Tome館長

トメ。2016/2/12、開帳。作者表示・非営利にて無断使用可。英訳はGoogle翻訳…

Tome館長

トメ。2016/2/12、開帳。作者表示・非営利にて無断使用可。英訳はGoogle翻訳。 動画用朗読音声を常時募集。https://tomekantyou.hateblo.jp/

最近の記事

【SS】縫い目

じつに裁縫の上手な女だ。 衣類、寝具、バッグ、ぬいぐるみ・・・・ 彼女はどんなものでも縫える。 いつも糸と針を持ち歩いている。 これがなかなか役に立つ。 服のボタンの修理だけではない。 裂けた革靴の修理さえできる。 ストッキングの伝線だって平気。 刺繍の模様でごまかしてしまう。 それくらい裁縫が上手なのだ。 ところで、彼女には悩みがある。 縫い目が気になってしまうのだ。 あらゆるものに縫い目が見える。 いわゆる縫製物だけではない。 人体にも縫い目が見える、と言

    • 【バイオリン】遥かなる大地

      タワマンの最上階で暮らす人の気が知れない

      • 【SS】人形使い

        狭いながらも会場は満員。 観客はじっと舞台を見つめている。 舞台では人形使いが人形を操っている。 「それにしても、きたない人形だな」 「ふん。おまえの下着ほどじゃないさ」 「おれの下着、いつ見たんだ?」 「ふん。見なくてもわかるさ」 「比べてみるか?」 「いいとも」 「いやいや、やっぱりやめた」 「どうして?」 「忘れたんだ」 「なにを?」 「下着はいてくるのを」 くだらない会話ではあるが すべて人形使いの腹話術である。 じつは、人形使いは人形。 そして、人

        • 【にじみ絵】いじける

        【SS】縫い目

        マガジン

        • 箱夢の話集 第四集
          540本
        • 箱夢の曲集 第四集
          374本
        • 箱夢の画集 第四集
          355本
        • noteでコラボ
          261本
        • 箱夢の詩集 第四集
          200本
        • 箱夢の話集 第一集
          104本

        記事

          【SS】手話

          バス停で待っていた。 もちろん、バスを。 でも途中で、どうでもよくなってしまった。 私は双子の姉妹に続いて列に並んでいた。 それがじつにおかしな姉妹なのだった。 顔も髪型も服装もそっくりなのは、まあいい。 なにしろ双子なのだから。 ふたりは顔を見合わせ、黙ったまま せわしなく手を振ったり、首をかしげたりする。 (狂っているのだろうか?) しかし、すぐに私は気づいた。 彼女たちは手話をしていたのだ。 見事な技術だ、と感心しながら見ていた。 見続けていても飽きない

          【SS】手話

          【ピアノ】踊りましょう

          踊れるうちに

          【ピアノ】踊りましょう

          【ピアノ】踊りましょう

          【SS】日記

          今日の日記を書く。 ほらね。 また昨日に戻ってしまった。 不思議。 理解できない。 今日は昨日と同じ。 昨日は今日と同じ。 夜が明けても明日にならない。 そっくりな一日の繰り返し。 もう限界。 誰か助けて!  昨日の日記を読み返す。 ほらね。 また同じこと書いてある。   A Diary I write a diary of today. You see. I returned to yesterday. Strange. I can not unders

          【SS】日記

          【切り貼り絵】カーニバルの女

          【切り貼り絵】カーニバルの女

          【SS】公園の絵描き

          ある公園に絵描きがいる。 似顔絵を描くのが彼の商売。 あんまり絵はうまくない。 でも、なかなか人気がある。 他人が見ると似てないのに  描かれた本人は似てる、と言う。 実物以上に描くのではない。 むしろ、実物以下の場合が多い。 それでも客は感心してくれる。 子どもを大人に描いたり  その逆に描いたりもする。 猫や犬にしか見えない時もある。 岩ではないかと思う時さえある。 それでも客は喜んでくれる。 鏡に映る顔より似てる、と言う。 本人が言うのだから  間違い

          【SS】公園の絵描き

          【オルゴール】揺り籠

          無重力の場で寝てみたいものだ

          【オルゴール】揺り籠

          【オルゴール】揺り籠

          【怪談】生首

          ある男がある女に惚れた。 だが、女にはすでに恋人がいた。 「ふん。それがどうした」 男は女の恋人を殺し  血に汚れた手のまま力ずくで女を抱いた。 それがよく見える位置に 見開かれた眼の恋人の生首を置いて。 「どうだ、悔しかろうが」 男は幾度も幾度も女を抱いた。 女は狂ったように泣き、男は狂ったように笑った。 歯噛みもできぬ生首の  そのまぬけな、まぬけな顔。   The Head A man fell in love with a woman. But the

          【怪談】生首

          【赤い背景】王である

          【赤い背景】王である

          【語り】背中のナイフ

          わしの背中にナイフが刺さっている。 このわしになんの断りもなく、 いつ、どこで、誰が刺したのやら。 近頃の、通り魔だかなんだか知らんが 礼犠というものを知らんのかね。 まったく迷惑な話だ。 寝ようとしても、仰向けになれん。 わしは血も涙もない守銭奴だから 出血せず、シーツは汚れんのだけどな。 それにしも、この傷は深いぞ。 ほら見ろ。 胸から刃先が出ておる。 死んだとしても不思議ないぞ。 なあ、お願いだよ。 そこの君、このナイフ 引き抜いてくれんかな。 おい

          【語り】背中のナイフ

          【ピアノ】踊りましょう

          ふて寝するくらいなら

          【ピアノ】踊りましょう

          【ピアノ】踊りましょう

          【SS】トロッコ

          一台のトロッコに男三人が乗っている。 そのうちの一人が俺だ。 目の前の二人は裸で抱き合っている。 たくましい筋肉。 日に焼け、汗ばんだ皮膚。 片方の男と視線が合ってしまう。 ひどく暑いはずなのに寒気がした。 「俺に触れるなよ」 一言注意しておく。 「もし触れたら?」 「おまえを刺してやる」 なぜか手に万年筆を持っていた。 そして、なぜかキャップが外れない。 男はニヤリと笑う。 「いいとも。刺してみな」   A Trolley Three men are on

          【SS】トロッコ

          【黒い背景】脱力感

          【黒い背景】脱力感