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未来の建設業を考える:「ローマ・パンテオンに学ぶ」(2022年12月8日)

ローマ中心に位置する「パンテオン神殿」

 ローマ中心に位置する「パンテオン神殿」、ローマ皇帝ハドリアヌスが128年に建造した、世界で最も古く、現在でも、世界最大の無筋コンクリート構造物だ。1900年前に建造されたローマのパンテオン神殿だが、建造された当時よりもコンクリート強度が高くなっていると聞いて、信じる人はいるだろうか?

ローマン・コンクリート

 ローマン・コンクリートと呼ばれる古代ローマのコンクリートは、イタリア西部の表土「ポッツォラーナ」を用いることで空気中の炭酸ガスと反応して徐々に固まり、時間とともに、強度が増し、いまでも十分な強度を発揮しているというから、すごいことだ。事実、202年の地震で修復されて以来、1800年以上も修復されていないそうだ。
 ローマ時代以降、コンクリート技術は失われ、石造へと逆戻りし、1887年仏ジョゼフ・モニエによって現代の鉄筋コンクリート技術として再生された。しかし、現代の鉄筋コンクリートが50年程度で中性化し、鉄筋の錆もあり、強度を失い、寿命が50~100年であるのに対し、火山灰を入れたローマン・コンクリートは、千数百年もの間、年々強度を増しており、その技術力の高さは驚くべきことだ。
 パンテオンの中に入ると、完全な半球形のコンクリート製ドームが高さ30m、厚さ6.2mの円筒のうえに載っている。ドームの内側は格天井となっているが、これもコンクリートでできており、上に行くにつれて薄くすることでドームの曲げモーメントが均等に保たれているそうだ。ドームの頂部は天窓が開けられ、日時計の役割も果たしていたとのこと。現代につながるコンクリート構造物、パンテオンで、建築のすばらしさを実感して欲しいものだ。

コロッセオ

 ローマ時代の巨大コンクリート建築物と言えば、円形闘技場として有名な「コロッセオ」も、コンクリート技術の傑作だ。6千トンのコンクリートと無数のレンガでできている。公共浴場「テルマエ・ロマエ」を代表するカラカッラ浴場は、高さ44m、敷地は11万㎡、東京ドームの3.5倍もの大きさで、3千人も収容できると言われたプールのような浴槽に加え、運動場、ジム、図書館、マッサージ室、美術館、庭園など、コンクリート建築による一大ヘルスセンターとなっていた。

水道もローマ時代の偉大な遺産

 水道もローマ時代の偉大な遺産だ。今でもトレビの泉とかで使われているヴィルゴー水道は全長21㎞のうち地下20kmで、衛生的で大量の水を100㍍で1.9㌢という驚異的な勾配とする土木技術で供給している。江戸時代の玉川上水神田上水も土木技術としては傑出しているが、ローマ水道の8割は地下水道としたため、現代の衛生基準にも合格する水質だそうだ。
 土木的には、ローマ時代の敷石舗装道路も注目に値する。ローマ時代の道路は厚さが90㌢から150㌢もあり、路盤、基盤、基層、表層と積層構造となっており、堅牢で、路面が地面より高くすることで水はけまで考慮されていた。主要幹線道路は8万㎞にも及び歩車道分離も図られ、まさに今の「道」の原型だ。

ローマの公共建築物

ローマの公共建築物は2000年の先を見越して作られた、と言われる。
さて、いまの日本、将来に向けて何を残すことができるのだろうか?

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