裂果率を約10%低減させることを可能にし、さらに裂果要因を把握することができた。

■イチゴ
観光農園の「イチゴ」は、「植物生体情報計測」を活用し、収穫期を調整することで、2段栽培を可能にし、利益率の向上が期待できた。今年度の実装で、イチゴ観光農園(温室600㎡)において、垂直2段栽培・LED補光導入により、温室を増設した場合と同等のイチゴの増産を低コストで実現した。

■PLANT DATA : 北川さんのコメント

今回の実装を通じて、イチゴなど施設園芸に関しては、既に存在する栽培管理のセオリーなど基礎知識活用の重要性と、そうした知見を持つ民間のコンサルティングファームなどとの連携の必要性を感じました。その担い手の選択肢の1つとして、県の農業普及員の方々と次年度は連携を図って行きたいと考えています。
また、生産現場に導入した装置は、必ず運用保守等を行う必要があります。それは現地にいる個人や企業に期待したい役割なので、このような外部エコシステム構築に関しては、他のコンソーシアムとも連携し進める必要性を感じました。
さらに、栽培管理のデータ活用による高度化においては、これまでは計測・分析までに留めていましたが、今後は特に制御を具体的にどうしていくか、また、その制御ログから制御を自動化するためのアルゴリズム開発まで取り組んでいきたいと思います。

■新規就農者:きらりFARM・木森さんのコメント

2023年に新規就農し、同年2月よりトマトの栽培を始めました。その頃からこのプロジェクトに参加させていただいたのですが栽培の知識は全くなく、データを見ても理解できない、という状況でした。現在はトマトの栽培が2作目に入りまして、今期私たちのハウスにも計測装置を設置していただき少しずつデータを理解することができるようになっています。植物の生育状態を目で見極めるということは、非常に難しくて、私たち新規就農者には困ることもたくさんありました。しかし、データを見て変化がわかると、とても安心できます。また、私は子育て中で、ハウスに居られないことも多々ありますが、遠隔でもスマホやパソコンからデータを見ることができるのでとても助かっています。勉強会にも何度も参加させていただいているのですが、回数を重ねるうちに少しずつではありますがデータの見方がわかるようになりました。植物の蒸散、光合成のデータを基にして、愛媛大学の先生方をはじめ先輩農家のフローラルクマガイさんに栽培管理の質問や相談ができたり、アドバイスをいただけることはとても安心感があります。これからも生体情報をどんどん活用して、収量の増加や品質を向上できるように取り組んで行きたいと思っています。

さらなる生産量増とコスト削減!ますます魅力に感じる農業を目指して

今年度の実装では、高糖度ミニトマトの生産の生産量が大幅にアップした。植物生体情報を活用すれば、新規就農者でも十分に高付加価値農産物の栽培が可能だと実証された。また、甘平においては裂果要因が把握できたことで歩留りが向上し、イチゴは光合成促進効果を把握することで生産量のアップが実現した。次年度からは、さらなる収量増とコスト削減を目指し、12事業者まで実装先を拡大する予定だという。

また、現在活用しているシステムをより使いやすい普及性の高い統合システムにブラッシュアップすることによって、生産者の環境制御の判断を簡単にし、精度向上を進める予定だ。
経験と勘に頼りすぎない「数値情報に基づいたデジタル化された農業の確立」は、デジタルネイティブ世代を惹きつけ、さらに新たに農業にチャレンジしたいと思っている潜在的な新規就農者にも魅力的にうつるはずだ。持続可能な農業の仕組みを目指す、PLANT DATA株式会社の実装に引き続き注目していきたい。

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