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いまいちど牛乳騒動の背景を考えましょう

牛乳廃棄の危機を救おうと、農林水産大臣が、苦しそうな顔をしながら、牛乳を飲み干してパフォーマンスする。
O-157のカイワレダイコンのような、なにも伝わらないけど、やってるフリだけのお国芸。


要因が、ごちゃごちゃにされながら、情緒的に押し倒そうとされているので、整理をしたい。

①年末で学校給食が止まるから、牛乳が余る
年末に冬休みになるのは、毎年同じことですよね。
この要因により、牛乳が余るのではなく、「コロナ禍以降、乳製品の在庫がだぶついていた現状が続いてきた(その状況を無策のなかで解決しようとしてこなかった)が、学校給食がなくなる年末に、その危機感が加速した」が、正しい言い方。

②コロナ禍のなか乳製品需要が落ち込み、在庫が過剰に。
これは確かに正しいでしょう。行き先のない生乳処理のため、(特に突然学校が休校になった昨春などもそうでしたが)保存のきく脱脂粉乳、バターなどへ加工し、どうにかしのいできました。
乳業工場は、年末年始もフル稼働して、本当に頭の下がる思いです。
でも、農政として、また農業団体としても、もっと先に手を打てることがあったのではないでしょうか。①とは全く別の問題です。

酪農は、需要がないからといって、突然蛇口をひねるように、生産を抑えることができないのも事実。
ただ、2010年代、酪農の現場においては、「畜産クラスター事業」を中心に、際限ない規模拡大に、湯水のごとく補助金を投入してきたことも事実。
そして、この酪農畜産関係に、これだけの補助金がなぜついたか。
名目は、日豪EPA、TPP、日欧FTAなど、国際交渉のなかで、農業よりも自動車など工業などを優先し、「国際競争力のある農業になりなさい」(=規模拡大して生産性をあげ、効率化をはかりなさい)として、国内農業を守らない方向に進み、その見返りとして、補助金を一時的に手厚くしてきた流れがあるということを忘れてはなりません。

現在の、牛乳乳製品の自給率は60%。
特に、チーズは、ナチュラルチーズも、プロセスチーズ(プロ原向けナチュラルチーズという意味も含む)の自給率は、低下の一途です。
バンバン補助金を投入して、国際競争力をといいながら、40%分は割り当ての部分もあるでしょうけど、結局は市場競争原理のなかで、海外シェアにとられていく。この矛盾にも気づくべきです。
結局、どれだけ際限ない規模拡大の戦いに突入しても、経済性だけだと、かなわないということ。
「みんなで牛乳飲もう!」とか、そういう浅い話で流されてはいけないと思います。

この牛乳騒動は、日本が、国民が農業をどう考えるか、日本国家が農政をどのような方向に導こうとしているか、それを考える契機にしないとなりません。
際限ない規模拡大で、なにがなんでも市場経済の中で戦っていけるような農業を目指すとしても、規模が2桁違うアメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの酪農にかなうわけがありません。
一方で、農畜産物の輸出5兆円を目指していますが、日本国内の食料自給率が4割を切り、低下に歯止めがかからない中で、(一部「あってもいい」程度であり)それが農政の主軸になるようなことはありえません。ヨーロッパ諸国を見ても、チーズのような輸出の武器となるようなものはありながらも、自国の国民の食料をまかなうことが、どの国でも基本にあります。

ちなみに、今回の問題の解決策は、いたって簡単です。
国が、バターと脱脂粉乳を緊急的に買い上げ、全量国が保管します。と言い切れば、この問題は解決します。断言します。
アベノマスクを保管するのには、(上にへつらって、簡単に廃棄しますと言えないから)何億円もかけてますよね。乳製品は、過去に輸入乳製品を国(農畜産業振興事業団、現ALIC)が一括輸入、管理していました。その歴史もあるので、国が介入することに二の足を踏むかもしれませんが、これだけの緊急事態というのであれば、ひとこと言えばすむ話です。なにせ、マスク保管に何百億かけてるんですから安いものです。

そもそも、大臣。なぜ牛乳だけ飲むんですか?
ほかの野菜も、魚も、同じことが起きてるのに、なんで牛乳だけ飲むんですか?
それは、バターなどの在庫抱えたくない農水省内のご事情だからですよね。

最後にみなさん。
牛乳飲もう!とか言いながら、海外のチーズ食べるのやめてください。本当に問題の本質、わかってますよね?

農林水産大臣も、農林水産省も、
問題の本質を語らず、国民をだますようなやりかたは、やめてください。
カイワレ以降、なんの進歩もしないような「食べて応援」みたいなことをせず、
大臣は公務の中で、官僚はYOUTUBEとかでPRではなく施策で結果を出してください。
テレビ、新聞、全て右向け右で、本質突いた報道がない。
寄稿でもコメントでもしますので、メディア関係の皆さん。ご連絡ください。

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